Ryugagotoku

「ヤメロ!」


 と滔々と自慢を続けるインド人に叫ぶ彼は、家族はコソボ系のイギリス人、静かにそれを笑っているのはわたしと日本アニメ・マンガ好きのスペイン人、物理専攻の寡黙な彼は頑なに首を横に振るか縦に振るかして意志をつたえていたのを、メキシコ人と一緒に料理の話なんかし出すと急に跳ねるようなあのスペイン語が口から流れ出ていて、イタリア語選択のブルガリア人はその語彙をなんとなく理解して。


一方交換留学生のフランス人たちはごめんね今日は疲れたのと言ってフランス語で会話しているのを、例のインド人は I can understand, I can understand, oui oui, と無限にフランス語わかるぞアピールを繰り返し、高校をイギリスで出ているドイツ人もやはりフランス語がわかるので、フイとそちらの会話に混ざったりもする。ところでなんでヤメロなの? と尋ねるとRyugagotokuで主人公がいつも言ってる、というのを、gotoku=如くのtoにアクセントが置かれているせいでうまく伝わらずに聞き返す。如く、ね。少しずつ言語の切れ端を食べあっている感覚になった。

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