第6話 ゴブリン討伐戦に参加する男
夜の闇にまぎれてゴブリン集落の討伐が始まった。
〈B級〉のパーティーが三組参加してくれたので、俺のような〈C級〉の参加者は後方支援が中心となる。
まぁ、俺のメイン武器が弓なので、後方支援のほうが有難いのではあるが、デカいゴブリンの群れには、ゴブリンメイジやゴブリンアーチャーなどの遠距離攻撃特化のヤツが混じるので、後衛チームも気が抜けない。
ゴブリンの集落は山間の奥まった大きな洞窟を中心に周囲の数ヶ所の洞窟を使用した天然の要塞のような作りだった。
B級の三チームが手分けしてメインの大洞窟を攻略する間に
C級の遠距離攻撃で周りの小洞窟を制圧していく作戦をとるようだ。
メインのB級チームは斧や盾のゴリゴリパワータイプのチームと斥候やレンジャーの索敵能力の高いチームと、バランスの取れたオールラウンドタイプとバラエティーにとんでいた。
索敵のレンジャーチームが先頭に大洞窟に忍び込む、
暫くしたらゴブリン達が異変に気付き蜂の巣を突ついた様に騒がしくなり、周囲の小さな洞窟からもゴブリン達がワラワラと飛び出してくる。
俺の仕事はワラワラと外に出てきたゴブリン達を弓で狙い射つのだが、俺だけでも20匹以上倒しているが、まだ湧いてくるゴブリンに少し嫌気がさしてくる。
そして遂に面倒臭いメイジやアーチャーが出陣してきた。
そして、ここにいる冒険者が敵の統率の取れたメイジやアーチャーの動きを目の当たりにして、指揮官級の敵が居ることを確信した。
C級チームはメイジとアーチャーに狙いを絞り少しでも敵の火力を削ぐことに力を入れる。
敵の炎の魔法が夜の闇を照らしながら雨のように降ってくる。
メイジだけでも二十匹程居そうだ。
固まっていると格好の的になるので、俺たちC級チームはバラけてメイジとアーチャーを狙い射つ作戦に移った。
俺はこの隙に俺にしか出来ない戦法にでる。
ある物をアイテムボックスで回収しながら、敵の集落の真上の崖に回り込み息を潜めてチャンスを伺う。
〈B級〉のチームが閃光弾を上げて大洞窟から出てきた。
〈苗床〉に成った者の救出完了の合図だ。
〈B級〉のチームが大洞窟から完全に離れたのを確認し、俺は、俺の最大火力の攻撃を放つ。
周囲で集めた岩をアイテムボックスから敵の上部に陣取り落下させる。
精度は悪いが、物量だけなら転生特典のアイテムボックスに勝てる物は少ないだろう。
ガラガラと落石がゴブリン達を飲み込む。
轟音の後に一瞬の静寂に包まれる。
「キングが出てくるぞ!」
と、〈B級〉チームの声が響いた。
パワータイプチームとバランスタイプチームが協力して大洞窟の前辺りに布陣して、これから洞窟から出てくるであろうゴブリンキングを迎え撃つようだ。
俺はまた、岩雪崩れでも倒し損ねたゴブリンを弓で撃破して回る。
空か少し明るく成った頃、
ようやく〈B級〉チームによりゴブリンキングが倒され、ゴブリン集落の掃討作戦が終了した。
参加者に、怪我人は出たものの死者は出ておらず、作戦的には大成功と言える結果だった。
ゴブリンキングを頂点に300近いゴブリンの集落で、奴隷商人のキャラバンを襲い男はなぶり殺しにされ、女は苗床にされていたそうで、数名の女性が保護された。
女性達は教会で一時的に保護され、心と体を癒してから社会生活に戻るのだが、多くの場合は修道女として過ごす者が多くいるようだ。
それほど迄に過酷な生活だったのだろう。
今回保護された女性達には、少しでも早く穏やかな日常に戻れる事を祈るばかりだ。
さて、今現在、
俺は冒険者ギルドのホールで今回の作戦に参加した者で〈お疲れ様会〉に参加しているのだが、
正直、もう帰って寝たい…
「うぉい!途中で土属性の大魔法を使った魔法使いチームはどいつだ?」
と〈B級〉のパワータイプチームのリーダーがエールを片手に叫んでいる。
「あんなスゲェー魔法が有るなら先に言ってくれたら作戦も楽できたのに。」
と〈B級〉の索敵タイプのチームの面々も口々に言っている。
〈B級〉のバランスタイプのリーダーが、
「あれは、〈C級〉のユウがヤったんだろ?
俺見てたぜ!」
とバラシてしまった。
あー、もう帰りたい…。
そこからは、良い酒の肴にされながら、温くて微炭酸のエールを飲まされる苦行が続いた。
魔法使い達が大魔法について聞きにきたが、〈アイテムボックス〉だとネタばらしをしても直ぐには信じて貰えなかったりと、ある意味戦闘より面倒臭いやり取りをこなし、昼前にようやく解放された。
金を貯めてスキルショップで魔法のスキルスクロールでも買って〈魔法使い〉と名乗ったほうが楽かもしれないな…
「魔法です。」で済ませれるから…
と考えながら宿屋に戻りサラとガルに軽く報告した後にベッドに倒れこんだ。
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