第9話 再会

「お、お人形さんだって……?」愕然として、正座をやめた僕はゆっくり立ち上がった。

 アリナさんは、深く頷く。「その瞳のうるむ時が、とてもそっくりなんだよ」


 安心感のあとに、疑問といらつきがやってきたので、訪ねる。

「だからって、泣く必要は」

「タロウマルはね、殺されたんだ……」アリナさんは、斜めに空を見上げた。「ねえねえにっ!」そして、握りこぶしでベッドを殴った。バフっ! おっぱいは、上下にふるんと、軽く突いたように揺れます。

「ねえねえ?」

「あのくそ姉はっ」彼女は僕に視線を移す。目がきりり怖い。「普段おっとりしてるくせして」そう言いながら、表情がだんだん暗く、恐怖の色になる。「怒るとちょー怖いんだ。あの時は、いきなり背後から不意打ちしただけだったのに……サーベルで」


 サーベルは、駄目でしょう。 


 アリナさんは、がたがた震えだした。まるで、脈絡なく雪山の頂上に放り出されたように。いや、脈絡はあった。思い出がよみがえったのだ。彼女は自分を抱きしめるように腕を組んで、寂しそうに僕を見る。

「だ、大丈夫ですか」どれほど怖いというのだ、あなたのお姉さんは。

「タロウマルっ。あたしを抱きしめておくれ」

 アリナさんは、普段の落ち着いた姉御肌な声色でなく、掠れた、上ずった調子で言った。


 タロウマルでは、ないけれども。躊躇いなく女体に飛びつく。両足で背中をしっかり固定して、腕はもちろん、たぷたぷなところに。もう、マッサージするクソガキではない。乳離れできないクソガキである。


「嬉しいよタロウマル、またあたしのそばに戻ってきてくれて」ぎゅっ、アリナさんの腕の、締め付けが強くなる。代わりに正面はふかふか。「あんなにっ、あんなにずたずたにされたのにね。胴体はぼろ雑巾、頭は行方不明、四肢は切断、今でも昨日のように覚えてる」

 

 忘れたほうが、良いんじゃなかろうか。それにしても、怖いなそのお姉ちゃん。会いたくない。


 間違っている。悪いのはどう考えても、姉にサーベルで斬りかかったこの人なのだ。どうも、僕は美女の悲しげな姿に弱い。


 この際、タロウマルになりきろう。僕はたったこれから、タロウマルだ。ゴブオではない。


「タロウマルは、アリナさんのもとにか」

 言葉の途中で遮られ、僕は頭をがしっと掴まれた、。「アリナさんじゃない! ママって呼びなさい!」

 その表情が真剣に溢れていたから、僕は黙って頷くしかなかった。


「ア、ママ。僕は、ママのもとに帰ってきました。だからもう、悲しくなる必要はありません」

 感動の再会の言葉に、アリナさんはうんうんと、嬉しそうに頷いていた。そうして、僕のおでこに音なくキスした。キスには、乳房に触れた時とは、また異なる満足感があった。彼女の方から、してくれたせいかもしれない。


 僕も、ほっぺにキスをした。アリナさんは、目をつむって母親の表情で微笑んでいた。


 流石に時期が来た。これを逃したら、永遠に失するかもしれない。”つぶらな瞳”発動。

「ママ。僕、久しぶりにおっぱい飲みたいよ。良いでしょう」と僕は言った。我ながら、大変恥ずかしい。

 親、親戚がこの醜態を見たら、どう思うだろう。縁、ちょん切られる。

「構わないよ。なんだって聞いてやるさ」


 僕は、アリナさんから二、三歩の距離離れた。

「離れなくたって、ほどけるのに」と彼女は言った。

「ちゃんと、見たいんです」と僕は答える。


 そう、ちゃんとしっかり確実に、観察したい。近すぎると、見えないものもあると、なにかの漫画のキャラクターも言っていたからな。


「そうかい」アリナさんは妙に納得して、そそくさと、まず背中のひもをほどいた。ほどけたから、ひもが下にだらんと、下乳の装飾品のように垂れた。いよいよだ。


 鼓動が速くなる。大胆に露出した女の、秘密が顕れるのだ。

 首元もほどかれた。

 僕が焦がれた割には、ビキニはあっさり、その身体から取り外された。ぷっくりしながらも、つんとした乳首、小さな乳輪。ビキニの、うっすら日焼けの跡。ビキニの締め付けが消えたおかげで、乳は心持、重力に負けてぶら下がっている。より自然になった。


 肌色のふくらみのさきには、鮮やかに火照った乳首がアリマス。


「ほら、どうだい。あたしも成長しただろう」アリナさんは得意げな顔になって、両手を腰のくびれの終点にあてた。

 背中をふんっとのけぞらせたものだから、上裸の迫力は満点である。

「あ、あい。僕は、よくないとこばかり成長しましたが、ママは素晴らしいです。極彩色と、質量はふんだんに使われ、それでも無駄はありません。引っ込むとこ引っ込んで、出るとこふにぷに柔らかく、立派も立派。今宵は二人、眠りません」


 アリナさんは「どういうことだい?」と言って首を傾げた。

「ボクモ、ワカリカネマス」と僕は答えた。


 関節の減った僕は、出来の悪い機械人形のように歩いた。手の届く距離になったので、たまらず乳首を指でぴんと撥ねる。

「ひゃんっ」アリナさんは腕でおっぱいを挟むようにしながら鳴いた。

 乳は腕に押されて、ちょっとむにゅと正面においでしました。顔はちょっと仰向いて、せつなそうにしています。


 




 

 

 


 

 

 

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