第6話……初任務! 誘拐犯を捕縛せよ!?

「お前たち、こっちの部屋に来い!」


 アーデルハイトさんに別の部屋に案内される。

 廊下を歩いていると、



「……しかし、お前たち二人とも人間の匂いがしないな!」


「!?」


「身構えなくていいさ、ここは仕事してくれたら誰でもいい所なんだ。さっきの言葉は忘れてくれ……」


 彼女とともに椅子に座る。



「……でだ、今回の任務は人質の救出だ!」

「ある商家の主人の娘さんが、同じ店の番頭格の男に誘拐された。立て籠もる場所は町はずれの洞窟らしい……」


 私達は夜のうちに、目的地である洞窟近くの森へと向かった。




☆★☆★☆


「ガウだっけ? お前の特技はなんだ?」


「弓です! 射程は400mいけます!」


「たのもしいな!」

「そっちの娘は?」


「魔法です。姿が変えられる魔法が得意です。攻撃魔法は出来ません」


「ん……、この世界では弱点を易々と人に教えるな! 損するぞ!」


「あ、ありがとうございます。気を付けます」


 アーデルハイトさんは、マリーに優しく笑った。

 そうこうするうちに洞窟へと着く。


 洞窟は暗く、広そうだった……。

 しかし、誘拐されたお嬢さんの衣装をポココに嗅がせる。



「ぽこ~♪」


 自信満々洞窟内を進む、ポココの後ろに続いた。




☆★☆★☆


 ポココの後ろを、松明をかかげて歩くこと、一時間。



「ぽこ~♪」

「誰だ!」


 洞窟の奥で、目的の人物に遭遇した。

 若い男の様だった。



「おとなしくお嬢様をお返し願おう!」


 アーデルハイトさんが、目の前の若い男に言う。



「待ってください。私達愛し合っているんです!」


 若い男に、娘が抱き付く……。


 ……え?

 誘拐じゃないのかよ!?


 ……どうやら話を聞くに駆け落ちの様だった。



「どうします?」


 アーデルハイトさんに聞く。



「仕事だ! 連れて帰るぞ!」


 ……しかし、


「こちらは連れ返されては困る!」


 そう言うや否や、若者は剣を抜いた。



「小僧! やってしまえ!」


 ……え!?

 その役、私なの??

 嫌だなぁ……。


 私は背中に背負っていた剣を抜き、構える。



「いくぞ!」


 若者に切りかかられる。



――ガシッ


 いい腕だった……。

 残念ながら、人間としてはというところであるが……。



――カラーン


 数合打ち合うと、こちらの斬撃に負け、男は手がしびれ剣を落とした。



「……こ、こいつ、見かけによらず、なんて馬鹿力だ……」


 私達は若者と娘を捕縛して、洞窟をでて、依頼者の大店の商人のもとへ向かった。




☆★☆★☆


「おお、無事に娘を連れ帰っていただき、ありがとうございます!」


「……まぁな」


「こちらがお約束の謝礼になります」


「……確かに」


 アーデルハイトさんが袋に入った金貨を数える。



「……で、あの男はどうするのだ?」


「現在、地下牢にいれております。そのうち奴隷市場で売ろうかと……」

「主人に歯向かったらどうなるか教えてやりますわい! くくく……」


 商家の主人はいやらしく笑った。


 ……!?

 私は腹が立った。



「じゃあ、金はもらったし引き上げるぞ!」

「……は、はい」


 アーデルハイトさんは私たちを連れ、スラム街にあるアジトへと帰還した。



「おう、ご苦労さん」


 アジトで待っていた戦士、傭兵団長こと、ライアンさんは金貨が入った袋を受け取る。



「小僧、不満そうな眼付きだな……」

「何があった?」


「……実は、……」


 私はライアンさんに事の顛末を告げた。


 誘拐ではなく、駆け落ちであると……。

 二人は愛し合っていると。



「……そんなこと、知らんな! 俺たちに関係ない!」


「そ、そんな!」


 マリーが声を出す。


「店の使用人の差配は旦那次第だしな……」

「……でな、俺は知らんぞ! どうなってもな!」


 ライアンさんはニヤッと笑う。



「え?」


「……だからさ、別にある商人の家がだれかに襲撃されたって、俺には知らんと言っているんだ!」


 アーデルハイトさんがニヤリと笑い、私の肩を叩く。



「今晩、襲撃してやるか?」


「お? 商家の襲撃か?」

「俺たちも、いっちょ混ぜてくれよ!」


 周りで聞いていたメンバーたちが、やって来る。


 ……事案は決した。

 あの店を今夜、襲うのである……。




☆★☆★☆


(――深夜)


――ドカッ


 扉を蹴り破る。

 襲撃メンバーは8名。

 しかも手練れの傭兵である。


 ……あっという間に商人の店を制圧した。



「命は御助けを!」


 商家の主人に命乞いをされる。

 私達は覆面をつけていた。

 相手にはだれか分からない。


 私達は地下牢に入っていた若い男を助け出し、さらに店の金品を多数奪った。

 ……完全な強盗である。



「役所に訴え出たら、貴様の命はないぞ!」


 最後にアーデルハイトさんが店の主人を脅し、我々はアジトへと撤退した……。




☆★☆★☆


 ……傭兵。

 戦になれば、お金を貰い貴族などのために戦う貴重な戦力。

 しかし、平時の時は、治安悪化などの要因になったという。


 ……私はそういう組織に根を下ろしたらしい。

 たしかに、戦で死んでも補償金が支払われるでもない捨て駒集団。

 帰る場所も、耕す畑もない。


 ……でも、お金がたまれば、自分の農地や店を買い、ここを出ていくらしい。

 それがここの皆の夢だ。


 ただ、自分にはお金の使い道は決まっていないが。



「ごはんですわよ」

「ポコ~♪」


 今はマリーたちと楽しく雨露が凌げれば、どこでもよかったのかもしれない……。

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