第27話.動き出す革命軍
革命軍へのうまい対応がとれぬまま数ヶ月がたったある日事態は急変する。今までは盗賊への対応のみをしていた革命軍だが、本格的に国の乗っ取りを開始したようで、各地を回っている王宮騎士団への被害が出始めた。王宮騎士団への被害だけならまだしも、革命軍は自分の傘下に入らない村々まで襲い始め、襲われた村は服従を誓わされ行動を制限されているようだ。そんな中、とてつもない事件が起きる。
バァン!
「リュート団長、ハリー隊長が…」
息を切らせながらポルカが騎士団宿舎に飛び込んできた。
「ハリーさんがどうかしたのかポルカ?」
「ハリー隊長が革命軍に拉致されました!」
「どういう事だ!詳しく詳細を」
ポルカの知らせを聞き、隣にいたロベルトが驚き発言する。ロベルトのあまりの勢いに押されながらポルカはその時の状況を説明し始めた。
「はい、ハリー隊長率いる我々後方支援隊はこの国の現状を調査すべく各村を回り、情報を仕入れていたのですが、南東にあるアディーシュ村にて革命軍と遭遇してしまい。」
「そこで交戦になったということか…」
「はい、リュート団長の言う通り交戦になり多勢に不勢の増状況で…」
「それでハリー隊長が囮になり、革命軍に拉致されたと…」
「はい…ハリー隊長が1人でも多くの団員が帰り、このことを伝えるべきだと…」
「そうか…」
ポルカの目からは涙が流れていた。
「どうするリュート?事は一刻を争う状態だぞ」
「そうだな…向こうがどういう手でくるかわからないが、こちらとしてもただ、手をこまねいているわけにもいかない。」
「だよな…」
こうしてハリー救出の為のメンバーが集められた。今回の目的は、ハリー救出が主になるため、少数精鋭の部隊となり、特攻隊からは4名、守備隊から4名、後方支援隊から2名の計10名の少数精鋭隊になった。もちろん、リュートとロベルトも参加している。後方支援隊のポルカなのだが、怪我と疲労のことを考えると、部隊に参加するべきではないのだがポルカの強い要望もあり、今回は特別的に許可をした。
「さて、皆の者、今回はハリー隊長の救済が任務となるが、今回の任務はかなり危険である。」
リュートは集まった団員達に今回の任務の説明を開始した。革命軍に拉致されたハリー隊長の救出がメインであり、戦闘がメインではない事、相手に逆に捕まってしまう可能性がある事、ハリー隊長がもう既に亡くなってしまってる確率がある事、起こり得る可能性のあるもの全てを説明した。
「だが、我々は王宮騎士団である。その我々が敵に怯え、仲間を見捨てるなんて事はあってはならない。だからすまない…皆の命を私に預けてくれ!」
部隊長救済の為に行う任務としては、デメリットが多すぎる。しかし、リュートの話を聞いた後、団員は誰1人として反対をしなかった。
リュート率いる部隊はアディーシュ村に向う。アディーシュ村に着くまでの間少しでも革命軍の情報を手に入れようとポルカから話を伺う。
「ポルカは革命軍のメンバーと直接対峙したのか?」
「私は遠目から少し見たぐらいです」
「ポルカから見て革命軍の印象はどんな感じだった?」
「なんて言えばいいか、うまく言えないんですけど、正直印象的には盗賊とあんまり変わりませんでした…」
「盗賊と?」
「はい、なんというか、規律みたいなものはなく、統率もあんまり取れていないように感じました」
「そんな状態でうまくまとまることなんかできるのか?」
ポルカの問いに不思議そうな顔でロベルトが聞き返す。
「私もそう思っていたんですが、とある男が出現した途端彼の態度は変わりましたね」
「変わったというのはどういう風に変わったのだ?」
「明らかに革命軍のメンバーは彼に怯えていました。彼が来るまでは下品な振る舞いや村の女性に対し、下劣な言葉などを浴びせ掛けていたのですが、彼が来た途端、そういう行為を一切やめましたね」
「ポルカはそいつの顔を見たのか?」
「見ることは見ました。ただ…」
「ただなんだ?」
「あまりうまく言えないのですが、表情が読み取れませんでした。無表情で何を考えてるのかわからず、どこにでもいるような顔なのですが、なぜか思い出せない。そんな感じです」
どこにでもいるような顔だが、思い出せない。というポルカの言葉を聞いて、リュートもロベルトも自分たちなりに色々思い浮かべてみたが、どうにも思い浮かばない。
「なんていうか…思い浮かばんな…」
「まったくだ。どこにでもいるような顔だけど、思い出せない。簡単なようで複雑だ…」
「はい、ただひとつだけ言います。」
「なんだ?」
「彼を見た瞬間、時が止まったかのようでした…それぐらい恐ろしかったです…」
ポルカはそういうと震え始めた。ポルカは体こそ小さいが実は負けん気が強く、多少の事では動じない肝っ玉の持ち主だ。そのポルカをこれほどまでに震えさせる革命軍のリーダーとは、どれほどまでに恐ろしい人物なのだろうか…
アディーシュ村までは何の問題もなく到着することができた。アディーシュ村は荒らされた気配もなく一見見れば何の変哲も無いように見えるが、村人達はどこか落ち着きなく怯えていた。状況から考え、革命軍のメンバーがどこらかに潜みこちらを狙っているのだと考え行動開始するリュート達だが、革命軍はもう既にアディーシュ村にはいなかった。ハリーは一緒に連れ去られたものだと思い村人達に現在の状況を確認している時、ある村人からハリーが革命軍から解放され村長宅で介抱されているという話を聞いた。
トントントン
「はぁ~い」
「お忙しい所申し訳ありません。私、王宮騎士団団長のリュートというものなのですが、こちらで我が隊のハリーが看病されているというお話を聞き伺いさせて頂きました。」
村長宅のドアを叩くと、若い女性の声がした。その女性の声に怯えるような声などはなかったが、罠の可能性も考慮し構える団員達。そんなことつゆ知らず、娘が扉を開ける。
「キャッ!」
扉を開け、目の前にいる団員達を見て悲鳴をあげる娘。どうやら罠などはなくただ単に、娘を怯えさせてしまったようだ。
「驚かせて申し訳ない。革命軍に襲われたと聞いていたので、念のためを思い…」
「あぁ~そういう事ですか」
村長の娘は納得してくれたようで、家の中に案内してくれた。家の中でリュートたちは改めて自己紹介をし、現状についての話を聞いてみた。娘の名前はマリナといい村長のひとり娘で革命軍が来た時に村の中にいたらしいのだが、革命軍のメンバーと鉢会うこともなく革命軍のことはよく知らないらしい。
「革命軍が村に攻めてきたのに、出会うことがなかったのですか?」
「はい、村の外にいた人達は、革命軍の人たちと出会ったらしいのですが、私は父に言われ家の中に避難していたので彼等と合うことはありませんでした」
「そこから先は、もしよろしければ、私が…」
そう言いながら奥の扉から村長が顔を出した。挨拶も早々に村長から話を聞く、革命軍とハリーの部隊が遭遇したことにより1時戦闘状態にはなったらしいのだが、事態が沈静してからは、村人に被害を出さないという約束のもと降伏をし、その結果に満足した革命軍は、次の日にはハリーを残し撤退したらしい。
「この村に甚大な被害がなくて何よりです。話を聞く限り、ハリーの傷も大したことなさそうですし…」
「いや、それが…」
村長の話を聞く限り、ハリーにも大した被害が無いように感じ、安心をしたリュートだが村長の顔はひどく曇ったままだった。
「それは一体どういうことでしょう?…」
「いや、なんと言えばいいか、とりあえず直接ご本人の方に…」
そう言いながらハリーの寝床へ案内する村長。村長が開けた部屋の中で寝ているハリーは壮絶な姿であった。全身に包帯を巻かれ身動き一つとらないハリー。一同はそのハリーの姿を見て、言葉を詰まらせた。
「ハリー…」
やっとのことで出た人ほどがその一言だった。
「おぉ…みんな…来てくれたのか?…」
「ハリーさん一体何があったんだよ!」
「リュート…アイツには気をつけろ…」
「アイツって…」
「革命軍のリーダーカルマだ…俺も色々なやつを見たがあいつよりやばいやつは見たことない。ホーク以上だぞ…」
ホーク以上その言葉を聞いて、その場にいた全員が凍りついた。ホークといえば騎士団最強のストーンを子供扱いし、リュートとロベルト2人がかりでやっと倒した怪物である。あれから数年経ち、以前より腕をあげた自信はあるものの今ホークと1人で相対した場合勝てるかと言われたら勝てると言える自信はない。そのホークより上と言われるカルマの実力はどのようなものなのだろう。
「そんなにすごいのか?」
「俺はあんなに素早い人間見たことがない…気付いたらこの有様さ」
イテテと言いながらその腕を見せるハリー。その腕には無数の切り傷があった。これだけの切り傷をたった1人でつけたというカルマの恐ろしさが見て分かる。
「この傷をたった1人で?」
「あぁ…正直俺自身何をされたのか全くわからない。」
「あの~そろそろ休ませてあげてください…」
ハリーの様子を見てマリナが声をかける。ハリーにはまだ聞きたいことがあったが、この状況だと無理もない。ハリーを頼み王都に帰ろうとしたその時…
「リュート…気をつけろ、決戦はすぐ…」
その言葉を言い、ハリーは気を失った。
ハリーの言葉が頭から離れない。決戦はすぐ…その言葉を思い出す度に答えの出ない答えを探してしまう。王都に向かう一同の群れはまるで通夜のように静かであった。
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