第1話②

 私、白鳥しらとり 白亜はくあは同じクラスに好きな人がいます。幼馴染みの彼ともっと近づきたくてメイクや勉強にも力を入れて取り組みました。そのおかげか最近では異性から告白されることも多くなりました。それでも私は受けるつもりがありません。私にとって可愛いと思ってもらいたいのは幼馴染みの彼だけです。


 私がいつから彼が好きだったのかはよく覚えてません。小学校の頃から好きだった記憶はありますが、幼稚園の頃からかもしれません。幼い頃は無邪気に彼と結婚したいと口に出せていました。多分彼は覚えてませんが、私の気持ちは全く変わっていません。


 そんな私ですが、もうそろそろ我慢の限界が来ようとしています。彼が全く話しかけてくれなくなってしまいました。……私のせいだってことは分かっているんです。彼が話しかけてくれると嬉しくて、つい顔がだらしなくなってしまうんです。そんな顔を見られたくないからそっぽを向いてしまって、彼は話してくれなくなりました。……当然ですよね。こんな面倒くさい人は嫌われても。


 でも、もしも願いが叶うなら、もう一度彼と話したい。そう思った私は彼とのメッセージアプリを開きました。最後のやり取りは私の誕生日にもらったお祝いのメッセージ。私はそれに何度も返信しようとしました。それでも、どんな言葉がいいのか迷っているうちに時間だけが過ぎてしまいました。


 一日が過ぎて、一週間が過ぎて、一カ月が過ぎて…。私はたった5文字すら伝えられなくなってしまったのです。"ありがとう"それだけでよかったのに…。


 彼と過ごす時間はとても心地良くて幸せに溢れていました。それを取り戻したくて私は彼にメッセージを送りました。それは勇気の出ない私を崖っぷちに追い詰めるためです。もし破ったら二度と彼と話せなくなる、そんな言葉です。


 【明日の放課後、相談に乗ってもらえないかしら。5時に体育館倉庫の方に来て】


 一方的に日時と場所を指定しただけのメッセージ。返信なんかなくても体育館倉庫でずっと待ち続けようと思っていたけど、彼は返信してくれました。【分かった】そんな一言だけだったけど私は天にも昇る気持ちになりました。…だから、私がやらかしたことの重大さに気づきました。私は彼のメッセージを返信しなかったんです。


 「はぁ〜。明日は頑張ろ」


 私は開いていた昔のアルバムを閉じて電気を消しました。真っ暗な部屋のベッドに横たわるとゆっくりと睡魔が襲ってきました。親に無理を言って用意してもらった一人暮らしの家にいつか彼を呼びたいな。


 普段は感じない心細さを感じたのは昔の暖かい日常を思い出したからかもしれません。アルバムの中の私はどれも幸せそうに笑っていました。それはきっと隣に彼がいたからです。…だから今の私は笑えないよ。


 「明日は絶対に告白するんだ。…彼は知らないだろうけど、体育館倉庫は絶好の告白スポットなんだよ。メロメロにしてあげる♪」


 それだけ言葉にした私は急に恥ずかしくなって手で顔を覆ってしまいました。それからようやく寝付けたのはベッドに入った二時間後でした。


 それでもその寝顔は幸せそうだった。

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