「おめでとう」禁言令
嵯峨嶋 掌
悲しいことが多すぎる(´;ω;`)ウッ…
王様の名は……記録には残っていません。そもそも名というものは、記号や数値と同じで、他者と区別するだけのものにすぎません。あまり名にとらわれすぎると物事の本質から遠ざかるものなのでしょう。ですから、たんに〈王様〉と呼ぶことにしておきましょう。
王様は悲しみに打ちひしがれておりました。
……二人の息子と一人娘、そして妻である王妃を同時に亡くしてしまったのでした。その国を襲った流行り病のせいでした。
一方で病に倒れてもなんとか
『王様のご指示で、王宮の医師、薬師、看護師を総動員して治療看護してくださったおかげだ……王様ばんざい、王様、ありがとうございます』
ところが、最愛の家族を亡くした王様は、そんなことを叫ばれてもちっとも嬉しくはありません。それどころか、
「なんという不公平だ!」
と、内心、そんな思いでいっぱいでした。
同じ病を
悲しみと怒りとは
「ふん、こんなときに、
それが偽わざる王様の心境そのものでした。もっとも、何喰わぬ顔で、「おめでとう」という賛辞を受け流す道もありました。
けれども。
やはり、このとき、王様は
よしっ……と、王様は決断しました。
「……このさい、この国から、“おめでとう”の言葉を、無くしてしまおう、
そうと決めれば、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます