可愛い妹は俺のアレを抱き枕がわりにしてぐっすりと眠りたいそうです。
「う、う〜〜ん!!」
「きゃああっ!!」
わわわっ!? 急にお兄ちゃんが寝返りを打った!!
私、
いや、正確には子供のころからずっと片想いの拓也お兄ちゃんの広い胸にすっぽりと包まれてしまっていたんだ……。
文字通り、生きた柔らかい抱き枕として!?
ちょっ、ちょっと待って!? お兄ちゃんの腕が未祐の首筋に!! 私は抱き枕じゃないよぉ……。
「未祐ちゃん!! どうしたの、部屋の中から悲鳴が聞こえたけど」
「赤星!! どうした、何があったんだ、よし森田、一刻を争う事態かもしれない。部屋に踏み込むぞ。覚悟を決めろ!!」
あああっ!? アニメ同好会の二人が部屋の中に入ってきちゃうよおおお……。
お兄ちゃんから首筋にまわされた腕の力が意外に強くて簡単に振りほどくことが出来ない。
あ、足も絡んできたよぉ!! この体勢は!?
『未祐ちゃん、これはだいしゅき♡ホールドっていうんだ。ウチらみたいな現役女子高生なら知っていて損はないよ、彼ピに甘えてこんな体位でえっちを迫ったらイチコロだよぉ!! まあ妄想の中でしか千穂も経験がないけどね』
大親友の森田千穂ちゃんの書く夢小説。
【
の中で出てくる格好と一緒だ。確か千穂ちゃんが言っていたのは、だいしゅきホールドとか意味の分からない名称を、イラストの図解入りで未祐に教えてくれようとしたんだけど私が見るのを
未祐の身体を柔らかい抱き枕に見立てて、拓也お兄ちゃんからバックハグの体勢で背中越しに抱きすくめられているんだ……。
ええっ!? 未祐の腰の辺りに当るこの固い感触はいったい何なのぉ!!
千穂ちゃんの図解イラストの、だいしゅき♡ホールドで詳細に描かれた、こ、この部位といえば!?
私の脳裏にはアニメ同好会の部室で嬉しそうに解説をする千穂ちゃんの言葉が蘇ってくる。
『マグワイロボ!! ボ〇・キーンだよ、未祐ちゃん!!
ぷしゅう!!
あああっ!? 未祐の頭の中が限界だ、まるで水を一杯に入れたやかんが瞬時に沸騰するみたいに興奮と恥ずかしさでもう爆発しちゃいそうだよ……。ど、どうしよう!!
『う、う~ん、未祐……。お兄ちゃんの膝の上で甘えるんじゃない。こらっ!! くすぐったいって、そんなにぐりぐりとおしりを押し付けるなよ 』
ええっ!? 拓也お兄ちゃんの意識があるのぉ!! まさか分かってやっているとか。そ、それはそれですごく嬉しい気もするけど……。
お兄ちゃんの腕ってこんなに大きかったんだな。大人の男の人に抱きしめられるなんて未祐は初めての経験だ。なんだろう、こんな状況なのに心の底から落ちつくのは何故なのかな。
そうだ、やっぱり私、拓也お兄ちゃんのことが、泣きたいほど好きなんだ……。
あらためて再確認した。
まだお兄ちゃんと一緒のロフトベッドの上段、下段に分かれて寝ていたころに、私が無理を言って同じ布団に入らせてとお願いをした中学生のあの日、お兄ちゃんが恥ずかしそうに言ってくれた場面が鮮やかに蘇る。
*******
『あの日おんぶしてくれたみたいに未祐をぎゅっとして……』
ついに言ってしまった……。やっぱり恥ずかしい。
お兄ちゃんは少しの間、悩んでから私に向かってこう言った。
『おんぶみたいに後ろ向きでもいいのか……』
えっ、後ろ向きって何!?
『おんぶじゃお前の顔が見えないだろ……。そ、その前じゃないと頭もナデナデ出来ないし……』
えっ、後ろ向きって何!?
『おんぶじゃお前の顔が見えないだろ……。そ、その前じゃないと頭もナデナデ出来ないし……』
お兄ちゃんの言っている意味がやっと理解できた。
子供の頃から泣いている私を慰めてくれたお兄ちゃんのあたたかい手。
『泣くな、未祐、あんまり泣くと
そう言ってくしゃくしゃの笑顔で私の頭を撫でてくれた、優しい手のひら。
『お兄ちゃん、大好き……』
*******
そうだ、後ろ向きで恥ずかしがっている場合じゃないんだ未祐!!
ちゃんとお兄ちゃんと向き合わなきゃ駄目。
そうじゃないと絶対にあの人には勝てないんだ……。
お兄ちゃんの幼馴染、
勇気を出して、ちゃんと拓也お兄ちゃんの顔を真っすぐに見据えるんだ。
お兄ちゃんの腕の力が少し緩んだ!? いまが後ろを振り向く絶好のチャンス到来だ!!
くるっ!!
身をよじるようにお兄ちゃんの胸の中で自分の身体を一回転させた。
やっぱり固く目を瞑っている!! ほ、本当に寝ているの!?
「駄目だよ。未祐、固いおしりの骨が当たってお兄ちゃん、痛いから……」
私の固いおしりって!? 慌てて自由になった手で自分のお尻を掴んで確かめてみる。
ふにゅ、ふにゅ♡
自分で言うのもなんだけど、とっても柔らかい、お兄ちゃんには今朝も豊満なわがままボディーをからかわれたけど……。
現役女子高生のサイズとしてはけっこういい線いってると思うんだ。
ヒップは85 ウエストはジャスト60 そ、そしてバストは78
ふん、成長期だからいいんだもん。未祐はまだまだ育ちざかりなんだから……。
んっ、でもお兄ちゃん、もしかして固いおしりって!?
子供のころの未祐の夢でも見ているんじゃないのぉ……。
「未祐ちゃん、ごめんね!! 勝手にお兄ちゃんの部屋に入る千穂を許して……」
「赤星!! 非常時だからやむを得んので、無作法だとは思うが中に踏み込ませてもらうぞ。広瀬沙織、かわいい後輩の非常時に何もしないほうが名折れだからな……」
言うや否や二人が部屋になだれ込んできた。手にはあのわんこの着ぐるみを抱えて……。
「きゃああああっ!? ち、違うんです、二人とも!! これは事故なの……。拓也お兄ちゃんが寝ぼけて私を抱き枕代わりにしているだけなんです!!」
部屋の中に張りつめた空気が漂ってくる。
こ、これは言い逃れが出来ないか……!?
「み、未祐ちゃん、なんて美味しい場面なの!! 【
「赤星、兄妹で仲良きことは美しきかな、だぞ!! 恥ずかしがることはない、良くやった!!」
ええっ!? 想像していたのと真逆の反応、やっぱりお嬢様子女子高の人たちって常識の斜め上をいっているんだ。
「……で、でも拓也お兄ちゃんがこんな状態で、しかも真っ裸だし」
「赤星、案ずるな!! 兄上にはこれを飲ませろ、液体カプセルなので水は要らない、口に含ませるといい」
「広瀬部長、い、いったいこの赤いカプセルには何が入っているんですか?」
「うむ、我が広瀬家に代々伝わる陰陽氏兼薬剤師が処方した気付けの薬だ。他の効用もあって滋養豊富で一粒飲めば三千メートルを一気に走れるぞ。はっはっはっは!! 凄いだろう」
……違う意味で凄そうだが、広瀬部長の勧めてくれた薬なら信用できるはずだ。
「未祐ちゃんがお兄ちゃんに薬を飲ませている間に、私たちは着ぐるみの用意をしておくから。うーんロフトベッドだと高さがあって、着ぐるみを上段まで持ち上げられないから床にマットを敷いておくね……」
千穂ちゃんがこれまた持参した大き目のヨガマットを床に広げた。大人二人が寝そべっても充分に広いサイズ感だな。
私はお兄ちゃんをそっとマットの上に横たえ、乾いた唇を指で優しくこじ開けてカプセルを含ませる。むちゃむちゃと口が動いた。ほっ、無事に飲んでくれたみたいだ。
「拓也お兄ちゃん、もう少し待っていてね、。ロフトベッドの上で今夜、未祐と続きをしよ♡」
そばにいる二人には聞こえないようにお兄ちゃんの耳元で自分の気持ちをささやきかけた。
……遂に言ってしまった。もう後には戻れない。
「……赤星、お前に謝らなければならないことがある。この広瀬、一生の不覚だ!!
兄上に服用させた薬を取り違えてしまった。気付けの薬のカプセルは青色だった」
「えっ!? いま未祐がお兄ちゃんに飲ませたカプセルの色は!!」
「赤色のカプセルは精力絶倫になる薬だ……。本当にすまん!!」
ええええっ!? お兄ちゃんに飲ませたのは精力剤なのぉ……。
いったいお兄ちゃんの身体はどうなってしまうの!?
次回に続く。
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