第10話 パーティーの後には。悪役令嬢と悪役令嬢の邂逅。



 そしてその日、家に帰ると、またもや父からの質問攻めに会いました。



「フィルミーナ嬢が殿下に婚約破棄されて、サラ様という男爵令嬢を婚約者に。と、殿下が宣言されましたの。

 私、これはチャンスだと思い、いっぱいお話ししてきましたわ。」



 と、父に告げました。もちろん嘘はありませんわ。



 すると父は、

「よくやったアメリーよ流石だ!我が家の未来は明るいぞー!ハハハハ!」



 と、いつもの高笑いして、何処かに行ってしまわれました。



 すると隣で聞いていた母から

「それでアメリーちゃん、何があったの?」

 と、改めて聞かれました。



 殿下が近日おそらく継承権剥奪、もしくは廃太子されること。フィルミーナ嬢への婚約破棄は、本当に宣言されたこと。また、間接的にフィルミーナ嬢を庇ったこと等を、母に共有しました。



「ですのでお母様。お願いがありますの。

 私、予定より早めにウィルと結婚したいわ。」


 と、母に告げました。


「まぁー!わかったわアメリーちゃん。お母様、頑張るわね。」

 と嬉しそうに同意し、応援してくれることとなった。





……………………………………





 月日は流れて翌月、学園にて。


 今までお話をしたことのないご令嬢が、話しかけて参りました。


 その方によると

「フィルミーナ様が個別にお話をしたいので、お時間頂けませんか?」

 とのことでした。


「かまいませんわよ。」

と、答え令嬢の後を付いていきました。


 するとそこには、少し疲れた見た目のフィルミーナ嬢が居りました。



「アメリー様、先日のパーティーでは、お助け頂き、ありがとうございました。色々と忙しくて、お礼が遅くなり、申し訳ございません。」


「いえ。そのようなこと仰らないでくださいませ。

 私が勝手に行ったことですわ。


 それにこちらこそ、フィルミーナ嬢のお考えをわかりながらも、自分のために、勝手な対応をしてしまいましたわ。


 心より謝罪致します。」



 そう。私はわかっておりました。

 あの程度の冤罪を、フィルミーナ嬢が追求されるはずがなく、跳ね返せない訳がないと。


 ですので今回の件は、完全に私が余計なことをしたのです。



 フィルミーナ嬢の瞳が、驚きで見開かれる。

「…アメリー様には敵いませんわ。バレてしまっていたのですね。」


「甘くみないでくださいませ。バレバレでしたわ。」


 と言うと、2人の間に笑みが溢れた。



 そう。フィルミーナ嬢はあの時、殿下を守るために、黙って追及を受けていたのです。


 あの場でフィルミーナ嬢が跳ね返せば、殿下は衆人環視の中で、無実の公爵令嬢を根拠なく責め立て、断罪したことになります。

 その結果、殿下は間違いなく、身分剥奪。最悪、命を失うことになっていたでしょう。陛下も子がいくら可愛くても、要らぬ反乱は避ける決意をされていたでしょう。



 それを防ぐため、フィルミーナ嬢は大きく抵抗しないことを、選ばれていたのです。



「ですが、アメリー様のお陰で助かったのは、紛れもない事実ですわ。何か御礼をさせて頂きたいのですが、何がよろしいかしら?」


「…でしたら、私のお友達になってくださいませ。公に仲良くすることは、残念ながら今後も出来ないと思いますが。

私は昔からフィルミーナ嬢と、お友達になりかったのですわ。」


「まぁ私もですわ。アメリー様とお友達になれるなんて、とても嬉しいですわ。サラ様にも感謝しなくてはなりませんね。」


 それを聞いて2人でまたクスクスと笑う。



「でも、それだと御礼になりませんわ。物でもなんでも、かまいませんので、何か御座いませんか?」


「でしたら、私、ウィル…婚約者のウィリアムとどうしても結婚したいのです。

 ですので、フィルミーナ様には、今年度の終わりまで殿下の婚約者の座を、明け渡さないで欲しいです。」




 そう。あの場で婚約破棄を宣言したものの、正式な宣言ではなかったため、殿下とフィルミーナ嬢は、まだ正式には婚約破棄はされていないのです。



 そのお願いはフィルミーナ嬢にとって、なかなか大変なお願いだと、わかっておりました。しかし、私も譲れない条件でしたので、恥を偲んでお願い致しました。



 しばらく考えた後、フィルミーナ嬢は

「簡単では御座いませんが、不可能ではありませんわ。その件、承りましたわ。」

 と、回答してくれた。


「まぁ。ありがとうございます。難しいことなのはわかっておりますが、受けて頂き、心より感謝致しますわ。」



「お任せください。フィルミーナが必ずやり遂げますわ。

でも、意外でしたわ。アメリー様は殿下の婚約者になりたいのかと、思っておりましたわ。」




「フフフ。なぜか皆様そのように思われているのですが、

 私はウィルと結婚したいのです。ウィルってとっても素敵でしょ?もちろんあげられませんけれど。


 それに、私は皇妃にはなりたくないのです。


 殿下には申し訳ないのですが、私には殿下のことが幼き頃から、皇妃という職務を背負ってやってくる、バケモノにしか見えないのですわ。」



「まぁ。それはとっても不敬ですわね。それに、まだ私の婚約者でしてよ?」



「あら?そうでしたわ。ごめんあそばせ?」



 そして、またお互いに笑い合った。

その日は短いながらも、とても楽しいひと時を過ごしました。




 翌日からはフィルミーナ嬢とは、また元通りの敵対陣営となり、交流は一切なくなりました。

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