第6話エルフの兄弟。

今日はストロベリーフィールドのポメキチ達が来ている。


「やほ、来たよ。」


「よーこそーポメさんはブラックのアイスコーヒーが好きだったよね?二人はどうする?」


「ありがとう、おせわになります。

私はそれを頼もうかな…2人は…麦茶とかある?多分この子たちコーヒー飲んだことないけん。」


「ギルドファームでオレンジ採れたからジュースにしてあげるよ。」


「あ、よかと?ありがとう。」


「ふふ、めっちゃ呆けとるね。」


「二人共他所のギルドハウス来るの初めてやけんね、ギルドハウスって外見はみんな一緒とに、内装が全然違うけん驚いとるんやないかな?」


ポメキチの両サイドにいる長身痩躯のエルフの青年と、ポメキチに似た雰囲気の幼い幼児の姿をしたエルフがぽか~んと、口を開けて内装を見ていた。


「ぴよちゃん、さぁちゃん?ご挨拶は?」


とポメキチが2人と手を繋いだ。


「ゆ…じゃなかった…ぼ、ぼ、く、ポテチです、よろしくお願いします。」


「さくらちゃんは、いちごパフェです、よろしくお願いします!」


「さぁちゃん、ゲームでは本当の名前言ったらだめだよ」


ポテチと名乗った青年が、いちごパフェに注意した。


「あ!えへへ…」


中良さげな兄妹だと感じて、ほっこりしてしまう。


「名前は好きなもの?ポテチおいしいよね、いちごパフェはポメさんの別垢だったよね?」


「ゆ…ぼ、く、の叔父さんから貸してもらったアカウントなので、叔父さんの名前です、ここにはお父さんを探しに来ました。」


「そうなんよ、いちごパフェの方は私の別垢をあげたんよ。」


「お父さん捜しとると?」


「うん。」


「二人は本当は何がすいとーと?」


「果物は全部だけど、一番ぶどうが好きです。」


「さぁちゃんは、ちよこと、ましまろと、いちごと、バナナが好き〜!」


「そっかそっか〜。」


二人とも可愛いな…とエールは頬が緩んだ。


「だぅー」


「赤ちゃんだ!かわいい!」


エールの足元に這って来た菫麗に2人の目が輝く。


菫麗様に作ったキッズスペースで3人と、途中で加わったユイの遊ぶ姿を眺める。


「可愛かろー、うちのコ達」


「うん、いい子そう。」


「こんなに可愛い盛りの2人を捨てていったんよ…うちのバカ妹は。」


「この子達のお母さんは離婚して2人を引き取ったんですか?」


「いんや?あの子達の母親ね、若い頃こんな田舎!って言って家出してからずーっと音信不通やったとやけどね。」


「うん」


「東京に骨埋めるつもりで行ったらしくてさ、片道切符で体一つで行ったけん、当然金もなかったけん、歌舞伎町で寮付きのキャバクラでキャバ嬢しよったらしいんよ。」


「そうなんですか。」


「ある日勤め先のキャバクラに無理やり連れてこられてたIT会社の若社長に一目惚れしてからさ、彼も満更でもなかったのか結婚したらしいっちゃけど、あいつ昔っから金遣いが荒らかったけんが彼が子供の為にしていた貯金にまで手を出してブランド物買ったけんが叱られたらしいんよ…まぁ、自業自得よな…

で、腹が立ったけんが父親が長期の出張中に黙って子供連れて、厳しい両親のいる実家じゃなくうちに家出して子供達を置いて、別の男と蒸発したんよ。」


「うわぁ…流石にそれは」


流石に引きますわとリアクションすると


「やろー?この子達の父親の連絡先は全部廃棄されとったけん、うちから連絡出来んくてさ、どこの人なのかも分からんけん手詰まりやなーって思っとったら、妹は弟と仲が良かったから何か知らんか聞いたら、この子らの父親とはこのゲーム内で弟とよく遊んどったらしいんよ、弟が自分は忙しくて暫くゲームできんけんって、父探しに協力してくれて本垢を貸してくれたんよ」


と続けた。


「あんなにいい子たちなのにね。」


ちらっと後ろを見て菫麗と人形で遊んでくれている姿を見る。


「やろぉ?妹はバカもんたい、あんなに可愛い子たちを放置してから。」


「あ、本題なんやけどさぁ、今度トキオである第一回現状報告会ににシュガーも招待されとるとやろ?」


「うん、全員で行くつもり。」


「うちらも行くとやけど、折角やけんちょっとおしゃれさせたいなって。」


後ろを見るポメキチ。


暫くポテチのアバターの本来の持ち主…碧衣さんはここ数年ゲームしてなかったらしいので、ポテチの装備は今は誰も着てない様なイケてない装備だった。


それは別垢だったいちごパフェも然りだ。


てな理由で町に来たシュガーのメンバーとストロベリーのメンバー。


衣装やさんに来ると早速いちごパフェは気に入った衣装があったとかで


「さぁちゃんコレにするの!」


と、クリームレモン色のうさぎの縫いぐるみの飾りと星型のアップリケの付いたフリフリした可愛い衣装を身に着けていた。


ポテチがジーッとその衣装を見ていた。


「着てみたいなら着てみる?この世界では性別も種族も関係なく衣装が体のサイズに合わせてくれるよ?」


「…え!?いえ…叔父のアバターなので流石にそれはできかねます。」


ともじもじと遠慮した。


「そうか、じゃあこっちはどうかな?」


ベレー帽にセーラー襟のブラウスと、ハーフサイズのサロペットが可愛い衣装を見せる。


「…ぼくのようなものがこんなかわいいの着てみてもいいんですかね?」


「良いんだよ、気にしなくてほら着てみて。」


長身痩躯で、銀の月の様だったポテチだったが、衣装が変わると、美少年エルフって感じがしてとても可愛らしかった。


店を出た後、大通りをぶらつくことにした。


「すごいですっ!」


目を輝かせるポテチ。


「ポテちゃん、ちゃんと前を見て歩かんと、人とぶつかるかも知れんけん危ないよ。」


「はぁい。」


と返事をした途端…


ぽすん!と大柄な男性の背中にポテチがぶつかった。


「わ、ごめんなさい」


「お…?」


トキオに本拠地のある、高レベルのの騎士中心の巨大なギルド黒龍騎士団のアークロン=ジークフリートだった。


「ポテ公、久しぶりだな!こっちに本拠地移してたのか?珍しく可愛いの着てるじゃねーの。」


とポテチを、羽交い締めにするアークロン。


「わ、何?何?」


「ん?お前中身は碧衣じゃねーな?」


と訝しげな顔でポテチをまじまじ見るアークロン。


「アークロンさん!実は…」


と事の顛末を話すと


「そうか…父ちゃん探してるのか」


と優しくポテチの頭を撫でた。


なぜこっちに来ていたのかと聞くと、アークロンは初心者時代はサーガにいたのだと教えてくれた。


「うちのギルド落ち着いて来たし、最初にいたここどうなってるかなって思ってな。」


「そうなんだ~」


等と雑談していると、お昼ごはん食べに行こうと、ポメキチといちごパフェが来た。


「あれ?アークくんやん!」


「ポメちゃん!久しぶり!」


声の感じで気が付く。


アークロンはポメキチを探していたのかもと。


「え?ポメちゃんの妹の子供なのか、2人共。」


「うん。」


「本当の名前おじさんに耳打ちで教えてくれるかい?」


「いいよ」


とぽしょぽしょと耳打ちして少し寂しそうな顔をしたアークロンはそうか…と答えた。


「飯屋行くのか?この世界の飯ってあまり美味くないよな…何と言うか気の抜けた味っていうの?」


と弱った顔をするアークロンに


「大丈夫だよ、この世界の人にスキル以外の料理の作り方教えたから、ちゃんと美味しいよ。」


「は…?調理スキル以外の方法?」


「そっか、トキオはテイマー少ないもんね、調理方法の違い気が付かないかもね。」


「あぁ、テイマーは従魔の為に調理スキル最初から持ってるんだったな…作り方違うって話本当だったのか…」


料理の作り方を教えた店とあって、ファミレス風だが、大盛況のようだ。


「おーいここの席だよ」


ツクヨミに呼ばれて、ついでにアークロンの席も取って皆でメニューを広げお店の人を呼ぶ。


其々ナポリタンスパゲティだとか、ソースチキンカツ丼とか、ラーメンだとかを頼む。


さぁちゃんはくまさんハンバーグがいいでーす!」


と、キッズメニューを持って手を挙げるいちごパフェ。


「ぼくは、お星さまのカレー!」


と、ユイもキッズメニューの星型の野菜が入ったカレーを食べたいと手を挙げる。


そう言えばユイはしっかりしてるし背が高いから忘れがちだがまだ小学生だったなと思った。


ポテチがメニューを見たあともじもじとキッズメニューをジーッと見ていた。


あ~見た目こそ大人だが、これは叔父のアバターだからポテチも中身は多分子供だからキッズメニューが食べたいのだろうと気が付く。


年齢制限設けてないから素直に頼んだらいいのにと思っていると…


「こいつのはキッズメニューのくまさんのオムライスと唐揚げが付いたやつ、俺はトルコライスで。」


とアークロンが頼んだ。


「アークさん、ゆ…ぼ、く、が食べたいの分かるの…?すごいです!」


目を輝かせるポテチにアークロンは…アレだけガン見してたら分かるわ…と思いつつ


「まーな…てかポテ公の顔でこう言う可愛い事されるとむず痒くなっちまうよ。」


と苦笑いしながら、ポテチの頭を撫でてやった。


にこーとするポテチ。


アークロンは、ポテチに優しく微笑んだ。


「あ、ゆーちゃんだけずるいの!さーちゃんもなでてなでて!」


「はいはい。」


といちごパフェを撫でてやるアークロン。


後日トキオでは、あの仏頂面のアークロンが子供と戯れていたと噂が立ち、うちの子供とも遊んでやってくれとNPCの子供達と遊んでやる羽目になるのであった…


トキオにあるバーで、ウイスキーを呑んでいると隣の席に座った人物をチラ見すると、トキオでも黒龍騎士団と肩を並べるくらいには強豪の、聖槍英雄団のギルマス、クラウス=ゼインだった。


「珍しいじゃないですか、貴方が子供と戯れるなんて。」


と意地悪そうな微笑み方をされた。


「…あの子達は特別なんだよ。」


「…あぁ、あの子達が…そう、なんですね?」


「あぁ、あの子達がまさかポメちゃんとポテ公と親戚だったとは思わなかったがな。」


「世間って意外と狭いってことなんでしょうね。」


クラウスは、この世界の煙草の煙をフウ…と吐く。


「ポメちゃん元気してっかなーってサーガの様子見に行ったんだよ。」


「そしたら、あの子達が居たんですね。」


「まぁ、父親を探してるそうだぜ。」


「…あぁ。」


遠い目をするクラウス。


「…今はな…」


「ですね。」


2人の、紫煙がバーの天井へと消えて行った。

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妖精の国の歩き方 たぬきち @tanukichi1984

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