第4話 インタビュー

 記者さんとカメラマンともう一人来ました。

 取材に来た記者さんがオフィスで僕にインタビューして実際には終わります。


 流される時間は数分ですが、かなりの間オフィスと私のインタビューの撮影時間をとりました。


「どうでしょう…男性の育児休暇というのは…」

「私も初めての育児なので…でも普段の妻の大変さというかそうゆうものもわかりますし、娘と時間をとれるのもうれしいですよね」


「どのように過ごされたのですか…」

「妻が働いているのでその間、娘をみていましたし、弊社の製品のレポートもありますし。あと休みを頂いた感じですので出かけていました」


「家族は、奥様はどんな感想をもたれましたか…」

「いい制度だと思うけれど、旦那だけに預けるのはちょっと不安とも言ってましたね」


「会社や仕事仲間の対応は…」

「協力的でした、ありがとうございました」

 仕事はたまってましたがね…とは言えません。


「広まると思いますか…」

「働く女性が普通な時代ですし、育児は家族でするものですからね、そういった意味では広まるし広まるだろうと思います」


「広まるにはどうすれば…」


 新聞も雑誌もそしてこの放送局もそうですが、記者さんが引き出したい言葉を言ってくれるまで取材というのは続くように感じました。

 みなさん当然狙いがありますからね。

 こういった取材をしたい、こういったことを世間に知ってもらいたい…。


「弊社も今回新たな規定ができました。そういった環境というか会社ぐるみで取り組まないとこの男性の育児休暇って難しいとは思いますね」


 これを言うまでいろいろと質問を変えながら訊かれました。

 

「企業が協力しないと難しい制度である」と言って欲しかったのでしょう。これがどの媒体においても狙いだったのだな…とだんだん気づいてきました。


 まだテレビの○○さんのころは慣れていなかったので…取材時間が長くなりました。



「長かったね…」

「同じようなこと何回も訊かれてたね…」

「私も映るかな…」

「さあ、もとの状態にしよう」

「取材終わったから総務に連絡して、あと全社掲示板にも内線OKって」


 バタバタと元の状態にオフィスが戻ります。

 書類を出し、カーテンを開け、パソコンの壁紙は深田恭子ちゃんに戻しマウスパッドも「クリクリしてね…」に入れ替えます。

 松嶋菜々子さんの写真がやたらと大きく、数字が小さい卓上カレンダーもいつもの位置に。


 でも家族写真はそのままにしておきました。

 せっかくですからね。


 放送日。


 私は奥さんの背中にかくれてチラチラと画面を見ました。

 これってすごく恥ずかしいです。

 本当に恥ずかしかったです。

「早く放送終われ…」

 と小さくなって祈ってました。


    了

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2番を狙え…! @J2130

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