首輪に従う黒狗-8-
「僕には
普通の人間に闘争施策がないからこその
「ハチの言う通り、
援護射撃でもしてサポートに徹するか? と問えば、無論そんな技術もない。但し
一般人をどう扱って切り抜けるかが難しい問題であると共に、何らかの訓練期間を設けた上での参戦でなければ、単刀直入に言って僕の殉職は免れないことだ。そんなのは困る。僕だって命は惜しい。
「見た所ハチは監査役というだけで戦闘歴に乏しい印象と見受けますが、何の訓練もなしに実戦に即投入しろと仰いますか? 彼の体格を見るに当たって、
【記憶喪失
「確かにハチの体格を見れば、彼が前衛で戦線を切り抜けてきた猛者とは思い難い。そんな幼気な少年を直ぐ様実戦投入するほど、流石に僕だって鬼じゃないよ。一ヶ月かな。軍事訓練でみっちり扱いてもらって、そこから保護対象者(仮)の戦闘要員として部隊に配属させるのは。記憶を喪失してはいるものの、元は相応の軍歴ある人間だ。一軍人として捉えた上で、実戦投入までに凡そ一ヶ月を所要すると計算した訳だが。少佐、君にはこの【ハチを一人前に育成する】という
待て。今この男性は何と言った? 訓練期間一ヶ月だと? 基本的に数年は要する士官学校の座学内容や模擬実践の類をこの超短期間で習得するというのか。無理だ。不可能だ。現実的でないそれに付き合ってられるものか。「嫌な予感とは当たるものだ」と、一人内心で長嘆息する。真横で「は、承知致しました。一ヶ月ですね。ですが、小官は新兵の育成経験が全くございませんので、加減が上手く行くかどうかが気掛かりではあります。無論、ハチが先に訓練に耐え切れなくなる可能性もゼロ%ではないでしょう」と任務を快諾しながら僕の耐用性を懸念する少佐の応答も、上官命令を断り切れなかっただけかもしれないが、現実的に見ればどうかしている。「それに関しては少佐の腕の見せどころというものだよ」と笑い飛ばす
まず筋肉というものは時間を掛けて鍛えていくもの。外見の変化は凡そ一年あれば出てくるだろうが、最低でも三ヶ月で変化するパターンが多い。本気で高負荷の修練をしっかり継続し、十分な栄養と休養を取れるなら、二ヶ月目辺りから身体が変わり始めてくるものだと、筋トレマニアの誰かが言っていた気がする。それを半年間継続できれば、見違えるようになるとも。
様々な点を踏まえた上で期間が一ヶ月とは、如何せん短期過ぎやしないかと焦燥感が募る。それは至極当然であった。また、一ヶ月で使い物になるレベルに引き上げる訓練に、筋トレでなく読書が趣味の自分に務まるかどうかさえ不安でしかない。戦術戦法等は戦闘中少佐に直接指示を仰ぎ対処するのだとしても、基礎体力や戦闘技術を培うのに半年、否、せめて三ヶ月は欲しいところなのだ。
「失礼を承知で発言しますが、訓練期間が些か現実的でないように思えます。僕自身物覚えの良い方でもないですし、一ヶ月で実戦投入されることに自信がありません。最低でも期間を三倍に引き延ばすなどして猶予を頂くのは難しいのですか?」
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