第11話 決断

 稜線に上がり裏側に入ると風はさらに強くなった。

 巻き上がる氷の粒がマツゲにもついて視界を悪くする。


 そんな中、登れるルートを見つけた。

 すごく急ではないが堅く、決して良くはない。

 ピックとアイゼンをしっかり利かせて慎重に登るとほぼ視線の高さに山頂が見えた。


 そこから少し歩くと尾根が細くなってきた。

 残り100mほどだろうか。

 ナイフリッジとまではいかないが強風の中ここを進むのは神経を使う。

 往復30分くらいかかってしまうかもしれない。

 体も疲れていた。

 天候は悪化する一方で八本歯のコルを抜けなければいけない。

 今日降りなくてはいけない。

 ミユも待っている・・・。

 ここまでにした。

 北岳を登るチャンスなんていくらでもある。

 山は逃げない。

 また来れば良い。


 以前の自分なら行ったと思うが、怪しげな天気予報の中で運良くモンブランを登らせてもらったからそう思うことができた。

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