第11話②

 私はりゅー君とのデートということで普段よりも気合いを入れて準備することにしました。少し大胆すぎるかな?ということにも挑戦しました。それもこれもりゅー君に可愛いって思ってもらいたいからです。本当はミニスカートにも挑戦したかったけど、少し肌寒かったので長いスカートにしました。私はそのまま一時間も早く待ち合わせ場所に着きました。


 待ち合わせ場所に着くまではワクワクしていました。普段と違う格好の私を彼は可愛いと思ってくれるでしょうか?痴女だと思われたら悲しすぎます。それでも、少しでもりゅー君が振り向いてくれる可能性があるなら、私はなんだってやります。それに、もともと嫌われてるんだから、行動しないと損です。


 「よぉ、姉ちゃん。俺たちと一緒に遊ばないか?きっと楽しいぞ」


 それでも、待ち合わせの駅前まで来るとすぐに二人の男の人から声をかけられてしまいました。


 「遠慮します」


 私はそう言いましたが、なかなかどいてくれませんでした。私はりゅー君だけに見てほしいのに!そう思っていると、大好きなりゅー君の声が聞こえました。


 「…やぁ、お待たせ」

 「あぁ、なんだテメェ」

 「俺?俺はその子の彼氏だよ。…人の女に手ぇ出すんじゃねぇよ」


 りゅー君が来てくれただけでもビックリなのに、彼氏って言ってくれました!それだけでニヤニヤしてしまう表情を抑えることができません。その後もりゅー君が話しかけてくれたけど、全く頭に入ってきません。


 大人っぽい黒のズボンに爽やかな青いスウェットと気取っていない、それゆえにりゅー君自身のカッコ良さが際立っていました。そんなりゅー君に私が見惚れていると、彼はきびすを返して立ち去ろうとしていました。なので私は慌てて彼を呼び止めました。


 「まっ、待ってりゅー君!」

 「…はーちゃん?」

 「う、うん。ちょっとだけ待ってね」


 …どうやら、りゅー君は私だと気付いてなかったみたいです。それなのに助けに入ってくれる彼はとても素敵です。好きな人にナンパから守ってもらう、なんて憧れのシュチュエーションを体験してドキドキする心を落ち着けるために何度も深呼吸をしました。


 「よしっ!もう大丈夫。……ありがと、りゅー君。か、カッコよかった、よ」


 私はどうしても感謝を伝えたかったので、なんとかそれだけ搾り出しました。りゅー君は顔を赤くして嬉しそうにしてくれました。…まぁ、私の方が赤くなっていると思いますが。


 「〜ッ!そ、そっか。はーちゃんも凄く可愛いよ」

 「あ、ありがと」

 「う、うん……ちょっと早いけど、もう行く?」

 「そうだね。じゃあ、行こっか」


 彼に促された私は自然と手を差し出してしまいました。それを戸惑ったように見た彼の様子で私は失敗したことを悟りました。嫌われている私はそんなことしちゃいけなかったのに…。


 「あ、ご、ごめんね。イヤ、だったよね」

 「イヤじゃない!」

 「あっ!…えへへっ」


 私が慌てて手を戻そうとしたら、りゅー君が握ってくれました。嬉しくて私もすぐに握り返しました。彼の温もりが手を通して全身を伝わってきました。


 「…なんか、恥ずかしいね」

 「そ、そうだね」

 「でも、嬉しいな」

 「…うん。なんかはーちゃんと手を繋いでると安心する」

 「そうそう!幼馴染みだからかな?」


 無言の空気と繋がった手の感覚に気恥ずかしくなった私は会話を探しました。それでも、真っ白になった私の頭には全く話題が浮かんできませんでした。なので、自分の気持ちが外に漏れ出してしまいました。それでも、彼は優しく話題に乗っかってくれました。しばらく話しているとだんだん緊張も抜けてきました。


 一時間早く来て良かったな。私は早めにスタートしたデートに思いをはせました。

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