第4話 温泉で温まりましょう

//SE ドアが開いて、閉まる音。


「はー」


「帰ってきました」


「ご主人、寒くないですか? 結局けっこう外にいちゃって、少し冷えてしまいましたね」


「もうちょっと早く帰っておくべきでした。森はやっぱり気温が低めですね」


「ご主人のお耳を……ぴと」


「ふふ。お耳がちょっと冷たくなってます」


「この小屋ですが、なんと実は二階に温泉があります。露天風呂みたいです」


「はい。ありがたいですよね」


「なので……一緒に入りましょうか」


「温泉まであるなんて、本当に素敵な所ですよね。絶対にお客さんも呼べると思います」


「……え? 別々に入る……? どうしてですか?」


「何を言ってるんですかご主人。私はスライムですよ?」


「一緒に入ったって何の問題もありません」


「都合のいい時だけスライム面……じゃないですよ!」


「私たちもうずいぶん長いこと一緒にいるんですよ? 今更お風呂くらい……」


「そう、ですか。仕方ありませんね」


「……では、ご主人の後ろにいることを徹底して入ることにします」


「え、だめですか? いえ、これは妥協点ですよ。いいじゃないですか、誰も見てないんですし」


「それに、ご主人が温泉で眠っちゃったらどうするんですか?」


「今日のご主人はまだ疲れが残っていると思います」


「気づいたら温泉で溺れてた――なんてなったら私、困りますよ」


「はい。危ないですよね。だから一緒に入りましょう」


「それじゃあ……準備をしましょうか」



//SE お湯の音。(ちゃぽん、という感じ)



「ほわぁ……すごい。木組みの浴槽で……なんだか木の良い匂いまでします」


「眺めもいいですね。意外と遠くまで見えます……流石に私たちの街までは見えませんが」


「……あ、ご主人。あそこ、私たちがさっきまでいたところじゃないですか?」


「ふふ。ですよね」


「ではご主人、こちらに座ってください。お体を洗ってあげますね」


「あわあわで、ご主人の体を念入りに綺麗にしてあげます」


「自分でやるより気持ちいいはずですよ」


「え? ……と、溶かさないですよ! 昔は怪しかったですけど、今はちゃんと制御できますから!」


「まったくご主人はもう……」


「はい、ご主人。体の力を抜いてくださーい。だらーっと」


「もっとだらんと……よくできました♪」


「腕から洗っていきますね。ご主人は楽にしていていいですよ。私が全部やってあげますから」


「ぬる……ぬる……。ごしごし……」


「やっぱり、ご主人は全身が凝ってますね。疲れが体にたまっているみたいです」


「普段から頑張っている証拠ですね。こんなに体が硬くなって……」


「いつもありがとうございます。ご主人」


「一緒にお湯に浸かって、ゆっくり疲れをとりましょうね」


「当然、私が見てますから、ご主人が一人で眠って溺れる心配もありません」


「次はシャンプーをしますね。シャンプーを出して……」



//SE ボトルからシャンプーを出す。泡タイプ 。



「頭を触りますよー。あわあわです」



//SE シャンプーする音。しゃかしゃか音。



「ごしごし……しゃかしゃか……♪」



//SE シャンプーする音。しゃかしゃか音。



「おかゆい所はございませんかー?」


「ふふ、こういうの少し楽しいかもしれません」


「ご主人さえよければ、これからもやってあげますね」



//SE シャンプーする音。しゃかしゃか音。



「――はい。では洗い終わったので、お湯を流していきますよ」



//SE シャワーの音。少し遠めから聞こえる。



「目、つぶっててくださいね」


「行きますよー。ざー……」



//SE シャワーの音。近くで。



「良かった。ご主人、すっきりしましたね」


「ではお湯に浸かりましょうか」



//SE お湯へ入る音。



「ふ~~……っ。気持ちいいですね……。温かさが全身に染みわたります」


「日はそろそろ沈み始めていますね。空が夕方の色です」


「普段ならご主人はお仕事中ですが……。ふふ、今日は私が独り占めですね」


「ご主人も気持ちよさそうですね。お顔が緩んでいますよ」


「……ご主人、もっとお傍で、くっついてもいいですか?」


「……もしかしたら、ご主人がうとうとして滑っちゃったりするかもしれないな、と思いまして」


「倒れないように支えるには、私が傍にいた方がいいじゃないですか」


「……いえすみません。嘘です。ほんとはくっつきたいだけです」


「はい、もちろん。横からちょんっとくっつくだけです」


「ご主人の腕と私の肩が触れ合うくらい」


「……ふふ♪ ありがとうございます。お隣に行きますね」


「あ……ご主人の腕、あったかいです」


「お湯に浸かって温まって……一緒にゆっくり疲れを取っていきましょうね……」


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