第2話 人工呼吸

目が覚めると知らない天井があった。

部屋の天井とは違う無機質な天井がそこにある。

(……どこだここ…?)

何でこんな所にいるんだ?と思いながら体を起こそうと力を入れると、

(い゙っ…!?)

全身至る所から激痛が走った。今まで感じた事がない痛みを味わい声を出そうとするが何故なぜか声は出ず、声が出るどころか呼吸も出来なくなる。

(かっ…かはっ…)

息を吸おうと口を開けるが、口がパクパクするばかりで一切酸素は入ってこない。

心臓を締め付けられるような息苦しさに見舞われ必死にありもしない虚空に手を伸ばすと…その手は


「大丈夫?」


横から現れた彼女はとても綺麗で一目で分かるほど目鼻立ちが整っていて綺麗に手入れされた黒い髪はひとつに結ばれ後ろで束ねられている。

彼女を見た瞬間息をはっと飲み、見惚れていたが、呼吸が出来きず、苦しくなって藻掻もがいてしまう。

「大丈夫。ゆっくり深呼吸して」

耳元で囁かれた言葉の意味を理解して口を開けて深呼吸をしようとするが、未だに呼吸ができず慌ててしまう。


(あ…やばい……)

本能が本気でやばいと告げている。息を吸おうと必死に藻掻もがくが、どうしようもできず、目の前が霞んで見える。しかしどうしようもできず、限界が訪れて…

(あっ……)

腕の力が抜けてベットにドスンと腕が落ちると同時に

ふわりとどこかで嗅いだことがある甘い匂いと共に唇に柔らかい感触が伝わった。

何が起こっているのか分からず、なにも抵抗できず、されるがままの状態だったが、求めていた酸素が口の中に届いた事で分かった。

人工呼吸されているのだと。

そしてそのまま意識を失った。


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