スズメ、掃除機、山道




季節は夏、友人の家にて




「なぁ、蜂蜜食いたくね?」


「こんな暑い日にか? 俺はアイスの方が食いてえよ」


「まあ聞けって、昨日マムシ探しに裏山行ったんだよ、そしたら山道にバカでかい蜂の巣があったんだよ、枝に吊るされてた」


「へぇ〜、それ取りに行こうっての?」


「そうそう、一緒に行こうぜ」


「暇だからそれは別にいいんだが、装備はどうすんの? 流石に刺されんのはやばいだろ」


「あ〜、長袖着るとか」


「正気か? 今日なんか多治見が快適に感じるレベルの猛暑日だぞ」


「つか長袖なんかで毒針防げる訳ないだろ!」


「こっちのセリフだよ!? 何だ急にお前!!」


「防護服はとりあえずゴミ袋被っとけばいいだろ」


「言い訳ないだろ!? 自殺志願者なのか!?」


「まあ落ち着けって、とりあえず武器はこれ持ってきたから」


「一升瓶とライターか...え、何に使うのこれ」


「酒口に含んでライターに毒霧ぶっかけて火炎放射器にしようかなって思って」


「危険!! 山ん中だぞ!? 火事になったらどうすんだよ!」


「そんな蜂の巣をつついたように怒るなよ」


「お前の顔面で突っついてきてやろうか!?」


「あと掃除機の吸い取る部分を外したやつも結構ハチ駆除の武器になるらしいぞ」


「お前ホントに山ん中行こうとしてる? 電気ないだろ」


「そりゃあ、なんかこうピリッとさせれば」


「できる訳ないだろ!!」


「おおピキッてなっちゃった」


「黙れ!!」


「とりあえず網持って見に行こうぜ!」


「はぁ...見に行くだけだぞ」


「よしそうと決まりゃあ出発だ!」






◇◇◇






「...でっけ、せいぜい顔くらいかと思ってたわ、四倍くらいあるじゃねえか、しかもめちゃくちゃスズメバチいるし」


「言った通りだろ? ちょっとそこでゴミ袋持って待っててくれよ」


「ん? あ、ああ...え、何でお前網───」


「おりゃあ!!」





バキッ






「は?」


「おっ、案外簡単に巣ゲットできたな〜」


「バッ...は!? お前何やってんの?」


「何って巣取ったんだよ、ほらゴミ袋入れるからちゃんと縛れよ、中からハチ出てくるぞ」


「おいいいいいいい!!!!! シャレになってねえぞ!!」


「やべっハチ結構怒ってるぽくないか?」


「当たり前だ!! さっさと逃げるぞ!!」






「やべ〜めちゃくちゃブンブン言ってるぞ」


「バカなのか!? 何で一回俺に、これから取るぞって言わねえんだよ!!」


「やべ〜めちゃくちゃプンプン言ってるぞ」


「お前もう転べ!! 上手いこと言ってるつもりなのか!?」


「なんかハチの大群に追いかけられてるとどうぶつの森思い出すよな!」


「言ってる場合か!? 悪夢だよこんなん!!」


「つかもう山抜けたけど、こっからどうする? まだハチ追ってきてるんだけど」


「俺はお前と違ってちゃんと考えて走ってんだよ!! 目的地に着いたぞ、ハチをまくならここしかねえ!!」


「ここって橋じゃん」


「そうだ! 今から飛び込む!!」


「えっ何で腕掴ん───おわあああああああ!!!」


「仕返しだ馬鹿野郎!!」





ドバシャアアアッ!!!





「───プハッ、流石にまいたか!?」


「ゲホッゲホッ!! おい飛び込むなら先に言えよ!」


「そのセリフそっくりそのままお前に返すわ!!」


「あーしんど、全力疾走めちゃくちゃ疲れたな〜」


「俺もだよ...50m走の記録大幅に越してるわ」


「......」


「......」



「「プッ、アッハッハッハッハッ!!!」」





「あれ、そういや蜂の巣は?」


「あん? あるに決まってんだろ、ほら、死ぬ思いして持ってきたやつ手放すかよ」


「おっやる〜! 俺たちの作戦勝ちだな!」


「言うほど作戦あったか...? 取り敢えず中に入ってるハチ取り除いてから解体作業にはいろうぜ」


「賛成」








◇◇◇





「なぁ、いいニュースと悪いニュースどっちから聞きたい?」


「じゃあいいニュースからで」


「蜂の子は結構美味いらしい」


「それほんとにいいニュース? 俺さっさと蜂蜜食べたいんだけど」


「悪いニュースは...スズメバチは蜂蜜を作らないらしい」


「......」


「......」


「え、まじ?」


「まじ」


「そ、そんなぁ...疲れ切った身体にそんな事実、泣きっ面に蜂だよ!」


「こっちのセリフだよ馬鹿野郎!!!」






その後、炒めた蜂の子を食べたら意外と美味しくて二人は満足しましたとさ。


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