episode:09 真相です!

 いつの間にか自警団の皆さんがゴードルーさんを囲んでいました。魔法を詠唱する隙を与えない様に、三方向から一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくを凝視しています。これではどうやっても逃げる事は出来ないでしょう。

 窓から入ってくる心地良いそよ風と対照的に、そこだけ空気がよどんでいる感じでした。


 観念するゴードルーさんを横目に見ながらイーサムさんが言葉を続けます。


「ニコラッドが突然苦しみだし、死に至ったのを見て……私が命を狙われたのだと判りました。そのとき、ダンジョンでの事故も仕組まれた可能性があると直感したのです」

「それはつまり、命を狙われる原因にも気が付いたという事ですね?」

「はい。以前ニコラッドが『ゴードルーがフォウに惚れてるみたいだぞ』と言っていたのですが……流石にふざけているだけだと思っていて。それでも毒リンゴを持ってきたのがゴードルーとなると、疑う余地もありませんでした」

 ……ふむふむ。そこまでの流れは理解できます。惚れた女性の結婚相手を殺して奪おうというゲスな考えですね。ですが、イーサムがとった行動には怒りすら覚えます。そんな状況で何故婚約者を放って隠れるのでしょうか。


「そして、丁度そこにサントスさんがいらした……と。」

「はい。現状をひと目見て全てを察しました。俺もニコラッドから聞いていたので……」

「そこからが一番の疑問なのですが、イーサムさんに隠れる様に指示した理由はなんですの?」


 ――そこです、一番肝心な部分。それが今回の事件をややこしくした原因です。


「犯人が解っているとは言っても、それは俺とイーサムだけです。もし自警団に通報したら、当然、参考人として拘束されてしまいます」

 それを聞いたマル爺が、突き放した様な呆れ口調で説明を付け足しました。

「それは仕方ないでしょうな。事実関係を調べる上でも、当事者には詳しく状況を聞かなければならないので」

 ……マル爺もサントスの勝手な行動にイライラしていたのかもしれません。

「あまりサントスを責めないでください。もし私が自警団に拘束されていたら、ゴードルーがフォウに対してどんな行動に出るかわからなかったのです」


 この一言で“合点がいった”のでしょう。目をつむって話を聞いていた先生がゆっくりをまぶたを上げながら、彼らの行動原理を皆にわかる様に補足しました。 

「つまり、イーサムさんが逃げたという事にすることで、ゴードルーさんを牽制したという事ですわね」

「そうです。どこから監視しているかわからないという状況を作る事で、ゴードルーがフォウに手出し出来ない様にしたのです」

 なるほど、確かにそれは効果的ですね。そして実際に監視していたのはサントスだった、と。

「僕はてっきりナンパ師だとばかり思っていましたよ。看護婦さんを見つけるとすぐ声かけていたし」

「ああ、あれは……。上手くイーサムとフォウが合流出来た時の事を考えて、病院からの逃走ルートを調べるために……」


「サントスさんが仲間を心配する気持ち。それが今回の動機なのでしょう」

 照れくさそうに少しだけ口角があがり、視線を落とすサントス。意外でした、僕は、もっと不遜なタイプだと思っていたのですが。いいヤツですね……色眼鏡で見ていた事を反省せねば……。


「くそっ……。てめぇら全員で俺を騙していたのか」

 開き直ったのでしょうか、ゴードルーの態度が変わりました。

「あらあら、ご自身の身から出た錆びではありませんこと?」

「俺は、俺は何も知らない。毒リンゴなんて、買った店の責任だろ。そう、そうだよ、店で毒入りリンゴを売っていたんだ!」

 支離滅裂ですね。そんな虚言で証言を裏返す事は出来ないでしょう。

「殺害に使われた毒についてですが、ゴードルーさん、あなたが所属する薬師ギルドで扱っている種類でしたわ。ルドウィンが確認に走ってくれましたの」

 昨晩頼んでいたのはそれでしたか。先生はあの時点でゴードルーに疑いを持っていたのですね。感服です。素敵すぎます! LOVE!


「そしてあなたが持ってきたリンゴ。こちらは自警団の皆さんが総出で調べてくれましたわ。お見舞いに訪れる前日に購入されていますわね。それも、わざわざ街の南にある市場で」

「離れた場所で買えば足が付かないとでも思ったのでしょうな。甘く見られたものです」

「俺じゃない……ハメられたんだ!」

 もし予定通りにイーサムさんを毒殺出来ていたとしても、リンゴや毒の種類から犯人は割れます。それでも多分、今と同じように戯言を並べたのでしょうね。


「俺は、俺は被害者なんだ……。何故俺が……くそっ」

 突然の事でした。うな垂れ、座ったままの状態から前転をし、自警団の囲みをすり抜けたゴードルー。転がりながらポケットから何かを取り出し、目の前にいる先生に飛び掛かりました。

「先生!」

 想定外の行動です、流石にマル爺達も反応出来ていません。奴が手に持っている物が何かはわかりませんが、それでも危険な臭いを感じ取りました。

 しかし、流石は先生です。襲い掛かってくる事まで想定していたのかはわかりませんが、咄嗟に腰を落としてゴードルーの動きに反応していました。


 ――ですが、先生ごめんなさい。体が勝手に動いてしまったのです。


 僕は、ゴードルーの鳩尾みぞおちに寸分の狂いもなく鉄肘を打ち込んでいました。これを喰らうと瞬間的に呼吸が出来なくなり、目の前が青白くなって意識を失います。何故か身体が覚えていた、間合いと呼吸を極めた一撃。中国拳法とか言う技のひとつらしいのですが、これは僕の記憶に中にはないのです。


 ……どうやら、






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