第3話 修行パート
3.修行パート
「はぁ………はぁ………はぁ……おえっ」
次の日から始まったのは体力を作るための走り込みだ。何時間もず~っとただひたすらに走らされている。
果たしてこんな事に意味があるのか疑問だが、どうやらこの異世界では訓練をするとそれに関連したスキルを習得できるらしい。スキルしかり、魔法しかり。
この走り込みでは【身体強化】のスキルが手に入るとの話しだ。異世界では一般的なスキルで、戦闘職についている物は全員、一般的な村人でも持っている割合は多いらしい。
スキルや魔法があるファンタジーなこの世界では漫画やアニメの世界のようにステータスが存在する。さらにはそれを表示する魔道具まである。
今日の朝いちばんにまずは自身のステータスを知っておくほうがいいと、昨日のおじいちゃん。フィリップさんが魔道具を持って食堂にやってきた。
そこで測った事で判明したステータスがこれだ。
名前:八雲 草一 Lv:1
スキル:
従魔契約:マジックキャット【ミザリー】
そう、たったこれだけだ。HPもなければMPも、力や防御みたいなステータスも無い。これ以上に詳しくステータスを表示する方法は無いらしい。
こんなステータスでどうやって自分の強さを知るのかって話しだが、レベルが上がって実戦を積んでいくとおのずと相手との力量差が分かるようになり、それを基準に自分の強さを知る事ができるらしい。
後は【慧眼】と言うスキルを覚える事で相手の強さがわかるが、これを覚えるには実戦をこなすしかなく。結局は何かしら戦う必要がある。
そして。
従魔契約:マジックキャット【ミザリー】
の部分だが、どうやらミザリーはマジックキャットと言う魔獣らしい。その名の通り戦闘時に魔法を使う魔獣猫だ。
わりと有名な魔獣らしくテイマーの中で猫派はマジックキャット、犬派はハウンドと言う魔獣を好んでテイムするという話だ、フィリップさんに聞いた。
「そこ!立ち止まるな!走れ!」
「くそっちょっとぐらい休憩させろよ……!」
教官である兵士から叱咤の声が飛んでくるが脇腹が痛くてそれどころじゃない。他にも何人も同じような生徒がいるが。その中でも数人。恐らく身体強化系のスキルを願ったのか、余裕の表情で走っている生徒がいる。
余裕で走っているクラスメイトの事がちょっとうらやましくなるが。結局は頑張れば後でスキルが手に入るんだって考えて我慢するしかない。
◇ ◇ ◇ ◇
「魔法とは自身の内にある魔力を使い奇跡を起こす技である。この言葉は初めての魔法と言う教科書の一番最初に書かれている一文よ。魔法の種類は基本の火水風土の4つ、そこに特殊属性である無闇光。さらには複合属性の魔法と、その幅はかなり広いわ」
日が変わって次の日。今日は魔法の受業だ。受業をしてくれるのは宮廷魔法士のアリエルさん。ここは地球にあった教室に似た感じの作りになっていて馴染みやすい。
昨日の訓練ではずっと走らされて、終わった後は死んだように眠った。
幸いと言っていいのかわからないが、どうやらこの世界ではお風呂などの設備、食事。色んな部分で文明が発展しているようで地球にいた頃と遜色ない環境になっている。
なぜここまで発展していて中世みたいな街並みなのかは理解できないが。多分どこかで発展の仕方が歪んだんだろうなぁ。
ん?歪んだというか、この世界ではこれが正常の発展だから別におかしくないのかな……?
この世界の発展の仕方がおかしく感じるのは地球での事を知っているからかも?
「まず、初めに魔法と言うのは覚えるのに才能が必要よ。素質の無い人はいくら頑張っても魔法を覚える事はできないわ」
あらぁ……魔法って才能が全てなのか。それは少し残念だな。っていうか異世界人である僕達って魔法の才能ってあるのかな?
「先生!俺らって異世界人だけど、魔法の才能ってあるのか!?」
どうやら他の人も気になっていたらしい、僕が聞く前に聞いてくれた。
「もちろん、異世界人であるあなた達も私達と同様に魔法適正がある可能性があるわ。それを調べるためにまずは【魔力感知】スキルと【魔力操作】スキルを覚えてもらう事になるわ。もちろんこのスキルも素質がないと覚えられないからね。一度に2つもスキルを習得するのは難しく感じるかもしれないけど安心して?【魔力感知】スキルを習得しようとすると、おのずと【魔力操作】スキルも覚える事になるわ」
そう話す先生をしていてくれた宮廷魔法士のアリエルさんは教壇から前にでてくる。
「今からあなた達に魔力をぶつけるわ、危険はないから安心して?」
そういうや否やアリエルさんは両手をこちらに向けた、その瞬間。僕の体を生ぬるい風みたいな感触の物が吹き抜けていった。
「どうやら何人か感じたようね?今のを感じ取れるなら少なくとも【魔力感知】スキルの素質はあるわ。何も感じれなかった子は残念だけど諦めなさい」
その言葉に、喜びの声を上げる者と、悲しみの声を上げる者に分かれた。どうやらクラスの3割ほどの人が【魔力感知】の素質があるみたいだ。
っていうかもうちょっと心構えさせて欲しい、安全何だろうけどちょっと怖かった。
その後始まったのは魔法の基礎となる座学だった。スキルの習得は次の受業からするみたいで、取り合えず今は魔法が使えなくても魔法の事を知っておくのは大事だとかで全員参加だ。
魔法の属性の相性。これは地球にいた頃にあったゲームなどと同じ感じのようだ。ただしここで注意が必要なのは、魔法に込める魔力が多ければ属性の相性を気にせずに吹き飛ばしてダメージを与えることが出来る事だ。
水は火に強い。だけど、火に込める魔力が多ければ水を蒸発させ吹き飛ばすことが出来る。みたいな感じだ。
後は魔力が枯渇した場合どうなるか。答えは立てなくなる、との事だ。
魔力が枯渇すると体に力が入らなくなり動く事が出来なくなる。なので普段から自分がどれだけ魔法を使えるかきっちり調べておく必要があるらしい。もし、魔物との戦闘中に突然魔力が切れて動けなくなったら………そうなるかは明白だ。
因みに物理系のスキル。例えば【ソードスラッシュ】などの武技系スキルと呼ばれる物を使う場合にも同様に魔法で言う魔力、スタミナともいえばいいのか?そういった物を消費していくらしい。
武技スキルとは何か。魔法で言う所の【火魔法】スキルの【ファイアボール】みたいな物だ。
そしてみんな気になる。魔法と言えば、詠唱だ。この世界では詠唱とか無詠唱とかそういった物があるのか?って疑問だが。
アリエルさんによるとどっちもあるらしい。ただそこが少し複雑で。詠唱と言ってもこれと言った決まりがなく、術者本人の自分に合った詠唱を自分で考える必要があるらしい。
そんな詠唱文とか考えるの恥ずかしいよ!ってそこのあなた。安心してくれ。詠唱が無くてもどういったスキルかきちんとわかっていれば詠唱は必要無い。
例えば【ファイアボール】
このスキルに一番有名な詠唱があってそれが『魔を手のひらに、火の玉となり我が敵を打ち砕け』だ。
この詠唱ではその文の通り魔力を手のひらに集め、火を玉の形にして飛ばすというのを言葉にすることによりイメージしやすくしたものだ。
そんな詠唱をしたくなければ頭で手のひらに火の玉を作るのをイメージして飛ばせば無詠唱の完成だ。どちらがより強い魔法が使えるかとか使いやすいかとかは術者の慣れによるので。詠唱したくなければ慣れるしかない。ようはイメージ次第なのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「ん…………ンぬ~……ん?う~む」
今は【魔力感知】スキルを習得するために魔力をどうにか感じようとしているのだが、中々うまい事いかない。
アリエルさんが教えてくれた魔力の感じは何となく感じるんだがそれを動かすのがうまい事行かないのだ。
周りには同じ様に胡坐をかいてうんうん唸っているクラスメイトが何人かいる。
「八雲くん、どう?」
「中々うまい事いかないよ、三井さんはどう?」
「私の方は少しだけ動くようになったかな?それでもまだまだだけどね」
僕に話しかけてきたのは三井さん、彼女は一度きりの願いで全属性の魔法適正を願ったらしい。本人がそう言っていた。
全属性の魔法適正を持っていても【魔力感知】スキルや【魔力操作】スキルは覚える必要があるらしい。と言うか覚えないとまともに魔法が使えないとか。
これを聞いたとき恐ろしく思った。一度きりの願いで全属性魔法の適正があっても【魔力感知】などのスキルを覚えれなかったら………想像もしたくないな。
その点では三井さんはちゃんと素質があるようで安心した。もしかしたら全属性魔法の適正を願ったときにそれに関連するスキルの素質も一緒に貰えたのかもしれないけどね。
神のみぞ知るって所かな?
もし、神様がいればだけど。
この世界に来てから取り巻く環境が変わって、クラスメイトとの関係性も変わっていった。
今までは地球でのグループ、仲良しで集まっていたが。今では自分達のスキルに合った戦闘訓練でよく一緒になる人達で仲良くグループになっていっている。
僕もその例にもれず【魔力感知】スキルを覚えようとするグループ内ではそこそこ話すようになった。友達か?と言われれば、クラスメイトだ。と答えるぐらいの関係だが。地球にいた頃よりかは話すようになった気がする。
「何かコツでもあるの?良ければ教えて欲しいな」
「ふふっ、いいわよ。八雲くんは魔力をどうやって動かすのを意識している?」
「どうやって……?こう、魔力ようごけー?って感じ?」
「まぁそうよね。でもね?魔力を体の中に新しい血管を通すイメージで動かしてみて?私はこの方法がやりやすかったわ」
「なるほど?やってみるね」
三井さんに教えてもらったように体に新しく魔力が通る血管を作るイメージで動かしてみる。
「お?すごい!なんかさっきよりも動かしやすいかも!」
「よかった。うまくいったみたいね」
「うん、ありがとう三井さん!」
「どういたしまして!」
凄いな、イメージ一つでここまで変わる物なのか………三井さんにはこういったセンスがあったのかな?
よし、僕ももっと頑張らないとな!頭を柔らかく柔軟に。色々と試してみよう。
こうして訓練を続ける日々はあっという間に過ぎていき。気が付けば半年が経っていた。
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