3-4 ゲームシステム

「攻略対象に好かれるために努力する、だけじゃないのか?」

「『花燈』は戦闘アリ・育成要素アリのゲームだったんだよね。

 えーとねえ、物語の節目節目に敵陣営や異形と戦う展開がやってくるんだ。レベル…、駒を強くするようにヒロインも攻略対象も鍛えて強くして、勝たないといけない。じゃないと物語が次へ進まないようなってる」


 つまり好感度は低く戦闘は強い、好感度は高いが戦闘は弱い、というキャラができあがったりする。

 キャラの強さには『レベル』と『能力値』のふたつの数値が関わっている。レベルは体力量と使える武器に関係してくる。能力値とは物理攻撃・物理防御・特殊攻撃・特殊防御のことである。キャラによって得意不得意がある。

 ノートには攻略対象ごとのアドバンテージ、レベルを上げると段階的に使えるようになる武器を図にしてある。

 能力値を上げる方法は主に2つだ。

 ひとつは『鍛錬モード』で鍛えること。ゲーム画面ではSDキャラがちまちま動き回っていた。強化したい能力値のよって鍛錬の種類を変える。

 もうひとつは、差し入れを攻略対象に渡す方法。差し入れによる能力の上昇率とどの能力値が上がるか、そしてお礼のボイスはランダムだった。『急上昇』や『超上昇』に当たったり、一度に2つの能力値が上がればラッキーだが、こちらではヒロインのレベルが一切上がらない。その上、ヒロインに『調理実習』という、戦闘にも好感度にも一切影響しないスキルを覚えさせないといけない。

 レベルは『探索モード』というモードで探し出す『花玉はなだま』を与えることで上がる。帝都MAP上をSDキャラが歩き回る演出で、オートで進めてくれる仕様だった。探索できるのは午前と午後の1日2回。


「あ、入る部活動によってヒロインのステータスに補整がかかる効果があったんだった」


 ゲームでは運動部に入れば物理攻撃・防御面でボーナスが、文化部に入れば特殊攻撃・防御面でボーナスがつくようになっていた。手引きノートの余白に「ヒロイン / 運動部→物理の能力を強化 / 文化部→特殊の能力を強化」と書いておく。

 ただし、今まで述べたこれらは無課金で育成をする場合である。課金すれば時間をかけることなくレベル上げ・能力値上げができるアイテムが購入できる。『花燈』は携帯ゲーム機でプレイするゲームだったが、ネットに繋いでギフトカードを購入すれば課金することができた。


「最後の最後、帝都が危機に晒されるときに必要になるのは、どれくらいの強さなんだい?」

「上限が99なんだけど、確か…。あった、全員80レベル以上あったら誰も戦闘不能になることなくクリアできるって。1度に3体まで場に出せて、2体控えに入れておける。最終決戦に限り、最初の内1体はヒロインで固定されているんだよね」

「80以上…って、どれくらい戦えるんだ? たとえばうちの剣道の師範と比べると?」


 ノートを見やすい向きに変え、キャラとレベル、開放される武器の図見る。ちなみに戦闘能力的にはレベル89までで十分、90から先はレベル99に到達したら貰える特別なスチルを見たい人が目指す領域だ。

 レベル80以上にまで育てたキャラの攻撃力を思い出してみる。前世の姉がプレイしていた画面では、全体像が収まりきらない巨大な異形の長ーいHPゲージを金銀キラキラな武器を使ってド派手な演出を出しながらバンバンダメージを与えていた。上級の武器は攻撃力が高いことと強力な異形の持っている『無敵(ある回数分攻撃が無効化される)』や『痛み分け(カウンター。攻撃したら何割か攻撃した側もダメージを受ける)』といった特殊な性質を無視してダメージを与えたり、異形が繰り出す状態異常をターン数を消費することなくオートで打ち消すことができる。『花燈』はリアルタイムの時間経過が関係してこないターン制コマンドバトルであった。前世でいうと、ポ〇モンやドラ〇エと同じである。ゆっくり自陣の攻撃パターンを計算しながらバトルができる仕様なのだ。


「こういった上級武器は隊長格が扱える、って記述があった気がする。瑛梨のとこの師範の若い頃より少し上、くらいじゃないかと」

「若い頃の師範より少し強いくらいのが5人いれば安心、か…。

 仮定の話だけどだけど、私たちはそこまで強くなれるだろうか? そうすれば帝都の安心材料が増えるでしょ?」

「どうだろう。それには生まれ持った才能ってやつが必要かもしれない。ヒロインと攻略対象たちは、それが約束されているのかも」

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