10位~7位

 2022年は社会人生活一年目で、2021年とは打って変わってこのサイトでの活動も止まってしまいました。その間、長編の書き溜めは少しずつ行っており、ある程度のところまでいったら順次公開していこうとは思っていますが、現段階では未定です。

 そしてこの企画、本当は大みそかに出そうと思ってたのですが、実家に帰る際、PCを寮に置いてきてしまうという失態を演じ、見送りとなってしまいました。そろそろ新年ムードも消えたとは思いますが、改めてここにランキング付けを行いたいと思います。注意事項は「はじめに」をご参照ください。



10位 「花の塔」/さユり

【 https://www.youtube.com/watch?v=WIKKyrGGaDk 】

作詞・作曲 さユり

備考 リコリス・リコイルEDテーマ


 昨年のアニメの中で高い評価をつけられている、「リコリス・リコイル」のエンディングテーマです。私自身、昨年見たアニメの中でも「ぼっち・ざ・ろっく」に次いで面白かったアニメだと思っています。声優の安済知佳さんと若山詩音さんのコンビがとてもよかったと思います。安済さんは遠い昔、「たくのみ。」というアニメでお酒が大好きな女性を演じられていましたが、その時と同様、いやそれ以上にリアルな演技でした。


 この曲の歌詞は当然ながらアニメとリンクしています。また、アニメ内でこの曲の入るタイミングが絶妙で、一週間が待ち遠しくなるという仕掛けになっていました。かなり昔、「FAIRYTAIL」も同じような構成になっていたと記憶しています。歌っているさユりさんは「フラレガイガール」が有名になりましたね。

 

 サビに入ると音程が変わります。エンディングムービーではこのサビの部分で、まずたきなが映し出され、一転、落ち着いた様子で微笑を浮かべる千束の姿が描かれます(これ、物語の序盤のころは、各キャラのイメージとは逆になっていて、興味深いなと思ったのを覚えています)。その後、各話の振り返りのような映像が流れ、春→夏→秋→春という順で時を経る二人の姿が。そして喫茶リコリコの面々が集合し、ムービーは終わります。


 このサビ(一番)の歌詞、皆さんはどう思いますか。私は、やや不穏なものを感じています。飛躍するなら、二期への伏線のような。

 

「君が手を差し伸べた 光で影が生まれる」


 たきな目線で考えるなら、君=千束になるのでしょうが、まるで千束の温情が影を生み出しているかのような。

 あまり語るとネタバレになるので、ここらへんにとどめておきます。私としては、無理に二期をやる必要はないかなと思う一方、最終話はとても全てが解決したとは思えない内容でした(あの男【「影」ってこのこと?】や、リリベルなど、深堀しようと思えばいくらでもできそうな内容でした)ので、もし予定されているなら、楽しみにしたいと思います。






9位 形ないもの/GLIM SPANKY

【 https://www.youtube.com/watch?v=Fvr-Vge9Hfw&list=PLYInuFdkkFeG7mFwVrXPgpzH-lpgwy9-N&index=25 】

作詞・作曲 松尾レミ


 春の終わりの頃に聴いた曲です。YouTubeには五月の末に上がりました。

 GLIM SPANKYの楽曲はこれまでちょくちょく聴いていました。一番最初に聴いたのは「愚か者たち」。その後、「美しい棘」、「東京は燃えている」、「こんな夜更けは」など、記憶に残っています。

 

 この曲は、私が一人暮らしを初めて少し経ったタイミングということもあってか、とても心に沁みました。ボーカル、松尾レミさんのハスキーな声で歌われるこの歌詞は、寂しさをまといつつ、同時に優しいものとなっています。

 全ての曲を聴いたわけではなく、むしろ一部の曲を聴いたにすぎない私ですが、この曲に限らず、GLIM SPANKYの曲には、どこか遠くにいる誰かを想う曲が多いような気がします。また、大人になることへの眼差しも描かれているように思われます。

 

 「春の予感」という言葉が、サビでは必ず登場します。春という季節がまじかに迫る、春は変化の時季です。卒業、独立、入学、就職などなど。大きな切なさと小さな期待を胸に新しい世界に飛び込むことになるのです。去年、十位に位置したAKB48「桜の栞」もそうでしたが、そんなイメージを巧みに描き切っていると、私は思いました。私自身の、昨年の経験とも重なったのでしょう。



 ピックアップリリックは次の一節。

「どんな季節も気付けば過ぎて 尊さはやっと後でわかる」



 一番Aメロにあるこの歌詞は、確かにそうだと思います。けれど、悔やむ暇はなくて、ただ「春の予感」を覚えながら、「悲しみも抱いて」「階段をのぼっていく」しかない。そんなメッセージは、「春」を迎える人なら、刺さるものがあるでしょう。


 最後のサビは、落ちサビから一段音程が上がります。そして最後のサビで、初めてタイトル「形ないもの」が歌詞として現れます。

 冒頭に述べた通り、寂しくて優しい曲になっています。これから春を迎える人に、ぜひ聴いてほしい、そんな曲が第9位に入りました。








第8位 「抱きしめたいほど美しい日々に」/くじら

【 https://www.youtube.com/watch?v=oACB0FkHRLE&list=PLYInuFdkkFeG7mFwVrXPgpzH-lpgwy9-N&index=19 】

作詞・作曲 くじら

 

 この曲にはPVがあります。アニメと現実が融合したようなこのPVの前半では、おそらく社会人の女の子の生活が描かれています。その最中(PVでいうと0:50秒頃)、電車に乗っているシーンで、主人公がスマホの画面を見ているのですが、ここがこの曲の大切なシーンの一つなのかなと思います。そこに映し出されているのは、過去の自分、とても楽しそうな自分です。そして一瞬画面が暗くなる。操作をしないとスマホの画面って消えますね。あれです。その一瞬だけ現在の自分の顔が映り、それから目を背けるように再び画面をタップ、過去の笑顔の自分が映し出される。


 今の自分と過去の楽しかった自分を、恐らく無意識に比較してしまい、自己嫌悪に陥ることは、よくあることかもしれません。特に、現状に満足できない人は。

 サビまたタイトルの「抱きしめたいほど美しい日々」とはその、過去の日々を指しているのでしょう。しかし当然、記憶は薄れていき、いずれはなくなっていくものです。だから、「栞を挟んでおいて」、つまり過去の楽しかった記憶をいつでも見つけられるようにしておきたいという歌詞に繋がっていきます。


 PVの彼女にとっては、例えば「スマホ」であったり、「ヘッドフォン」であったり、「ぬいぐるみづくり」であったりしたのでしょう。それを今一度してみることで、少しだけ今の自分の生活も色を取り戻した、とでもいえるPVになっています。

 あるいは、あの「野菜ジュースの紙パック」は、過去と現在の彼女が繋がるよすがでもあります(写真フォルダの中に同じ紙パックがあります)。実は昔の自分と今の自分は確実につながっているのに、記憶が薄れることで断裂しているように思えてしまう。けれど、実はジョイントは身近にある。そんなものなのかもしれません。


 ピックアップリリックは最後のサビから次の一節。

「抱きしめたいほど美しい日々に! 栞を挟んでおいて」

 

 最後のサビにだけ、「!」がついています。なお、この曲はサビ始まりです。私は

あまりサビ始まりの曲は好きではないのですが、この曲はむしろサビ始まりであるからこそ輝く曲だったように思えます。また最後のサビの音程が上がり、カタルシスを得られる曲構成になっています。







第7位 クーネル・エンゲイザー/電ǂ鯨

唄:琴葉葵・琴葉茜、ストピくん(コーラス)、根音ネネ(コーラス)、AquesTone2(コーラス)


 3年程前のボカロ曲です。中毒性とストーリー性があります。

 

 まず一番のAメロで舞台設定がかなり詳細に語られます。


世界凍った。

未曾有の寒さのその下で

道路も空も

青く白く

凍った。


あまり静かで

思わず息を

吸い込んだ人は

冷えた夜が肺に

砕けて散った。(初音ミク Wikiより)


 冒頭で詳細な情報を教えてくれる構成は、「林檎売りの泡沫少女」を思い出させます。それはともかく、終末世界の話だということがわかります。さらに曲を聴いていくと、それが現在進行形のものであり、曲に登場する二人の運命がいかなるものであるか、かなり序盤で気付かされます。

 

 そんな世界で、二人の姉妹(歌詞に直接姉妹とはありませんが、ボーカルが琴葉姉妹なので、ここでは姉妹とします)は、寒さをしのぎながら生きています。

「こたつでみかんを食べながら」という歌詞だけ切り取ったら日本の冬の一場面です。

 多分、二人は、自分たちが、自分たちの生活が近い将来どうなるかわかっていて、けれど互いに口にはせず過ごしているのだと思います。後半のあの事件(ネタバレは避けます)の後、最後のサビではそれぞれがバラバラに歌っていますが、姉の方は「次の季節」のことを考えています。一方妹の方は「事件」によってその次の季節に、少なくとも自分はいないことを知っているのです。PVのダンスは息ぴったりなのに、この微妙な心のすれ違いが見どころです。


 タイトルの「クーネル」は、コメント欄などでもあった通り、「食う」「寝る」のこと、「エンゲイザー」は、「and gazer」「engager」「engazer」などの説がありますが、二番のサビ前の歌詞「ご飯を食べる(略)→それから眠るの繰り返し→外を見ながら(略)」や最後のサビ(姉の方の歌詞)「食べて 寝て窓の外を君と見ながら(略)」などを考えると、「and gazer」がよいのかなと思います。見る(gaze)ではなく、見る「人」になっているのが気になりますが、凍っていく外の世界を見つめている二人という様子を考えれば、特段不自然ではありません。

 また、「食べる 寝る (何かを)見つめる 食べる 寝る 見つめる……」という日常のサイクルについては、私たちも無縁ではないかもしれません。少なくとも、コロナ禍の大学三年生時代の私はそういう生活をしていて、気が狂いそうになり、コロナではない病気に苦しんだ経験があります。無縁ではないのです



 ピックアップリリックは次の一節。


「ひぽ、ひぽ、せー、ぜ。」


 凍った世界で浮かべる「白くて浅い呼吸」の表現です。巧みな呼吸の表現に驚かされました。


 なお、この曲の最終盤では解読不能な歌詞が存在し、そちらの解釈が盛んです。しかし、ここではそれには触れませんでした。興味がある方はそちらも調べていただけるといいと思います。ただし、一番最後ははっきりと歌詞があり、すべての終わりを、「死」や「凍りつく」といった言葉を使わずに表現しています。ぜひ一度、この物語を楽しんでみてください

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