第10話 標的となった魔王
☆☆☆
「魔王っ! いるか!」
侵入者警報がなったと思えば、またも雄二が1人で来ていた。
何だ何だ? 急いでんのか?
「ちょうどいい、新機能使ってみるか。」
俺はダンジョンレベルが3になったことで使えるようになった機能を使う。
目の前に雄二が現れた。
これが新たな権限……転送。
指定した1人のみをダンジョンないの好きな場所に転移させられる。ただし、お互いに味方だと認識してる時のみで、周りにトラップと魔物がいないことが条件だ。
クールタイムは12時間。
「……おい魔王! くつろいでる場合じゃねえぞ!」
「んー? なんだいきなり騒がしいな……何かあったのか?」
俺は起き上がって雄二に尋ねる。まさかもう結奈に手が出されたとは思えないが……
「ここに次、勇者組が攻めてくるぞっ!」
「何だ、そんなことか」
「……は!?」
いつかくるってことはわかってたし……ってえ?
「……え、まじ?」
「あ、当たり前だろ! 何で余裕なんだよ!」
ま、まじか……予想はしていたけど……早え。
「や、やばいっ! い、いつくるんだ!?」
「うお!? 余裕じゃあなかったのか!?」
「んなわけあるか!」
「マスター、落ち着いて」
『うわあああ! 怖いよおおお!』
雄二が落としたその一言で、場が混沌とした雰囲気に包まれた。
=====
──15分後
「……取り乱して悪かった。だが、まじでまずいんだよ。」
「あ、ああ。てか、勝てそうにもないのか……?」
俺は目を逸らす。
「まじか……」
「マジマジのガチ」
「ふざけてる余裕あんじゃねえか!」
『うわあああん!』
違うんだ。俺はいたって真剣だ。ちょっと勇者が来るって聞いて平静が保てないだけで……
「マスター、落ち着いてください。」
ガイドに言われて、少し落ち着いてきた。
大声で泣き出すチキンを命令で強制的に黙らせ、雄二の話を聞く。
「…………つまり、直ぐには来ないが早くて2日、遅くても7日以内には来るのか。」
魔王は強い。
だが、ここの市長が考え出した調査隊方式が完璧なまでに俺たち魔王を殺しにかかっている。
てか、勝手にダンジョンに入らせてもらえないのに文句とかないんだな。
……だからこっそり潜ってるのか。
「だが……ほんとに2日で攻略なんて可能なのか?」
「ああ……。もう終わりは見えている。」
雄二の話によると勇者組は10人組で、魔法使いが6人と戦士2人、治癒士1人に詳細不明……須藤智彦がいるらしい。
「魔法使い6人って……ガチで俺を殺しにきてんのか?」
結奈以外全員レベルは10に届くらしい。雄二が4だ。
「結奈も攻めてくる……だが、結奈だけは傷つけないでくれ。」
「乱戦の中1人を守る……そんなことは不可能に近いと思うが?」
「……最悪ポーションで治せるレベルにしといてくれ。……俺はお前を信頼している。」
きっと最重要機密事項であろう勇者組の情報をわかっている分全て教えてくれたのだから、そこそこには信頼されていると見ていいだろう。
だが、俺は全力でやっても勝てる気がしない。
「勝つのは辛いだろう。……だが、何もせず泣き寝入りなんぞ絶対にしない。」
俺はできる限り抗う。この世界に。それが、世界が変貌したときに決めた目標だ。
「よし……準備するぞ。」
俺は、ダンジョンの構造を大幅にいじるのだった。
=====
1階層
石の迷宮
モンスター60
トラップ30
宝箱0
2部屋目
石の迷宮
モンスター100
トラップ50
宝箱0
3部屋目
墓地
モンスター9255
トラップ21
宝箱0
DP:451
ダンジョンレベル3
総合ダンジョンランク:G
1部屋目と2部屋目を入り組んだ迷路にして、道幅を狭くする。強制的に1対1になるよう誘導し、体力や魔力の消耗を狙う。
3部屋目はいつもどうりだ。
あと、全体的にトラップをかなり増やした。
その多くが毒霧トラップだ。
治癒士、とやらがどれほどのものかわからないが毒にさえなれば勝てる……はずだ。
「……あとは……雄二。」
「おう……?」
「雄二はもう、24時間ダンジョンにいてくれ。DPを貯める。外に用事はないだろ?」
「……ああ。」
俺は、ある逆転の可能性を秘めたアイテムを購入するため、雄二にDPを稼いでもらうことにした。間に合うかは不明だが……3部屋目のモンスターハウストラップでレベル上げと同時に進行している。
恐らく、漏れなく×付きのスケルトンたちは経験値が低いが、敵に虐殺されては困る。
それならば、と雄二にスケルトンたちを経験値に変えてもらうことにした。
ごめんよ……スケルトンたち。
48時間後。
9000を超えるスケルトンを討伐した雄二のレベルは13となり、最後にはコアを守る番人として戦ってもらう予定だ。
そして、準備をして3日。
ついに、世界が変貌して15日。
中津川の“勇者組”御一行が俺のダンジョンに侵攻してきた。
その数、10。
その中には、結奈の姿もあった。
何やら他愛もない会話をしながら入ってきた10人。年齢はバラバラだが、大学生くらいの人間が6人ほどで、一番多い。
早速リーダーっぽい、ブロンズソードを持った男が結奈に話しかけて、そっぽを剥かれている。
「あれが須藤智彦か……すぐわかったぞ。」
俺は“勇者組”御一行をみて、深呼吸する。
「ふう……。さて……俺のダンジョン、クリアできるもんならしてみろよ」
俺はモニター越しに、口元を釣り上げた。
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