第4話 蛍袋にかえってゆくの 🥀




 ああ、あなたたちの義理の叔父さんのことね、一連の不可解な出来事はヨウコさんのおかあさまが、娘婿さんをご自分の養子に迎え入れたところから始まったのよね。


 農家の主婦だったおかあさまからすれば☆◇という水商売が信用できないうえに、娘の離婚の巻き添えで実家の財産まで奪われると気が気ではなかったんでしょうね。


 それを承知していたヨウコさんは資金の援助を頼んだことは一度もなく、むしろ、ヨウコさんから毎月仕送りをしていたんだけど、実家の信用は得られぬままで……。




      🧵



 

 で、おかあさまとお姉さまが持ち出したのが、お婿さんの養子縁組だったのよね。

 本来二人だった子どもを三人にすれば、それだけヨウコさんの相続分が減る……。


 その大事な話も電話で一方的に告げられたきり強引に事が進められたので、埒外のヨウコさんとしては、無理やり太い棒を呑みこまされた気持ちになったでしょうね。


 この件はあなたたちも承知しているはずだけど、いまは弁解もできないヨウコさんの名誉のために、どうしても正しい経緯をお話しておきたかったのよね。(´ω`*)

 

 



      🐑🦥🦛🐖🥗🧀🌮🍰





 ぐすん……。(´;ω;`)ウゥゥ

 いつでも泣けるって便利よね。


 なんでもそうだけど、いいこととわるいことは、ことごとく背中合わせでしょう。

 コロナ感染予防のためのマスクだって、意外なところで役に立っているのよね~。

 

 あら、ごめんなさい。わたしとヨウコさんのことをお話したら、なんだか肩の荷が降りたような気がして、柄にもなく、ちょっとだけおセンチな気分になったみたい。


 いえ、悲しいわけではないのよ。そういえば少し前、この世の片隅でそんなことがあった、もはやだれも知らないことだけどね……そんな飄々とした気持ちかしらね。




      🚛



 

 わたし、間もなくお引越しするのよ、薄紅色の蛍袋に。その花から生まれて来たんですもの、そこへ還ってゆくのは当たり前でしょう? 自分で分かるのよね、寿命。


「をさなくて蛍袋のなかに栖む 野澤節子」幼くして逝った妹を想って詠まれたこの俳句の素直さがね、並みいる巨匠連の名句を押しのけ、わたし圧倒的に大好きなの。


 あちらへ行ったら、いの一番にヨウコさんに今日のことを話してあげるつもりよ。

「わたしたちの青春を語って来たわよ」と言ったら、きっと喜んでくれると思うわ。


 まあねえ、生前のヨウコさんもわたしもいろいろ経験したけど、あなたたちご家族をはじめ、楽しい出会いがたくさんあったし、やっぱり人生はパラダイスだったわ。




      🌠




 ふぁあ。あら、ごめんなさい、なんだか眠くなっちゃって……。だめね、この歳になると、だんだん枯れに近づいてゆくのね。ほら、犬や猫たちだってそうじゃない? 


 歳を取るにしたがって、昼間もほとんど寝ているようになるでしょう。あの気持ちがよ~く分かるようになったわ。気持ちというより、身体の呟きと言うべきかしら。


 では、ごめんなさいね。わたし、ちょっと失礼して目を閉じさせていただくわね。

 さようなら、ヨウコさんの大切な宝ものさんたち、お幸せにね。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ




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それでも人生パラダイス 🌺🐬 上月くるを @kurutan

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