第15話

 紗良は大都城警察署を出てほっと胸を撫で下ろす。足跡の違いは追及されると返事のしようが無くなると思って分からないと答えたのよねぇ。

万が一にも真帆に疑いのかかるようなことは言えない。

 実際は、計画書には書いていなかったけど、私は足跡と体重の関係を調べられると考えて、漬物石二つと2リットルのペットボトル2本をリュックに入れて背負って部屋を出たの。だから体重は60キロを超えていたはずでした。私はそれを背負ったまま自分の靴を履いて、さらに真帆が履いていた27センチの靴を履いて凶器を捨てに出たので、警察に疑問を持たれる結果になってしまったけど、仮にリュックを背負っていなかったら足跡から体重がばれて一層自分と真帆が疑われることになったと冷や汗を掻いたのよ。危なかったわぁ。

 夕食を終える頃自宅に着いて、インターフォンを鳴らすと真帆が飛び出してきて、いきなり「お帰りー、どうだったの?」って、心配していたのか顔色があまりよくない。

「大丈夫よ、何故、夜中に起きたのか?とか、コンビニへは良くいくのか?とか質問されて答えただけよ。あんたは心配しなくても大丈夫。ぱぱが守ってくれるから」

「えっ、ぱぱって帰って来たの?」目を一杯に見開いて真帆が言うので「いや、そうじゃないの、あんたの服とか凶器とか捨てに行ったら、途中でぱぱがでてきて、ままと真帆は俺が守るって言ってみんな持って行ったの。だから、あなたは心配しないで。ねっ」と正直に話したの。

「え~、ずる~い。真帆もぱぱに会いたい」真帆は口を尖らせ、潤んだ大きな瞳を私に向けて私の服を掴んで引っ張るのよ、どれだけぱぱが好きなのかしら、涙が出ちゃうわ。

「真帆、これからが大事なの。ぱぱがあれをどうする積りか分からないけど、ぱぱの言う通りにしよう!できるでしょ?」真帆の目を正視して言うと、真帆は、うん、と頷いてくれたわ。

「それと、ぱぱの事はお婆ちゃんにでも言っちゃだめよ!わかった?」

真帆は真剣な私の目を見つめ「うん、絶対に誰にも言わない。でも、ぱぱは行方不明じゃなくなったのね。生きているのね!」そう言って嬉しそうに頬を染めている。

「もうすぐよ、ぱぱに会えるの、それまで頑張ろう、ね!」そう言って真帆を見ると、暗く沈んでいた顔が、明るい笑顔に変わっていて安心したし、これまで自分に反発していた真帆が、別人のように素直に話を聞いてくれてほっとしたわ。でも、殺人をさせてしまったことが、これから真帆の心にどういう影響を与えて行くのか不安であり心配なのよ。だって、昨日、私が食事の支度をしている時、真帆が「お手伝いするよ」と言ってくれたので「まな板に載せてある漬物を切って」と迂闊にも頼んでしまったの。それで何時まで経っても切る音がしないので振り返ると、真帆が包丁を持ってぶるぶる震えて泣いていたの。私は、あっと思って「ごめんね。思い出したのね」と言って包丁をがちがちに握っていた真帆の指を一本ずつ外して「ごめんね。ままのせいで、ごめんね」と言って真帆を抱きしめたのよ。真帆は「まま、ごめん、包丁怖くて使えない!」と言って大泣きするのよ。真帆に申し訳なくって涙が止まらなかった。あの時、計画書を印刷したまま机上に置いてしまった事に臍を噛む思いがしたわ。

 

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