皆殺しの宴

俺は輸送トラックの動きを止まったのを見て走り出した。



「やめろ!スアン!返り討ちに遭うぞ!」



俺はやられないという自信があった。

根拠はわからないがこの戦いでは生き残るという自信があった。

トラックの右後方へ近づき手榴弾の針金を緩めた。

ピンを抜きトラックの荷台の中へ投げた。


4,5....ドカン!


俺は荷台の中に向けて連射した。

銃声の中に微かに叫び声が聞こえる。

トムソンの動きが止まったとき、俺は訓練と同じように冷静にマガジンを交換した。

俺は荷台にむけてもう一斉射行った。



「スアン!運転手をやれ!」



隊長が叫んだ。

俺は2つ目のマガジンを捨てると3つ目のマガジンを装填し前方へ回った。

俺はトムソンを窓へ打ち付けそのまま引き金を引いた。

トムソンの動きが終わったとき、隊長と仲間が集まってきた。



「スアン、お前やっちまったな....」


「...なにかまずいことやっちゃったんですか....?」


「弾の使いすぎだ。この人数だったら2つでいい。」



隊長はポーチを指差した。



「スアン!見ろよ、こいつ頭が半分吹き飛んでやがる。随分親切に楽にしてくれたな。全員即死だぜ。」



仲間の一人が荷台から言っていた。



「スアン。弾のことはなんとかなるが、今日は酒を飲んで早めに休め。気を病むなよ。」



隊長は俺を異常に心配していた。

その夜、俺たちは牛鍋を食べた。

久しぶりの牛肉と酒を楽しみながらみんなは歌を歌っていた。



「スアン!お前のお祝いだ!いっぱい食って飲め!」

「はい .....」



酔った仲間が肩を叩く。

隣で隊長が心配そうに見ている。



「悲しいか?」


「いえ、よくわからないんです....」


「今夜は気をつけろよ?」


「....?」



隊長は何やら意味深なことを言って戻っていった。

宴では仲間の一人が歌いながら「楽しいなぁ〜めでたいぁ〜」と言っている。

俺は気分が悪くなり宿舎で寝ることにした。



「あぁ、めでたい....めでたい....」


「....!?」



俺は飛び起きた。

俺の周りには頭が吹き飛んだ兵士や血まみれの兵士が8人いて、悲しげに「めでたい....めでたい...」と言っていた。



「明日は俺達の葬式だ。」


「家族に会いたかった。」


「結婚したかった。」


「全部なくなってしまった。」


「めでたいなぁ...」



悲しげな歌を歌いながら恨みつらみを俺に訴えていた。

俺は耳をふさぎ眠った。



「スアン。」


「....!?はい....」



隊長が俺のすぐ横にいた。



「やっぱり見たか?」


「はい.....」


「これはお前の優しさから生まれた幻覚だから気にするな....俺が言えるのはそれだけだ。」


「....わかりました。ありがとうございます....」



俺は顔を洗って考えた。


(隊長は今も見ているんだ....)


隊長はそれから3週間後の作戦で帰ってこなかった。

きっと彼らの宴に連れて行かれたんだろう。

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ファンティエットの海に春は来ない @Miitan2308

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