part8〜もう一つの戦場〜


「宵月君、特命が入って午後からの配信は来られないみたいっすね......」


私達が次の配信の準備を進めている最中、ふと小山さんがそんなことを呟いた。


「百合香さんから理由は聞いてるか?」


「いえ、何も...ただ、宵月は別の仕事のために借りていくとしかメールが来てません」


「そうか......まあ、居ないことは仕方がない、とりあえずカメラのセッティング急げ!タレント陣!大丈夫ですか?あと20分ですよ?」


すると、横で待機していた岩崎さんが声を上げた。


「大丈夫で〜す!よし!準備OK?紅月ちゃん?」


「は......はい!」


いきなり岩崎さんに声を掛けられ、素っ頓狂な声を上げたが、もう準備はできている。


「大丈夫?って言うか、今の声可愛い〜!」


岩崎さんがケラケラと笑いながら私の肩をぽんぽんと叩いた。


「大丈夫よ紅月ちゃん、さっきも成功したんだから、そんなに緊張しないの」


「みゅ〜ぅ、はい......」


なんか変な声.....もとい子供みたいな声が出たが、とりあえず配置につこう、なんやかんや配信が始まってしまう。


「がんばろ〜!二人共!」


岩崎さんがそう言って私達の背中を押して配置に着く。


「3分後に始めます!水分補給とトイレは済ませておいてください!」


司さんの最終確認が入り、三人でカメラとノートパソコンのモニターを見た。

モニターにはデカデカと某動画配信サイトのカウントダウンが表示されていた。


刻々と時間が迫っている。


一口水を含み、いざ、小山さんから指示が降る。


「5秒後に配信をはじめまーす!4......3......2.....1......スタート!」


「はい皆さんこんにちは!moon night3期生所属、のぞみんこと、祈里希と〜」


「こんばんわ!夕凪暁です!そしてそして〜」


「桜坂姫花です!それでは今日最後のレビューをしていきたいと思います。」


三人それぞれが挨拶をした後、司さんの合図でそれぞれ料理が運ばれてきた。


「部屋、温泉、マッサージのレビューと来て〜最後のレビューはこれだ〜!ジャジャン!」


岩崎さんが指パッチンをしたと同時に、小山さんがPCのエンターキーを弾いた。


刹那、配信モニターにそれぞれ三人の元に運ばれてきた料理が映し出された。


「みなさんお待ちかね、このホテルの料理です!私のは天ぷら御膳って言うメニューですね、左から順番に県産米使用の白ごはん、そして、各種天ぷら、天ぷらの種類は5種類と、豊富に入っていて、カニクリームコロッケまでついてるみたいですね!そして、県産ブランド野菜がふんだんにあしらわれたサラダ。最後に、海鮮の旨味がぎゅっと詰まったお吸い物です」


私が説明をし終わり、一泊置くと、司さんの合図を皮切りに、今度は宮坂さんが話始めた。


「最初に説明したのが暁ちゃんだったし、暁ちゃんから頂いちゃって?」


「いいんですか?」


「いいの!いいの!年頃の女の子が遠慮しない!」


宮坂さんと岩崎さんからの押しを受けた私は断りきれずに、料理と一緒に運ばれてきたバケットからお箸を取り出した。


「じゃあ早速、お吸い物から頂きます。」


そう言ってお吸い物のお椀に着いた蓋を開けようとしたが......


「あれ?開かない?」


何回も開けようと試みたが、蓋が硬くて開かない。

すると、岩崎さんが微笑みながら言った。


「あぁ、あるある、アッツアツの出来立てお吸い物って開かない時あるよねぇ、これにはねぇ、コツがあるんだよ」


チッチッチ、と指を振りながらお吸い物のお椀を持ち上げた。岩崎さんは少しお椀を凹ませると、蓋を回しながらパカりと開けた。


「ほらこの通り!」


まるで手品でも披露したかのように自慢げに手をひらひらさせる岩崎さんに宮坂さんが軽くツッコミを入れた。


「あんた、それは検索とか、どうかするとテレビでやってる簡単な裏技でしょ?」


「たしかにそーだけど!ムゥ.....桜っちのケチ」


そんなコントを見たコメント欄は、かつてないほどの速さで流れていた。


[開かないお椀を開けようとする暁ちゃん可愛すぎか?]


[てか自慢げにするいのりん可愛いな!おい!]


[そこにすかさず冷徹なツッコミを入れていくひめちのノリ......さすがっす......]


コメント欄の反応も上々、順調なところで、私はお吸い物を口に運んだ。


「......美味しい」


自然と漏れた本音、まさにそう、さすが一級ホテルと言うべき美味しさだった。


「食レポなんて初めてなんで.....うまく表現できるかわからないですけど、出汁とか香りとか、本当に美味しいです.....」


「ふむふむ......天ぷら御膳のお吸い物には付属している漬物と一緒にご飯で合わせると美味しいらしいよ〜」


岩崎さんがディナーの説明を読み上げ、それを聞いた私はささっとご飯とお漬物を手前に寄せた。


「やってみます......」


漬物をご飯の上に乗せ、一緒に口に運んでから、すかさずそこにお吸い物を流し込む。


「なんて言ったらいいんだろう......口の中で出来上がる一つの雑炊みたいな、そんな味ですね」


「へぇ〜美味しそう!」


「そろそろ天ぷら食べてみたら?視聴者のみんなも待ち侘びてるんじゃない?」


宮坂さんから勧められ、私はそっと箸を天ぷらに伸ばす。


「じゃあ......いざ!」


そう言って、天ぷらを一口食べた。


「んー!?おいしい!」


その刹那、コメント欄がマシンガンのように流れる


[暁ちゃん、今までになく幸せそうやなぁ......]


[幸せそうな暁ちゃんが見れたんや......我が生涯にいっぺんの悔いなし......]


[↑骨は拾ってやるよ......]


そのコメントの反応を確認し終えた岩崎さんが元気に手をあげて話し始めた。


「はいは〜い!じゃあ!次私ね!もうお腹ぺこぺこなんだよぉ〜」


そう言って岩崎さんは料理を寄せた。


「ちなみに〜私が今から食べるのはお造り御膳、色々なお刺身が食べられるよ〜!」


刹那、とあるコメントが目に入る。


[“クレイドル"から逃げたクソ女が、随分と有名になりやがったもんだな]


あとがき

皆さんこんにちはReitoです!!また投稿期間が空いてしまいました......今回はついに修羅場発生ですね!いきなり普通の配信から修羅場配信に突き落とされました!果たして三人の対応は!?そして次は宵月視点!謎の男の正体に迫っていきます!それでは次回予告

次回〜狙われているのは!?〜

乞うご期待!!

それではまたみなさん次回お会い致しましょう!

Good by!!

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元狙撃手の高校生、Vtuber事務所の裏方役になったそうです!? 長月零斗 @Reito21331

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