第7話 乳

 鎖骨の下のくぼみに、指四本添わせる。横に撫でてみる。

「んぅ。ちょっとくすぐったいね、これ」アリナさんの肩が、くすぐりに耐えかねたのかくねる。

「ええ。でもこれが案外、効果あるんです」もう片方の手で、彼女の耳裏や、そのたぶをもてあそぶ。

「うあっ、あぁ」

「気持ちいいですか?」

「ふあっ、うんぅ、いい、よ」


 反応が、ことごとく性的で、女だ。美しい囀り。アリナさんが僕に身を委ねているのをいいことに、しばらく続ける。時々、僕の指から滑らそうと体が動く。でも、逃がさないようにする。女の人の身体は、こうも柔らかいのか。すべすべ、つるつる。飽きない。


「そろそろ、もうちょっと下のとこを揉みますね」いよいよだ。口調は焦りなし、多分。

「わかったよ」

 もうちょっと下というのがどこを指しているのか、アリナさんはよくわかっていない様子で、あっけらかんと答えた。わかっていようがわかっていまいが、ここまで来たら突っ走るしかあるまい。


「それでは、ヘッドボードにもたれてください」どうせなら、正面から揉んでやろう。

「ふうん、前からするんだね」何か気づいた様子でアリナさんは言うが、すんなり四つん這いになって、ヘッドボードへ移動してくれる。


 ふっくらお尻が、僕を誘惑している。あれも、むんず掴んでやる。


 アリナさんはベッドの上にあぐらかいて、ヘッドボードにもたれた。わかたれた太ももは光って、ふくらはぎはすらり長い。身体だけなら力抜いているように思えるけれど、表情には緊張がある。


 僕が”つぶらな瞳”を発動させたせいだろうか。”つぶらな瞳”さえ発動させていれば、たといにへへと笑っても、童貞高校生だとは見破られない気がしたのだ。浅はかだろうか。でも、これが精いっぱい。僕の判断力、女の色香にやられてずっと低くなりました。


「も、揉みもみしますね」両手を大きなふくらみに向けて、でもまだつかめないから、代わりに空気を揉む。

「お前まさか、おっぱいを揉もうとしているのか!?」アリナさんは乳房を腕で覆うようにした。

「ダメですか?」瞳を目いっぱい潤ませる。

「いくらなんでも……なにか効果はあるのか」

 アリナさんはそう言いながら僕と目を合わせた。途端に、警戒の表情が消える。


「はい。おっぱいも大事に揉んであげなきゃ、悪いものが溜まります。僕、それ流すのが得意なんです」何故だか、妙に平坦な声で僕は言った。緊張、しているのだ。

「急にロボットみたいにしゃべって、大丈夫かい」

「大丈夫です」また、ロボットのように答えてしまう。

「そうか」

 彼女がはっきりとした納得を示すまえに、その締まった太ももにのっかる。


「おい、いきなり引っ付くな!」アリナさんは驚いて、目と口をいつもより大きく開けた。

「問題ありませんから、もっときれいにしてあげます。ほら、こうして」


 両手をおっぱいの外側に沿わせて、顔は谷間に埋める。もう、我慢できない。手のひらで優しく圧力をかける。むにゅっと僕の指は乳房に包まれる。顔が、左右の乳房に押しつぶされる。やわらかく、あたたかい。このまま、ぺちゃんこになっても良い。


「おいっ。まだ心の準備ができてないのにっ、んぁ。ぱふぱふするなぁ」アリナさんは、背中をゆらすように動かした。


 でも、僕を突飛ばそうとはしない。うまいこと、母性を刺激できているのかもしれない。あるいは、この人ちょっと頭おかしいのかね。俺が女なら、こんなクソガキにどんな理由付けられたって、自分の胸は揉ませない。


 彼女の鼓動がきこえる。やわらかさのなかにいて暗いから、これが子宮の中であるかと、おかしな考えが浮かぶ。しかし、案外こんなとこなのか?


 僕の心臓も高鳴る。打つのが速くなりすぎて、オーバー・ヒートしちまう。


「ゆったりしてください、アリナさん」今度は両手を頭に近づけるようにして、おっぱいを正面から揉む。鎧のビキニがあるから、手のひらの中央のは、硬い感触がある。そこ以外はもにもにだ。


 僕の方が、彼女より背も小さいけれど、征服感がある。アリナさんは今、僕が支配しているのだ。


「気持ちいいですか? 僕のマッサージ」谷間に顔をぐりぐりする。

「気持ちよくなっちゃ、ダメだよ」僕を包むぬくもりのちょっと上から、力の抜けた声がする。

「良いんですよ、気持ちよくなって」顔を起こして、アリナさんを見上げる。


 頬を上気させている。瞳の色はうっとりしている。子を可愛がる母の色と、女の色が混ざっている。そんな表情で、僕を見下ろしている。これを、女一色に染めなければならない。


 指を、下乳と、それに沿うビキニの間に入れ込む。指で牛のような乳を撫でながら、徐々に上へもってゆく。指がとうとう、乳の先端を隠す邪魔な鎧を浮かしそう。


「ちょ、そこはダメだ!」アリナさんが慌てた様子で僕の手首をつかんだ。

 彼女の手のひらは、しっとり汗ばんでいた。


 つかまれるけれども、やはり彼女は引き剝がそうとはしない。それならと、構わず鎧を指で浮かし、侵入する。アリナさんをじっと見つめながら。


 見上げる女の、目がわずかに細められた。そうして、以前のように下唇を噛んだ。期待しているような。


 


 




 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る