疲れた体をスライム娘にしっとり甘々に癒してもらう話〜静かな森の奥で二人きりのお泊まりデート〜
じゅうぜん
プロローグ ご主人にはおやすみが必要だと思います
「ご主人、おかえりなさい」
「……ご主人? 大丈夫ですか?」
「顔色が良くないです。いつも悪いですが、今日は特に酷いです」
「今日はちょっと疲れたって……ちょっとどころじゃないですよ?」
「ほら、足元がふらついてます。それでちょっと……って」
「ご主人は……まったくもう……」
「あの、ご主人。ちなみに明日は何の日か覚えていますか?」
「……いえ、私が初めてご主人と呼んだ日ではありません」
「……私が初めて料理を作ろうとして失敗した日でもなく……」
「って違います! 今日はこの村に来て丁度1年になる日です!」
「わかりましたか? つまり、ご主人はここに来てずーっと働きっぱなしだったんです」
「……村の方々に認めてもらうためというのはわかりますけど、それでも頑張りすぎです」
「……ええ。もちろんご主人がお休みを取っていたのも知っています。このご時世ですから、冒険者ギルドも有給は取得しないと怒られますよね」
「でも! ご主人はその時間を使って仕事の調べものをしたり、残った仕事を家でやったり! 全然休めていないじゃないですか!」
「……あの、ごめんなさい。私、別にご主人に怒りたいわけじゃないんです」
「ご主人がお仕事を頑張るのも、私のためだってわかっていますから……」
「だけど、ご主人にはもっと元気でいてほしいんです。今のふらふらしているご主人は、見ていて危なっかしいくらいで……」
「はい。ですので、実は今日、ご主人がお仕事中に冒険者ギルドのマスターさん、つまりご主人の上司さんに直談判してきました」
「…………え、聞いてない、って、それはそうだと思います。特に伝えてくれとは頼んでませんから」
「当然、私もご主人の上司に当たる方ですから、失礼の無いように伺いましたよ?」
「でも『あいつがいないと仕事が回んないよぉ』などとごね出しましたので、机の一部を溶かせていただきました」
「私はこれでもスライムですからね。やろうと思えばできるんです」
「そうしたらお話は非常にスムーズでした。流石はご主人の上司様です。有能な方の上にはちゃんと有能な方がいらっしゃるのですね」
「ですので、明日からご主人は有給です! 拍手~。ぱちぱち~♪」
「……ぽかんとされてますね? 本当ですよ」
「じゃーん。こちら、ご主人の出勤日が浮かび上がる仕様の魔道具のカレンダーですが…………見てください! 真っ赤だった毎日が、明日からしばらく真っ白になっています!」
「ふふ、どの角度から見ても同じですよ」
「こんなに喜ばれるのなら、もっと早く直談判しておくべきでしたね……」
「残ったお仕事についても問題はありません。上司がさぼっておられた分がご主人に回っていたのですから、あの方が働けば済む話なのです。もちろん、またさぼるようなら私が伺います」
「……はい」
「それで、えと……その……ここからが本題なのですが……」
「ご近所の宿屋を営んでいるご夫婦がいますよね。はい、私たちに良くしていただいている……」
「奥様にご主人の話をしたところ、なんと自分たちの別荘を貸すから二人でゆっくりしてきなよ、と言ってくれました」
「すぐ近くの森の先にあって、静かで、綺麗で、落ち着いた雰囲気のとても良い場所みたいなんです」
「よければ……えっと」
「休暇のうち、一日だけ、私と一緒にそこで過ごしてくれませんか……?」
「……! ほ、本当ですか! ありがとうございます、ご主人!」
「ふふ……もちろん、他の日もお傍にいますが……でもこうして私の誘いを受けていただけたこと、とっても嬉しいです」
「もちろん、ご主人の貴重な休日です。私、ミュールもしっかりとご主人が休めるよう……精一杯頑張らせていただきますね」
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