第24話

 警察が涼真を送検したと聞いて、一心は今回も家族愛の強さをつくづく思い知らされた。3人の連係プレイだと考えると、家の中の犯人の足跡が途中から濃くついていた説明もつくし、夫の部屋のドア外で足跡が多くついている説明もできる。さらに妻がコンビニで買い物をした理由も見えてくるし、妻の怪我も自作自演だと説明できる。

 想像でしかないが、計画を立てたのは妻で涼真は後から知って協力したものだろうし、娘は計画をどこかのタイミングで知って、母親を助けようとして自らが犯行に及んだと考えるのが自然な気がしていた。

 いずれにしろ、妻や娘のリュックには2リットルのペットボトルは4本8キロしか入らないし、漬物石をリュックに入れた痕跡も、漬物樽から出した痕跡もまったく無かったと警部は言っていた。

 結局、警察は足跡の変化について何も実証できなかったのだから、もう追及の手立てはない。

悔しいが、自供と物証と動機に合理性、納得性、妥当性があれば、被疑者の主張を司法上の事実と認定し被疑者を裁いてしまう。人間のやることだ、何処かに限界はあって然るべきだ。

 

 一心は、家族愛に俺や司法が負けた二例目となってしまった、と肩を落とした。

 

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