【短編】語り合う相手

奏流こころ

とある2人の会話

 彼と、対面にいる彼女は、互いに銃を向け合っている。

 緊迫する状況、張り詰める空気。

 彼の額から、つぅーと汗が流れる。

 彼女もまた、首筋に汗が流れた。


「裏切り者…」


 彼女は言った。


「お前こそ…」


 彼は言った。


 引き金に力を入れようとしたその時ー…。



「突然間に入って来た子供が犠牲になるなんて悲しすぎるじゃん!」

「そうだよな」

「棒読みで同意しないで!」

「そう?」


 放課後の教室で語り合う2人。

 頬杖をついてダラけ気味に聞いている男子生徒と、熱量込めて語る対面に座る女子生徒。


「来週どうなるのかな…死んでないよねあの子」

「見たら分かるよ」

「ちょっとは予想してよ!」

「あはは」


 楽しそうに語り合う2人を、クスクスと優しく見守るクラスメイト数人。

 教室にはあたたかい空気が流れた。


「じゃあ次はあのドラマなんだけどさ」

「また明日にしない?」

「なんで?」


 女子生徒は明日は休みだから会えないじゃんと目で訴える。

 そんな事を知ってか知らずか、男子生徒は気にもしないでこう言った。


「明日か明後日空いてるなら会わない?」

「えっ…」


 ポカンとする女子生徒。

 すると男子生徒は彼女に軽くでこぴんをした。


「何するの!?」

「アホ面してんなーって」

「むう」


 けらけら笑う男子生徒。


「明日も明後日も会えるけど…?」


 おずおずと女子生徒は言って俯いた。


「ふーん」


 口の端を上げて男子生徒はこう言った。


「なら2日間よろしくな、あとで連絡する」

「ちょっ、えっえっ?!」

「さいなら~」


 頭も心も混乱する女子生徒は慌てて彼を追う。


「あー!待ってよー!」


 そんな2人を見守っていた数人のクラスメイトたち。


「可愛いね」

「楽しそう」

「羨ましい」

「絶対好き同士だって!」

「分かるー」


 幸せをお裾分けしてもらってごちそうさまでした、と皆が思うのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【短編】語り合う相手 奏流こころ @anmitu725

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ