私は、あれ以来、羅賀に、あれほどどうでもよかった羅賀が、好きでも何でもなかった羅賀を、意識し、話しかける事も、目を合わせる事も出来なくなってしまった…。いきなり始まってしまった、恋。


あの羅賀の告白に、私は、もう失敗したくない、と、先に宣言することにした。


「羅賀、私、恋愛下手でね…、なんて言うか、こんな大人ぶってるけど、何時も慎重って言われるけど、現実的って言わるけど…、なんて言うか、好きな人の前では、どうしても緊張して、恥ずかしくなって、目も合わせられなくなっちゃうの」


「そうなの?なんか意外…」


「…そうなの!」


私は、私の一生懸命のを軽くあしらわれそうになったので、ちょっと強めに羅賀の言葉を遮った。羅賀には、覚悟してもらわなければならない。私が、下を向いてるのは、嫌いだからじゃない。つまらない訳でもない。ただ、イメージと違う…と言われてしまった経験があるが故、恋愛には不安しかない。今度こそ、フラれたくない…そんな想いで、


「私、羅賀が好きだから、安心して。これから、一緒にいる時間が増えていくとして、もし、私が無表情だったり、言葉数が少なくなっても、好きで…いてくれる?」


(やった!言えた!!)


私は、心の中でガッツポーズをした。


「菟萌ちゃんは菟萌ちゃんだよ。嫌いになんてならないよ!」


その言葉に、嬉しくて、やっぱり恥ずかしくて、下を向いて、赤であろう顔を隠した。



それからは、楽しかった。私のすべを羅賀は受け止めてくれた。案の定、今までの恋愛のように、羅賀に会う度、顔も見れず、緊張して手は震えるし、恥ずかしくて、キスも中々出来ない。でも、羅賀は何も文句を言うどころか、下を向く私に、ずーっと手を繋ぎながら、いろんな話をした。もちろん、アイドルや、その推しメンの良さ、フィギュアの魅力。私は、付き合ってから、一緒にいて、こんなに安らげる人は初めてだった。それは、緊張していたけど、目も見られなかったけど、そんな『ごめん羅賀…もっと上手にお喋りしたいのに…』と思う私に、


「ねぇ、菟萌ちゃん、菟萌ちゃんは恋愛下手を悪くとってるけど、僕はそこも菟萌ちゃんの魅力だと思うよ。イメージ通りだ!!可愛い!!」


「…。本当?私、つまらなくない?」


「なんで?そんなはずないじゃん。それより、菟萌ちゃんこそ、つまらなくない?僕、オタクな話しかしないし…」


「つまらなくなんてない!」


私は、付き合い出して、本当にまじまじと羅賀の目を見て言った。


「好きな人の…話は…全部、面白い。それに、羅賀の写真が…何より好きだし…」


ジー…っと視線がぶつかり合って、何秒経っただろうか。

私たちは、自然と、くちびるを合わせていた。

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