第12話 思いが、止まらない
「ダメ、日向、ダメ……それ以上、ダメ……おかしくなっちゃう、私……私ダメになっちゃう、おかしくなっちゃう……それ以上ダメ、ひなた……ひなたぁ……!」
「……!?」
俺のお腹にコテンと頭を埋めた亜理紗が、消えそうな声でそう呟く。
降ってきた雨に、亜理紗の震える心臓の鼓動にかき消されそうになるけど、その声はしっかりと俺の耳に入って、離れなくて。
「私ね、おかしいの。少し前からおかしくて、昨日からもっと変になって……日向に一緒にいたいって言われてから、日向の家で一緒に住むってわかってから、ずっとドキドキ止まらないの。身体が熱くて、ぷかぷかどこかへ飛んで行っちゃいそうで、日向の事求めて、止まんなくなっちゃうの」
「……あ、亜理紗?」
「いつも通り接しても全然ドキドキおさまらなくて、身体が沸騰しそうで、燃えちゃいそうに熱くて、ゾクゾクしてふわぁーっ、てなって何も考えられなくて……身体が気持ちいい事求めて、やめられないの。日向の事考えるだけど、身体がおかしくなっちゃうの、日向の事しか考えられなくなっちゃうの……日向の事想うのが止められなくて、私おかしくなっちゃうの」
「……亜理紗」
胸に感じる荒い息は、今にも燃えそうで。
震える華奢な身体は、それが壊れることを恐れるようにギュッと俺にしがみついて、離さないで。
「私変なの……日向の名前呼ぶたびに、名前呼ばれるたびに身体が熱気球みたいにふわふわ浮いちゃいそうで、ぷかぷかして自分の身体じゃないみたいで……何も特別なことしてないのに日向見るだけで、日向の声聞くだけで頭も、身体も、トロトロになっちゃって、何もできなくないのに……でもずっと日向の事を求めてて……こんなの初めて、今もずっと……私、日向の事……んんっ、日向、ダメ、ダメ……ひなたぁ……」
胸に埋めた亜理紗の顔は、表情は俺にはわからない。
でも多分複雑な表情してる……自分の気持ちがわからなくて、気持ちの整理がつかない、そんな表情。
雨がだんだん、強くなる。
「今朝も昨日の夜も、さっきも、今も……普通にしようと思ったのに、普通に日向と過ごして、日向の事受け入れたかったのに……でもダメなの。日向見ると頭が蕩けて、ふわふわになって、指が這うの、止められなくて……わかんないよ、嬉しいのに、怖い……自分がどうなっちゃうかわかんなくて、怖いよ……ハァハァ、どうしよう、ひなたぁ……こんな私じゃ、嫌われちゃうよ……日向が私の事、嫌いになっちゃうよ……ヤダ、やだ、どうしよう、どうしよう、日向……ひなたぁ……」
「……大丈夫、全部受け止める。どんな亜理紗でも、俺は受け止める、絶対嫌いにならない。亜理紗の事、嫌いになるわけないじゃん。亜理紗に何があっても、俺は絶対、そばに居る」
震える亜理紗の身体を抱きしめる。
雨に濡れているのに、温かくて、柔らかくて……絶対離さない、大好きだ。どんな亜理紗も嫌いになるわけない、大好きだ……絶対にそばにいる、嫌いに何てならないと、亜理紗の事!!!
「ハァハァ、やめて、やめて、日向……今、ギュッとしないでよ、もう私、蕩けてふわーって、壊れて、燃えてなくなって……んん……んんん、んっ……ァハァ、日向……ダメ、ダメ……ダメ……嬉しいのに、ダメ……ハァハァハァ……」
「ダメじゃない、ダメじゃない。ダメじゃないって、亜理紗! 何もダメじゃない! だって、俺亜理紗の事だい……!?」
大好き―伝えたかったその気持ちを伝えようとした瞬間、亜理紗が掴んでいた俺の腰をギュッと捻る。
「ダメ、言わないで! それ以上言っちゃダメ、もうダメだよ……今だって、日向にぎゅーってされてるだけで、こんなに熱くて、トロトロで……びしょびしょに濡れちゃってるんだもん。もし大好きって言われたら、私、どうなっちゃうかわかんない……日向の事も、何しちゃうかわかんない……日向が幻滅しちゃうこと、絶対しちゃう。日向が私の事、嫌いになっちゃう……ダメ、絶対ダメ、日向……」
「……嫌いに何てならないよ、亜理紗の事! そんな事で幻滅なんてしない、そんな事するわけない!!! 何があってもいい、俺の気持ち変わんない、そんな事で亜理紗への気持ちが変わったりしない! むしろ嬉しいよ、俺は! だから亜理紗、亜理紗……」
「わ、私がダメなの! 私が嬉しくないの……ううん、ごめん、嬉しい。すっごく嬉しいし、幸せ……でも、それ以上に怖いの。怖いの、日向のその気持ちを受け入れた時が怖いの。日向と一緒に住んで、一緒に過ごして……その時に、どうなっちゃうかわかんなくて、怖いの……嬉しいけど、怖いの、私怖いの……」
「あ、亜理紗、俺……」
「ずっと日向の事、求めちゃいそうで。日向への気持ちが抑えきれなくてずっとずっと、日向の事求めて、日向が嫌でも、私が無理やり求めて……壊れちゃうよ、壊しちゃうよ。日向の事、ずっと大好きして、日向から離れられなくて……日向の全部、壊しちゃうよ……」
「……亜理紗」
「嬉しいのに、幸せなのに。夢かなって、嬉しいはずなのに……それなのに、恐怖が勝っちゃうの。気持ちが暴走して、一緒に住んでるから歯止め効かなくて……日向はえっちな女の子、嫌だよね? えっちで淫乱な亜理紗、嫌だよね?」
「ううん、俺は亜理紗なら……」
「……ごめん、嘘ついた。私がダメなの、私が嫌なの……ダメなの、日向……だからダメ、言わないで……本当にそれ以上、言っちゃダメ……!!!」
降り続く雨は、やみそうにない。
★★★
感想や☆やフォローなどしていただけると嬉しいです!!!
雨降りの放課後、大好きなねこ系美少女を拾った。離れたくないから一緒に住むことになった。 鈴音凜 @akibasuzune624
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。雨降りの放課後、大好きなねこ系美少女を拾った。離れたくないから一緒に住むことになった。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます