3. 悪役について

 今回は作中で描かれる『悪役』についてです。

 こんなこと書く前に未完の作品書けよ、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これを書いている時はだいたい創作に詰まっている時なので、お察しください。


 物語において、様々に描かれる『悪役』ですが、そこにはいろいろな種類があると思います。

①バイキンマンやショッカーのように、勧善懲悪作品における悪意を持った敵役

②大企業などの巨大な組織の役員や上司、政治家をはじめとした権力者

③利害関係の衝突により敵対している個人や団体


 他にもたくさん種類が出てきそうですが、キリがないのでここで止めておきます。


 ①についてはイメージがわかりやすいと思います。

 みんなを困らせるバイキンマンをアンパンマンがやっつける。長年親しまれているストーリーで、大変わかりやすいです。

 ショッカーは世界征服のために怪人を作って人々を襲い、施設を制圧・破壊するなど悪事を働き、仮面ライダーがその怪人と戦って倒す。これもわかりやすいストーリーですよね。


 ②については主人公が会社員で社内でのトラブルや不正を正したり、もしくは起業家の成り上がりストーリーの中で『邪魔』をしてくる役。カイジの利根川とか、(あんまりドラマは見ないんでよくわかりませんが)半沢直樹や六本木クラスに出てくる香川照之さんはこの辺ではないかと。


 ③については、国家間戦争や、地球外生命体など異種との戦いなど、双方の価値観の違いによる衝突を描くことが多いかと思います。戦争物はだいたい敵対勢力を悪役にすることが多いと思いますが、自国の利益や権利を守ることであったり、自身の信じる宗教解釈、自分なりの正義で動いている確信犯(正しいと信じて行われた犯行)の面があるため、こちらのカテゴリにしています。(昨今の国際情勢上、そう言い切れない部分もありますが)



 前置きが長くなりましたが、わたしが作品を書く時、すごく意識して使おうとしているのは、③タイプです。

 『あからさまな悪役を作らない』を意識しているのです。

 2つ前のお話で「TRPGシナリオ作っていました」と申し上げましたが、あの時は

『敵として戦っていた組織は実は体制側の治安維持組織であり、人々の命を蒐集していた魔導書を使って世界を滅ぼす強力な魔獣の封印を続けていた。あと数日、数百人の命を捧げれば、時間経過で魔獣はその身が崩壊して危機は去る。主人公たちは「数百人の命を犠牲にすることを容認できない」と主張するが、逆に敵からは「勝てる見込みがない戦いで世界に住む数十数百億の人々を危険に晒すのか」と問われた』

 というシナリオを作っており、プレイヤーの皆さんを困らせてしまいました。

 より多くを救うために、少数の犠牲は許されるのか、という問題です。

 物語の主人公なら「命を見捨てるなんてできない!」となってほしいところでしょうが、治安を担う側からすると、より確実に多くを救う手段を取らなければならない。その両者は意見の相違により衝突するわけです。

 このころは特に『カルネアデスの板』や『トロッコ問題』などを題材にしていたこともあり、『冷たい方程式』などにも影響を強く受けていましたので、余計そっち方向に話を持って行ってしまったわけですが。

 

 世の中には敵側にもスポットライトを当てて、なぜこんなことをしでかしたのかの理由を語る作品もあります。例えば『金田一少年の事件簿』なんかは被害者はだいたい過去に加害者本人やその関係者に何か悪いことをしでかしていて、その復讐で殺される、という流れがあります。ミステリーにおける敵役であるはずの犯人が、なぜそんなことをしたのか、という人間性を描いているわけです。


 ただ敵を敵として切り捨てるのではなく、その背景も描く。

 持論ですが、いい作品は「敵がかっこいい」ものではないかと思います。(例に挙げた金田一では、高遠遙一が好きです)


 嘗て、敵役とは負けるべき存在であり、極端な話「主人公を引き立てる嫌な奴」であったのではないかと思います。

 でも、嘗ての敵が仲間になる展開って、熱い展開だと思いませんか?

 わたしは『シンフォギア』シリーズすべて見ているんですが、5期『XV』では3期『GX』のボスキャラが出てきて「もうダメだ」のところで圧倒的力を見せつけて追手を退ける、いわゆる『神回』でした。『GX』ではそのボスキャラの過去も語られ、なぜ世界を壊そうとするのかが示されていました。ただの敵とだけ描いていたら、こんな登場のし方はできなかったと思います。

 

 ならば敵を全部そんなタイプにすればいいかと言われれば、それもまた少し違うかなと。先にも言った使い分けです。

 登場キャラクターの力を見せるための噛ませ犬役、競い合うライバルを兼ねた成長を促す役、圧倒的な力を見せて目指すべき最終ゴールとして認識させる(最初は勝てないが成長することで最後に打倒するなど)役などなど、役割を意識することでストーリーに起伏を与え、登場人物に活躍や個性を引き出すことができます。


 ちょっと注意が必要かなと思う点を1つ。

 悪役の目標を『世界征服』とする場合、(爽快感やコメディを主としているお話の場合は不要かと思いますが)世界を征服して何をするのかが必要かなと。

 世界征服って、目的ではなく手段だと思うんです。

 例えば世界を征服して、経済界を牛耳る・影響力を与えることで金儲けをする。それからその金を使って……、とか。世界中の女を、男を跪かせ、見下してきた連中を見返してやる、とか。例えば、と言っておきながらまだ途上の段階になってしまっていますが、何のために世界征服するのか、を固めておかないと、苦しくなるお話もあるかと思うので、設定に拘った作品や、敵にも多く焦点を当てる場合は特にそのあたり注意が必要かと思います。1つ前のお話で書いた、作者が設定を、世界観を理解しているという点が求められる、ということです。



 では、今回はこの辺りでお開きとさせていただきます。


 私自身、自分の発言がブーメランにならないように気を付けたいです。

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