26. チョコレート半分っこ

26. チョコレート半分っこ




 そして次の日。オレはメルさんのアイテム屋で1日働くことにしている。


「ねぇ!なんでアタシもアイテム屋で働かなきゃいけないのよ!アタシは天才魔法少女なのよ!?」


「文句を言わないで協力してくれ。アンナしかいないんだ」


「ヤダヤダヤダ!魔法で魔物とか倒せないんじゃ面白くない!やりたくない!」


「帰りにアイス買ってやるからさ」


「……チョコレートも買いなさいよね!ったく。エミルはアタシがいないと何も出来ないんだから。仕方ないわね!ほら行くわよ!」


 食べ物に釣られるなんて……本当に単純な奴だな。まぁそんなわけでオレはアイテム屋で仕事をすることになった。


「おはようございます。今日はよろしくお願いしますエミルさん。あとアンナさん。」


 そして営業が始まる。まず最初に店先に出ているのはオレとメルさん。オレは店先で店番をする。その間にメルさんは商品を並べる準備をしたり、在庫の確認をしたりする。そして、店の奥からはアンナが店先まで商品を運んでくる。商品の陳列はオレがやったり、アンナがやったりする。


 それからしばらくして、店に冒険者たちが集まって来る。冒険者は回復薬のポーションと状態回復の解毒剤を求めてやって来る。店主のメルさんの接客対応もとても親切だし、メルさん自身に問題はない。


「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」


 しばらく営業をしていくと、冒険者も徐々に減っていくが、そんなに少ない印象は受けなかった。


「エミルさん、アンナさんありがとうございました。どうでしたか?」


「いいお店だと思います。その、今日の売上台帳を拝見させてもらってもいいですか?」


「はい。もちろんです」


 オレはメルさんのアイテム屋の帳簿を見る。売上自体は減少している。それはもちろん冒険者の数が減っているからだが……。これは少し分析が必要だな。オレはそのまま帳簿をお借りしてギルドに戻ることにする。


 すると隣を歩きながらアイスを食べているアンナが難しい顔をしている。


「どうかしたのか?お腹痛いのか?」


「違うわよ!エミルはなんでそうデリカシーがないわけ?もしかしてそうならどうするのよ!本当に男としてダメよねあんた。はぁ。これだからエミルはモテないのよ」


 なんか子どもに説教されたんだが……。いや確かに言われたらそうなんだけどこれは違くないか?


「チョコレートどうしようか考えてただけよ。食べたら夕飯食べれないし。でも食べたいし。ねぇエミル半分っこして!」


「え?」


「だーかーら!半分食べてって言ってるのよ!」


 オレはそのアンナの言葉を聞いて、さっきの帳簿を開きもう一度中身を確認する。……これは……なるほど。これならもしかしたらいけるかもしれない!


「ちょっと聞いてるの!?アタシを無視しないでよ!」


「よくやったぞアンナ!お前のおかげでメルさんのアイテム屋は救えるかもしれない!」


「え?とっ当然でしょ?アタシは天才魔法少女なんだから!」


「ああ。さすが天才魔法少女だ!」


 アンナはオレの言葉にすごく戸惑っていたが可能性が見えてきた。オレはそのままアンナのチョコレートを半分にし、そのまま口に頬張って急いでギルドに戻る。そして部屋にこもり、色々分析し計算した結果ある1つの方法が浮かんでくる。


「これなら……なんとかなりそうだぞ」


 すると扉がノックされ、リリスさんが中に入ってくる。お風呂上がりなのか髪が濡れたままでとても艶っぽい雰囲気を出している。やっぱり美人だよな。


「エミルくん。コーヒー淹れたんです。一緒に飲みませんか?」


「あっはい。ありがとうございます」


 オレは机の上を整理し、部屋を出る。そしてリビングに向かいソファーに腰掛ける。


「はい。ブラックで大丈夫ですか?」


「はい。砂糖とかミルクは入れなくても平気なので」


「ふふっ。大人ですね。そんなところだけ大人っぽくしても意味ありませんよ?そもそもエミルくんは男としての格好良さが皆無ですからね!」


 そんなつもりはないんだけどな。軽い毒を吐かれたよ……。


「それでエミルくん。どうですか?なんとかなりそうですか?」


「あ、はい。この方法なら売上が伸びそうで……」


 オレはアイテム屋の売上を伸ばすための方法をリリスさんに話すことにした。最初は不思議そうな表情をしていたのだが、話しているうちにどんどん興味深そうに聞いていた。そして、話し終わる頃には笑顔になっていた。


「ふふ。エミルくん。楽しそうですね?」


「え?あっその……はい楽しいです。この方法はあるが必要なんです。だからリリスさんに協力してほしいんです。お願いします」


「エミルくんの頼みなら断りませんよ。私も最近は暇してましたからね。わかりました。私も協力します」


 そしてオレは翌日から作戦を実行するために行動を開始するのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る