第12話 誤断

 いろいろ述べたが撤退を決めた一番の理由は視界の悪い強風の中、登ることに集中しすぎて振り返ったときに登ってきた場所がわからなくなってしまっていた。


 ここだろうと思うところを降り始めたが思ったより堅くて悪いように感じ、すぐに登り返す。

 後で考えるとおそらくそこで間違えなかったと思われる。

 そのときは視界が悪く先がよく見えなかったため、間違っていて登り返すのを嫌ってしまったことと、間違った危険なルートに入ってしまうことが最も危険だと思った。


 他にルートがないか探すと夏道らしいルートが見えた。

 ミユに夏道は使えないと聞いてはいたが、確実に降りる方向へ行けると思い、そのルートをたどるがすぐに道がわからなくなってしまう。


 再び行けそうなルートを探すとまあまあの雪壁をトラバース(横断)するとまた先へ行くことができるとわかり、慎重に壁をトラバースしていく。


 振り返り、よく行ったなと一息ついて少し歩くと再び行き詰まる。

 再びルートを探す。

 70度位の雪壁、そこを行けば再び道がつながるとわかる・・・ 行くことにした。


 雪壁に付いたふかふかのパウダースノーにできるだけアイゼン、ピック、左手を利かせて慎重にトラバース(横断)していく。

 下はガスって見えないがここで落ちたら壁を転がり落ちると言うより、岩とかにぶつかりながら奈落まで落下して終了って感じだな。

 まったく。

 人の言うことを聞かないからこういうことになるんだ。

 

 無事通過して歩ける道へと着く。

 振り返り

「あり得ないな」

 と、単独で行くとこじゃない。


 次があったらどうすると思いながら少し歩くと完全な夏道へと出ることができて、稜線の反対側へ戻ると、登ったときのルートより10分ほどの遠回りになってしまっていたことに気づいた。

 しかし無事難所を突破できてようやく一息つけた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る