第3話.閃きし方法

王国騎士団が去ってから数日経ったある日いつもの丘で話しているハヤトとトーマそんな中、ハヤトがあることを思いつく

「なぁ?トーマふと思ったんだが、あそこに見える崖にある木がもし倒れたとしたらどうなると思う?」

「あそこの木が倒れたら、崖に木が落ちたり土砂がたまると思うから崖が使えなくなるんじゃないかな?」

「もしそうなったら、この村に入る道は無くなるんじゃないか?」

「うーん。完全に塞ぐことは無理だと思うけど、馬車みたいなものは通れなくなると思う…」

「だよなぁ~ハトム村はあそこの崖以外だと海から入ってくるしか方法がないもんなぁ…」

言いながら悪い笑顔を浮かべるハヤト、それを見てトーマが察する。

「まさか、ハヤトくん…」

「善は急げだトーマ行くぞ!」

そう言い駆け出すハヤト。それに渋々付き添うトーマ。崖についてからハヤトは周りを色々と見ている

「ハヤトくん、何をさっきから見ているの」

トーマは不思議そうに隼人に話しかける

「バカだなお前?どの木を倒せば崖が塞がるかを確認したり、他に道はないかとかそういうのを見ておかないといざ崖を塞いでも他に道があったら何の意味もないじゃないか」

「ハヤトくん、本当に崖を防ぐつもりなの?」

「あったりまえだろ?村長や村の人達は、盗賊に襲われた時のためって言って食料を渡しているが、盗賊に襲われたことなんか1度もないじゃないか?そもそもこんな山の中にわざわざ盗賊なんか来やしないよ」

「でも…」

「じゃあ俺1人でやるからトーマはどっか行けよ」

「そんな事言わないでよ。僕もやるよ…」

トーマにとってハヤトは唯一の友達、その友達を失う事が何よりも恐怖であるトーマはハヤトの言うことに従うことにした。

「だろ?トーマなら賛成してくれると思ったよ」

その言葉にトーマはとても嬉しそうに返事をする。

「うん。僕達親友だもんね。」

2人の気持ちが固まったところで色々な場所を見て回った。まずは馬車や馬などが通れる道が他にないかを確認し、次に人が通れる道を確認し、最後にどの木を崩せば崖が崩れるかを確認した。

「やっぱりこの崖を塞いでしまえば、馬車や馬は通る道がないな。」

ハヤトがそう呟く

「うん。歩いてくることはできるかもしれないけど、あんな重装備でこんな山道は歩けないと思う…」

そうトーマも続く

「いや、1件目はないように見えるがここであれば、馬車は無理かもしれないが、少し補強すれば、馬ぐらいなら通れるかもしれない。」

細い木々がある道を指さすハヤト。

「確かにこの道なら補強すれば通れるかもね。でも、騎士団の人達がわざわざこの道を補強するとは思えないなぁ」

ハヤトが差した小道を見ながら、トーマがそう呟く。

「鋭いなトーマ、俺もそう思う。だからこの木を倒して、崖崩れさえおこせれば計画は成功だ」

そう言い崖の端に立つ木を指さすハヤト、全ての計画は決まった。後はこの木を切り倒すだけ、次の日からハヤトとトーマの作戦は始まった。畑仕事を抜け出し、各々順番で木に斧を入れる。

カンカンカン…

「この斧重いな…トーマちょっと変わってくれよ…」

そう言いながら斧をトーマに渡す。

「うん。」

そう言って受け取るトーマだが

「ごめん。ハヤトくん、僕これ振れないかも…」

斧を持ちながらプルプル震えるトーマ、どうやらトーマの華奢な体では、斧を持つことが精一杯で振ることはとてもできなさそうだ。

「まじかよ。トーマ…」

「ごめん、ハヤトくん…」

ハヤトはあんまりのことに愕然とする。トーマが斧を振れないのだからハヤト1人で頑張るしかない。1日また1日と過ぎ斧を入れた木の溝も徐々に深くなっていくはずなのだが、現実はそう甘くはない。子供が振った斧の威力では木に深く傷を与えることなどできなかったのである。数日経った頃にはハヤトがトーマに提案をする。

「なぁトーマ、斧を振ることがでないとはいえ、トーマも何か手伝えることってないかな?俺1人だととてもじゃないがこの木は倒せそうにないや」

「うん。僕ができることか…応援する以外だと穴を掘るぐらいかなぁ?」

「穴?」

「ほら、木が倒れる方向に穴を掘れば木が傾きやすくなるんじゃないかなと思って」

「確かにトーマさえてんな!」

その話を聞き絶賛するハヤト、それをとても嬉しそうに笑顔で返すトーマ

「えぇ~そんなことないよ…ハヤトくんが頑張ってくれてるから、僕も何かしたいと思って考えただけだよ」

「そんなことないよ。トーマ、じゃあ早速で悪いがお願いしてもいいかな?」

「うん、任せてよ。」

その日から作業を分担し2人は行動し始めた。ハヤトが斧で木に傷を与え、トーマは木の周りに穴を掘って木の倒れるのを促す。新たな道を導き出した2人は意気揚々と行動開始した。その勢いでまたたくまに木が倒れると思ったが、やはり現実は甘くない。数日経っても一向に木は倒れることがない。数週間たった頃、とうとうハヤトの心が折れた。

「ダメだ。こんなもん絶対倒れねー…」

ハヤトの心が折れた事に安堵したのかトーマもその意見に賛同してしまう。

「うん。僕も結構穴深く掘ったけどとてもじゃないけど倒れる気がしないよ。」

「だよなあ、木だってもう結構深く傷入ってるはずなのに全然倒れやしないしなぁ」

そう言いながら、互いの成果を見つめる2人、ハヤトの木に関してはもうそろそろ3分の一に行くのではないかというぐらい達していたし、トーマに関して言えばは小さな池ぐらいの大きさまで穴を掘っていた。だが、木は2人の功績をあざ笑うかのようにピクリとも動かない。それを見て、ハヤトが思いっきり木を蹴るが、木はやはりピクリともしない。

「はいはい、もうやめぇ~終了~やってらんねぇ~」

ハヤトはふてくされながら倒れ込む。それを見て、トーマは笑いながら同じようにハヤトの隣りに倒れ込む

「でもさ、ハヤトくん?なんだかんだ言って結構面白かったよね」

「確かに、この木が倒れることを考えると、ワクワクが止まらなかったなぁ」

「うん、今日は倒れなかったけどその瞬間を考えて行動するのは楽しかったよ。」

「だよなぁ~…じゃあまあそれでいっか…」

そう笑うハヤトに満面の笑みで返すトーマ

「うん。楽しかったしそうしよ?」

ハヤトの騎士団に対する怒りも今回の行動ですっかり晴れたのか全くと言っていい程なくなっていた。そのことを考えるだけでも十分な行動だったんだろう。

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