28. ギルドマスターとして

28. ギルドマスターとして




 あれからメルさんからポーションとマナポーションを100個ずつ用意してもらい、ギルドの受付の仕事をしながら暇な時に、リリスさんに調合をしてもらうことにした。 


 ちなみにあのデフォルメされたリリスさんのラベルシールはジェシカさんやエドガーさん、アンナ、そしてオレが時間をみて貼っている。と言っても暇なのはオレくらいなんだけどね……。


「あのエミルくん。このシール曲がってます」


「え?ごめんなさい」


「まったく。性格が曲がってるとこういう簡単な作業に出るんですから気をつけてくださいよ。これは私です。もっと優しく扱ってください。本当にダメですねエミルくんは!」


 リリスさんは少し膨れながら華麗にオレに毒を吐く。性格曲がってるってオレよりリリスさんの方じゃ……とか言うと星になりそうなので黙っておく。


 そんなこんなで準備は進んでいき、ついにメルさんのお店で初めてリリスさんのポーションこと『リリスポーション』を販売するを迎えることになった。


 あれからメルさんと更に話し合い、集客をあげる方法として、ギルド『フェアリーテイル』の依頼を受けた冒険者にはメルさんのお店で銅貨1枚分割引できるチケットを配ることに決まった。


 そしてオレとアンナはこの前のように、メルさんのお店を手伝うことにしている。提案したのはオレだしな。なんとか成功させたいものだ。


「メルさん。いよいよですね」


「はい。これで上手くいけばいいのですけど……」


「大丈夫ですよ。絶対いけます」


「安心しなさいメル!この天才魔法少女のアタシが販売するんだからね!」


「はい。ありがとうございます。お二人とも頑張りましょう!」


 ポーションの棚にはきちんと『リリスポーション』が並んでおり、その横には解毒剤も置いてある。更に可愛い丸文字で『新発売』と書いてある。これなら買ってくれそうだな。


 こうしてメルさんのアイテム屋は開店する。すると2人組の冒険者が早速ポーションを選び始める。


「いらっしゃいませ。ポーションですか?マナポーションですか?」


「あー。とりあえずどっちもなんですけど、これ新発売なんですか?」


「はい。そうですよ。それはポーションの倍の効果があるんです。おすすめですよ?」


「へぇ〜そうなんだ。そしたらオレたちは魔法がメインだから、普通のポーションとこのリリスマナポーションを2つ貰おうかな」


「!?……はい!ありがとうございます!」


 2人はそう言って購入してくれた。よし!初客ゲットだ!そのあともお客様は来てくれる。


「効果が倍なのか……でも銅貨8枚ならこのハイポーションの方が得だよな。こっちをくれ」


 という大柄な戦士の男性。


「じゃあこのリリスポーションと……毒になると危ないよな。この解毒剤もください」


 という細身の狩人の青年。


「私は回復メインだからね。このリリスマナポーションを下さい」


 というクレリックの女性。


「じゃあパーティー4人分のリリスポーションをください」


 という仲の良い4人組の冒険者パーティーもいた。


 みんな口々に『リリスポーション』の効果を認めてくれている。普通のポーションでいいと言う人も多い。それでも間違いなく効果はでている。もちろんメルさんの接客やアンナも頑張っておすすめしてくれていることも大きい。これなら期待できそうだ。


 そして昼過ぎには、ギルド『フェアリーテイル』の依頼を受けた冒険者たちも次々と訪れて、色々なアイテムを買ってくれた。


 更に夕方になる頃には、リリスポーションもリリスマナポーションも在庫は半分くらいになっていた。


「予想以上でしたね。オレもここまで売れるとは思いませんでした」


「はい。これも全てエミルさんのおかげです。ありがとうございます。これでまだこのアイテム屋を続けられます!」


「いえ。オレは何もしてませんよ。ただ理論を説明しただけです」


 メルさんはとても嬉しそうに話している。やっぱり自分の店の商品が売れていく姿を見ると嬉しいよな。こうしてメルさんのアイテム屋は大盛況で閉店時間を迎えた。


 オレとアンナはギルド『フェアリーテイル』に戻ることにする。そしてその手には大量のポーションとマナポーション。


「ちょっとエミル!もっと持ちなさいよ!アタシは女の子なんだから!」


「いや……これ以上は無理だぞ……」


「本当に使えないわね!もう疲れた!エドガー呼んできてよ!」


 そう。メルさんからまた大量に注文が入ったのだ。しかも今日よりもさらに多くの数をだ。今日の売り上げをみて、今のうちにたくさん作っておきたいそうだ。確かに毎日これだけの量を販売したらすぐに無くなってしまうだろうな。


 それにしてもメルさんは息を吹き替えしたように目がキラキラと輝いていた。本当に力になれて良かった。


「ねぇエミル?」


「なんだ?」


「こうやってメルのアイテム屋も儲かって、ギルド『フェアリーテイル』もお得になるなんて方法考えるなんて見直したわ!さすがアタシたちのギルドマスターよね!」


 そう明るい笑顔でオレにアンナは言ってくれる。その言葉は今のオレが一番欲しかった言葉かもしれない。……そうか。オレも『フェアリーテイル』のために仕事できているんだな。少しだけ認められた気がする。


「……そうだな。アンナ。アイス食べるか?」


「いいの!?もちろん食べるわ!……って。どうしたの怪しいわね?何か隠してるんじゃないでしょうね!?」


「いや……なんでもない。行こうぜ!」


「あっ!待ちなさいよ!だからこれ重いって言ってるじゃない!」


 オレはギルド『フェアリーテイル』のギルドマスターとして、これからもギルドのため、そして仲間の為に頑張ろうと思ったのだった。

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