混沌は続く。

「マコトちゃん、かわいいなぁ~」

 紫炎が撫でてくる。

 治療が完了して、いつも通りのうっとおしい性格に戻ったみたいだ。


 女王が居なくなれば国が滅ぶ。

 そうなってしまえば混乱が広がり、多くの罪のない人が殺される可能性がある。

 だから、僕たちは、女王を逃がし、亡命して、遠い国のノヴァの別荘で居候となっている。


「そう言えば、マコトちゃんって何で転生したの? 」

 紫炎が頭を傾げた。

「それって、死因を話せって事か? 」

「うん、人を信じて死んだから、人を信じない。 そんな話されたら気になるに決まってるじゃん」

「…………」

「ダメ? 」

「ダメだ、デリカシーが無さすぎる」

 僕は紫炎の鼻をつまんだ。

「少年よ、死因ぐらいいくらでも言えばいいじゃないか!!」

 ノヴァがコーヒーを片手に階段を降りてきた。

「そうだよ、言ったれ言ったれ!!」

 紫炎がノヴァに歓声を上げる。

「なぁ、ノヴァは死因が言えるのか? 」

「なんてことない、プルトニウムの半球体をいじる時、ドライバーがズレたんだ」

「お前の死因、デーモン・コアかよ!!」

「人の死因にツッコムのもデリカシーがないとおもうが」

 僕のツッコミにノヴァが悪戯そうに笑う。


「あのさ、人を信じて死んだから、人を信じないって言ってたけど。 もうそろそろ私の事は信用し始めたんじゃないの? 」

 紫炎が僕に聞く。

「いや、全然」

 僕は一刀両断した。


 そして、窓の外を見る。

 あの『心を読む魔道具』を破壊してよかった。

 じゃないと、今ついた嘘はバレてしまう。


 魔王が倒される前に言った『混沌』はまだ続いている。

 けど、こんな平和で面白おかしい生活はまだ続く。

 顔の良い女子二人と一緒に少し休憩してても、罰は当たらないだろう。

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