第26話.不穏な空気

リュートが騎士団員になって早3年、リュートは23歳になっていた。ヴォルグが殺されたという噂が流れてから、この国はとても平和であった。だがしかし、ここ最近国に混乱を起こそうとしている革命軍たるものが発起し、国はまた荒れるようになってきた。

「リュート団長、南のコーディー村から年貢を収めることを拒否するとの通達がありました。」

「何だと?コーディー村からも…これで南側の村はほぼ壊滅状態ですね」

革命軍が発起されてからというもの徐々に革命軍を推す村が増え王都に送られる年貢の量が目に見えて減っている状態である。国民の事を考えた上で、年貢は最低限の量にしている以上、年貢の量が減る事は王都の危機そのものに直結する。

「どうしましょう?このままでは王宮騎士団の維持にもかかってきます。いっそのことをもう少し年貢を上げて見ようかと思っているのですが?」

「う~ん…しかし、それではますます国民達の不満を煽ることになりかねます」

リュートと話しているのは王の側近のブラウである。ブラウはネメシスが放浪の旅に出て出た時に出会ったギャンサーで、当時バルサながら民族差別を持たないネメシスに興味を持ち一緒に旅をしていた人物である。ギャンサーの特徴的である骨格の大きい体をしておらず、どちらかというと細身で華奢な体つきである。ブラウ自身もその事に対しコンプレックスを持っていて、そのコンプレックスを払拭するかのごとく知識を埋め込み、いまや王の右腕として活躍している。

「そうですね…ではいっそ革命軍滅ぼしてみるのも手かと…」

「いや、革命軍自体が盗賊とやっていることが変わらないのであれば、それも一つの手ですが、革命軍が今のところ村を襲ったという話は聞いていません」

「ですが、だからといってこのままでは我々の存続にも関わっていきます」

「わかってはいますが、革命軍が国民の敵でない以上、我々に取れる行動は耐えることしか…」

革命軍が活動を開始してからというもの国の情勢はまた混乱し始めている。革命軍自身が盗賊を討伐してくれるのは、王宮騎士団としてもありがたいことなのではあるが、問題はその革命軍が国の完全解放を掲げていて革命軍に助けられた村々が、革命軍側につきそのことにより、クーデターにつながっているのだ。革命軍自体が何も関係ない村を襲っているのであれば、こちらとしてもやれることはあるのであるが、革命軍自身は村を襲っている盗賊たちから村を守っている状況である以上、王宮騎士団としてはどうしても後手に回ってしまう。

「ふぅ…分かりました。リュート団長、しかし、このまま後手後手に回っていても物事は何も解決しません」

「わかってはいます。わかっているのですが…」

行き先の見えない会議が終了する。ここ最近の話し合いは先行きの見えない話ばかりである。いっそのことを革命軍が国の解放を掲げず、我々と共に国を良くする方法を考えてくれる方向にいってくれれば、物事は全て丸く収まるのだが、その方法が見つからないのが状態である。先の見えない戦いが、これほどきついものだとは思わなかった。

「よぅリュート、ブラフ様との話はどうだった?」

「あぁ相変わらずだよ。ロベルト」

「んまぁ、そうだよな。革命軍がこの国の民の敵であるのならば話は別なのだが、革命軍自体は王国の敵ではあるが、この国の民の敵ではないからな」

「そうなんだよ。彼らがやってくれてることは私たちとしても助かる事ではあるのだが、その彼らが私たちを敵視しているのが問題なんだよな…」

ロベルトととの話し合いも変わらない。実際にどう行動を起こせばいいかの正解が見えてこないのである。いつかはどこかで革命軍と争うことが予測はできるのだが、それがいつなのかというものを考えてみても、その答えは一向に浮かぶことはない。


「どうしたの、リュートを最近疲れてた顔してるけど?」

そんなリュートの顔を見て心配するロザリア。

「いや、最近の国のことなんだけど…」

「うんうん…」

「革命軍ができてからというもの、うまく行動ができないんだよ。彼ら自身がやってる事が、悪いこと言わないのだが、彼らの行動のせいで我々の行動がうまく回らなくなってしまって」

「彼らの行動って、彼らは盗賊から村を助けているんだろ?だったら、リュート達からしても助かってる所はあるんじゃないのかい?」

「うん、盗賊の件に関しては正直助かってるんだけど、革命軍は国の解放を目標に掲げているんだよ」

「国の解放?」

リュートの一言に興味を示したストーン。

「うん、そうなんだよ。国からの解放を掲げていて自分たちの自由を主張しているんだ」

「ほう…」

「盗賊みたいに各村を襲っているのなら、俺達も対応ができるんだけど、そうじゃないから、どうしていいか対応が分からないんだよね」

「確かにそれだとどういう対応したらいいかわからないね」

「そうなんだよ、母さん、ちなみに父さんはそういうようなことを起きたことあるかい?」

「う~ん、私達の場合はそういうことはなかったな…ホークとかの盗賊団も自由を謳ってはいたが、彼らは村を襲っていたからな」

「そうなんだよ。だからどうしていいのかわからなくてさ。全部後手後手に回っちゃうんだよね」

「それは困ったもんね。」

「そうなんだよ。何とかお互いが上手くいく方法があればいいんだけどね…」

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