第4話 洗礼の儀



 洗礼の儀 当日。


「アルス様、お召し替えが完了致しました」

「うん。ありがとうマリア!」


 朝、起きた俺はマリアや他のメイドによって着替えをしていた。

 貴族らしく仕立ての良い服だと思う。


 俺は鏡で全身を見る。


「(本当に俺は美少年になってるな…、髪も目も金色だし…、輝いて見える)」


 自分の顔を見てつくづくそう思った。


「(顔は中性的で整っていて、体は少し小柄だし、髪を肩まで伸ばしてるから女の子に見えなくもないな)」


「アルス様?如何なされましたか?」

「ううん。なんでもない」


 マリアが聞いてきて俺はハッとなる。


「そうでごさいますか。それでは行きましょう」

「うん!」


 今日は俺の洗礼の儀だ。







 俺はおめかしをした姿を父上と母上、アイに見せる。


「よく似合っているぞアルス!さすが自慢の息子だ!」

「アルスちゃん、カッコよくて可愛いわ!」

「きれー!!」


 三者三様の反応をしている。うむ、これが見れただけで満足だ。

 屋敷のメイドも「あぁ、尊過ぎて死にそう」とか言ってたし、それなりに似合ってるんじゃないかな?


「よし!行こうかアルス!」

「はい、父上!」


 家族全員で馬車に乗り込む。

 正直言って、『身体強化』して走った方が速いんだけどアイがいるからそれは無しになった。仕方ないね、外部への評判もあることだし。


 屋敷の門を抜ける。そして——


「うん…!やっぱり綺麗だ!」


 初めてこの街を見たとき、今と同じような気持ちを抱いた。何回見ても感動の声を上げてしまうほど、綺麗だ。

 至る所に家が並んでおり、道には多くの人で溢れ、活気が感じられた。


「ひっろいなあ~。それに人も多い」


 領都であるここ、“ザラ”は朝であっても人が沢山居て、並ぶ家の隙間からは太陽の光が出ており、幻想的な雰囲気を生み出していた。


「(こんな良い場所、前世でも見たことないなあ)」

「そうだろう。なんたってここは“王都クリスタ”を除けばこの国一番の街の大きさなんだからな!」

「へえ!それは初耳です」

「ふわ~!おにいしゃま、とってもきれいですね!」


 アイと俺は朝の街に行ったことが無かったので、この景色に感動している。こんな綺麗なら父上に無理を言って行かせてもらえばよかったな。


「うん!そうだね!」


 俺は街に目を離せなくなっていた。

 笑う人々、遊ぶ子供たち、散歩をする老夫婦、誰もが幸せそうな表情をしていた。



 ——それから数分後。


「ご主人様、教会に到着いたしました」


 御者の若い男がそう告げる。


「ありがとう」


 父上はそれに返事を返して、俺達を降ろさせた。


「父上、『洗礼の儀』とは教会きょうかいで受けるものなのですか?」

「ああ。言ってなかったがそうだぞ」

「へえ…」


 何でわざわざ教会で?と思ったが、そういうものなのかな。


 俺達は教会の中に入る。

 教会の中には既にたくさんの人で埋め尽くされていた。どうやら儀式をするのは五歳位の子供だけのようだ。


 教会の中には祭壇があり、後ろに神父さんが居る。そこで儀式をするみたいだ。


 すると、祭壇の前で跪いた子の下のをした床が光り輝き、神父さんの持っている石板に文字が浮かび上がる。

 それを神父さんは読み上げる。


「あなたのスキルは、【調理】と【短剣術】です」


 神父さんが今儀式をしている男の子にそう言う。


「やったな!」

「うん!」


 その子の父親らしき人が側に来て、笑顔でそう言った。こんな感じなのか。というか、なんで人がたくさんいる前でやるんだろう?スキルって重要そうなのに。


 儀式を見ていると、周りの俺達に気づいた人達がまるで海が割れたように道を開けていく。


 それを目の当たりした父上が困った声で言う。


「いや、わざわざ開けなくても良いぞ諸君」


 しかし、彼らは


「いえいえ!とんでもない!いつもお世話になっているのに!」

「そうですよ領主様!これぐらい出来なきゃ私たちは役に立たないんですから!」

「儂もそう思いますわい」


 どうぞどうぞという風に譲ってくれた。


「……ありがとう。すまないな皆の者よ」


 父上は礼を言う。


「(慕われてるなぁ、父上)」


 こんなに領民に好かれているなんて本当に凄いなと心から思う。


「では、どうぞこちらへ、アルス様」

「はい」

「いってらっしゃい、おにいしゃま!」

「行ってらっしゃい、アルスちゃん」

「うん」


 神父さんに呼ばれたので、祭壇の前に行き、跪く。


「それでは、お祈りを」


 俺は両手を合わせて祈る。


 ——その瞬間、突然、辺りは


「なっ!?こっ、これは——







 驚いた神父さんや周りの声が段々と聞こえなくなってくる。


 気がつくと、


「…ん?」


 俺は見知らぬ草原にいた。

 そして、




『やあ。こんにちは』




 姿が目の前に立っていた。




「………誰?」




 ほんとに誰?



————————————————————

あとがき


2月中の投稿は予定により少し難しくなります。申し訳ありません。しかし、必ず投稿はするのでお待ちください。


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