第8話 2つ目の質問と3つ目の質問。


「では、2つ目の質問です。【ハサミで制服をボロボロにされた】と、おっしゃっておりましたが、

 サラ様はフィルミーナ嬢に制服を着たまま、ハサミを入れられて、その現場を証人の方に見られたのですか?」



「まぁなんて恐ろしい。」

「フィルミーナ様はそんなことまで。」


 などと、女生徒達から次々と悲鳴が上がった。



 周囲の騒めきに、気をよくしたサラ様は、

「いえ違うわ、私が脱いだ制服にハサミを入れられたのよ!この件に関しては、殿下が証人よ。」


 キャーと悲鳴が上がり、ザワザワと会場が騒がしくなる。


 それもそのはずですわ。

 このアカデミーでは、女生徒が制服を脱ぐようなカリキュラムは、一切ないのです。唯一あるのは、男子生徒の剣術授業のみです。



「まぁ。そうなのですね。制服を脱いだ状態で、ハサミを入れられたのですね。それを殿下と一緒に、目撃したと…。

 それは、大変怖い思いをなされたでしょうね。」



「ええそうよ。怖かったわ。」


 

 あたかも当時を思い出して、怯えたかのようにサラ様が仰られた。




 しかし、サラ様は、制服を脱いだ状態で、殿下と一緒に居られたことを、皆様の前で肯定してしまいました。これにより、会場はさらにヒソヒソと騒めき始めました。




 殿下はますます顔色を悪くしておられます。




「では、3つめの質問です。【ごろつき】?でしたでしょうか。フィルミーナ嬢はごろつきにサラ嬢を襲うようにけしかけた。とのことでしたが、その【ごろつき】とは、どのように知りあって、どのようにサラ様を襲うように、手配できるのでしょうか。私、そのような知り合いはおりませんの。貴方はご存知?」


と伯爵令息へ聞いてみる


「い、いえ、見当もつきません。」

と令息は答えた。


「ですよね。では、殿下、サラ様、お教え頂けますか?」



「そんなの下町に居るゴロツキに決まっているじゃない!下町をごろついてるから、ゴロツキなのよ!金をちらつかせて、襲わせたに決まってるわ!」



「まぁそうなのですね。今まで下町には行ったことがないので、存じ上げませんでしたわ。人を襲うことをご依頼出来る、親切な方がいらっしゃるのね。」


「…ですが、怖かったでしょう。ね?サラ様。

本当に暴漢に襲われていたら、皇子の妃にはなれませんものね。ご無事で何よりですわ。」



「何よ!襲われたって言ってるじゃない!だから、フィルミーナを断罪して、皇子の妃になるのよ!貴女全然わかってないのね!?」



 皇子妃となると、乙女であるのが必須条件ですが、自分から乙女ではない。もしくは、疑わしい。と、思われる発言をしてしまったサラ様。


 ここまでくると、笑いを堪えるのが大変ですわ。



「ええ。無知で申し訳ございませんわ。今日はサラ様のお陰で、色んなことを初めて知れました。心より感謝致しますわ。」



「ふん。精進しなさい。(新たな悪役令嬢が出てきたかと思ったけど、ただのバカで良かったわ)」



 と、鼻高々にサラ様は宣言されておりました。後半は早口で小声でしたが。



 しかし、サラ様の発言が聞こえていたのか、ウィルが青筋を立てて怒っております。



 ウィルの新たな一面が見れて、そんな場合ではありませんのに、私は不覚にもトキメいてしまいました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る