第4話.突如起こる悲劇

ハヤトたちの崖崩れの計画が終了してから数日が経った頃、バルサミア王国にとてつもない雷雨が襲った。雷雨は数日にも及び振り続けハトムにもその影響を及ぼしていた。

「ハヤト悪いけど、そっちの窓の補強をお願い。」

「わかった。他に何か手伝うことは?」

「じゃあ、そっちの補強が終わったら今度はサーヤちゃん家のお手伝いをしてきてもらっていい?あそこは女の人がいないから男手が足りないと思うのよ」

「えぇ~…サーヤの家…」

「いいから黙っておいき、いつかあなたの奥さんになるかもしれない人なんだから」

ハヤトの母がそう言う

「やだよ。あんな仕切り屋」

ハヤトはふてくされたように、でもどこか恥ずかしそうにした感じでそうかえす

「はいはい、分かった。照れない照れない。いいから、早く行きなさい」

母親に促されサーヤの家に行くハヤト。

 

トントン…

「こんにちは、おばさん、母さんから言われてはお手伝いに来たんですけど、何かやることある?」

「あら、ハヤトくんありがとう。私たちだけだと窓の補強も上手くいかなくて困ってたのよ」

そう言いながらサーヤの母が迎え入れてくれた。

「あら、ハヤトあんたもたまには気が利くじゃない?」

ハヤトの存在に気付き悪態をつくサーヤ

「うっせ、バ~カ。母さんに言われたから仕方なく来たんだよ。」

「あら、あんた知らなかったわ?マザコンなのね?」

いつものように口喧嘩が始まると思っていた矢先、もう1人の客人が現れる。

トントン…

「こんにちは?母さんに言われて来ました…何か僕にお手伝いできることはありますか?」

「あら、トーマくんまで本当にありがとう。サーヤはモテモテね」

「あら、トーマも来たのね」

「トーマもって?…あっハヤトくん。」

「よぅトーマ!」

ハヤトにいることに気付き嬉しそうにするトーマ。トーマにとってはサーヤよりハヤトに出会えた事の方が嬉しいらしい。

「じゃあ、トーマ。ちゃっちゃと窓の補強やっちゃおうぜ」

「うん。ハヤトくん」

そう言いハヤトとトーマは外に出て行き、窓の補強し始めた。

「本当に助かるわ。お礼に何か温かいものでも作ってあげようかしら?」

そう言いながら、サーヤとサーヤの母は料理をし始める。窓の補強をしている際に、中での2人の光景を見てテンションの上がる2人。それもそのはず、サーヤの母はこの村一番の料理の腕前で、彼女の母が作る料理はどれも絶品なのだ。育ち盛りの子供達にとって、ごちそうをたらふく食べれることは何よりのご褒美であろう。2人の手にも自ずと力が入る。

「おい、見ろよトーマ。サーヤの母ちゃんがご飯作ってるくれるっぽいぞ」

「えっ、本当?何作ってくれるんだろう、僕は温かいものがいいなぁ?」

「確かにこれだけ雨に濡れてるとあったかいものが食べたくなるなぁ」

「うん」

「じゃあ、さっさと終わらせて飯にありつこう」

 そう言いながら作業に没頭するハヤトとトーマであった。


「いただきまぁ~す」

全員でいただきますをし一斉に食事が始まる。

「ちょっとハヤトもっと綺麗に食べなさいよ」

「うるせえ、こんなうまいもん落ちついて食べられるか」

「あんた、それは褒めてんのか、けなしてんのかどっちなの?」

サーヤが不思議な顔で問いかけるが答えは返ってこない。しかし、ハヤトの笑顔を見れば褒めているのが一目瞭然だろう。もう何年もご飯を食べていないかのごとくハヤトは次々とご飯を口へ入れていく、もちろんハヤトだけではなく、あの大人しいトーマも必死になってご飯を口にかき込んでいる。

「ほら、2人とも、そんなにガツガツ食べてると喉に詰まるから落ち着いて食べなさい。」

2人の食べっぷりを見ながら、サーヤの母が穏やかに喋りかける。穏やかな食卓で何気ない会話をする。そんな中にひとすじの水が天井からこぼれ落ちる。

「あれやだ、雨漏りかしら?」

「大丈夫だよ。おばちゃんご飯食べたら俺とトーマで屋根に登って修理してくるよ」

「あら、でも危ないわよ。この嵐の中足でも滑らしたらどうするの?」

「大丈夫大丈夫。なっトーマ」

「うん。気をつけてやれば大丈夫だよ」

「あら、そうじゃあ怪我にだけは気をつけてね」

暖かく穏やかな時間が過ぎていく…


ハトム村沖

「お頭、この嵐の中じゃいくらなんでも航海は無理ですぜ、何より船に穴があいて船自体が持ちません。」

「まじかぁ~、さすがに船体に穴が空いているのであれば、航海を諦めて修理するしかねぇなぁ~」

そう言い海賊の頭領が立ち上がる。彼の名はヴォルグ、ギャンサーの特有の恰幅のいい体をしていて海賊を生業にして生きている。

「う~ん、しかし船がおじゃんだとしても止める港はあるのか?」

ヴォルグが部下に聞く

「港はないですが、すぐ近くに村がありますぜ」

「何?村だと?ちょうどいい、海賊は船しか襲っちゃいけないという理由はねぇ 野郎どもあの村を襲って食料と船の修理をしよう」

「うぉぉ~」

意気揚々とそう言い放つヴォルグに対し船員達の雄叫びが続く

「ほら、そうと決まれば船が沈む前に村に行くぞ!」

ヴォルグ達が乗る海賊船がハトム村に徐々に近づいていく


その頃ハヤトとトーマは食事を終え、屋根の修理をすべく、屋根の上に登り初めていた。

「トーマ屋根の上は滑るから慎重に歩けよ。」

「うん、わかったよハヤトくん。」

「あんた達、本当に無理するんじゃないよ。危なくなったらすぐ降りてきていいんだからね。」

サーヤの母がそう言う。

「大丈夫だよ。おばちゃん俺たちに任せて」

そう言いながら笑顔を見せるハヤト、そして前を向き雨漏りの位置を探し始める。

「雨漏りの位置からすると、この辺だと思うんだよなぁ?どう思うトーマ」

そうトーマに声をかけるハヤト、しかし、トーマは海の方を見つめながらこちらを振り向こうとしない。

「おい、トーマどうしたんだよ何見てんだよ?」

トーマの様子がおかしいことに気づいたハヤトがそう問いかける。

「ハヤトくん、あれを見て?なんか船のようなものが村に近づいてきてない?…」

トーマがそう言いながら指を指す。その方向を見てみるとかすかに船のようなものが浮かんでいるのがわかる。

「確かに船のようなものが見えるな?おばちゃん、なんか沖に船のようなものがあるんだけど?」

「船、こんな嵐の中、船ってそれは確かかい?」

「うん、多分船だと思う…」

サーヤの母の問いに大してトーマも同じように返答する。

「そうかい、じゃああたしは念の為村長にこの事を伝えに村長の家に行ってくるから、とりあえずあなた達は家の中で待ってなさい」

そう言い残し、嵐の中を足早に去っていくサーヤの母。ハヤトとトーマはサーヤの母の言いつけを守り、家の中で待つことにする。


「よーし、もうちょっとで上陸だ、野郎ども準備はいいか?」

 同じ時ヴォルグたち海賊が乗る船がハトム村に上陸する直前であった。

「まずは飯だ。次に使えそうな材木を探せ」

「お頭らやつらが素直に渡せなかった時はどうしたらいいですかい?」

 ヴォルグの部下の1人がいやらしい顔をしながらヴォルグにそう問いかける。それに対し、ヴォルグも楽しそうな笑みを見せていながら答える。

「殺せ!船の修理に使えそうな材木がなかったら家を壊せ!俺達は慈善家じゃない。海賊だ、海賊が海賊らしく楽しんでいこうぜ!!」

「うぉぉ~」

 また、船内で荒々しい雄叫びが起きた

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