第22話 出雲への招待状

「宮内庁への報告書類も粗方まとまりましたし、後は文章体裁の確認だけです。

 今回もありがとうございました。それではまた次回、よろしくお願いしますね」

弥生と裕美子はそう言って帰路につく。


丁度帰宅した双子の妹、暮葉くれは柚葉ゆずはも含め、皆での見送りとなった。



その後、美由紀は暮葉・柚葉と共に、姉妹の部屋でJCJK談議に花を咲かせていた。


姉妹は14歳の中学二年生。二つ上の美由紀を幼少期から姉のように慕っており、

「早く本当のお姉ちゃんにしてよ」と小次郎を急かすのは今更始まった事ではない。

自分達が進学予定である高校の事について色々聞く、とは言っているものの、

どっちみち最終的にはキャピキャピの話題にシフトしてしまうのだろう。


ヤンチャしつつも妹達の事は常に陰から見守っており、妹達もそれに気付いていた。

その時期こそ若干距離を置いて過ごしてはいたが、妹達は基本的に兄・小次郎の事も

大好きであり、自他共に認めるブラコン(プラス水面下シスコン予備軍)なのだ。



「さて・・・と。身内だけになった事だし、幸いにも美由紀も席を外しているし。

 そろそろ話を出しても良いかな」

そう言って、宗重はおもむろに口を開いた。


「小次郎君、毎年出雲大社で神在月の神事が行われているのは知っているよね?」


「ええ、勿論。家業に関係無く、一度行ってみたいと思っていました。

 正直言って、毎年親父が行っているのを羨ましいと思っていました」


「そっかそっか。なら、条件を満たした君を誘う事に、何も問題は無い訳だね。

 ・・・と言う事で、どうですか義兄さん姉さん。現当主を加える事に異論は?」

そう言って隆一郎と環菜へ目配せをすると、二人は揃って頷く。

異論無し、ということだろう。


両親からの承諾を得たと解釈し、声のトーンを落として宗重は語る。

「その神事に、実は“裏”があるとしたら・・・・君はどうする?」


「・・・はい?裏、ですか?」

まさかの“裏”という宗重の言葉に目を見開き、思わず間抜けな声を上げる。

『どういう事?』と、そのまま両親の顔を伺う。


しかし両親は黙ったまま。

環菜は厳しい視線を、隆一郎は微かに笑いを浮かべ、二人はゆっくりと頷いた。



---ああ、そうか。そういう事、か---


「喜んで、行かせて頂きます。自分にとって、間違いなく糧になると思いますので」


こうして、小次郎の出雲行きが決定した。

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