第27話 召喚魔法を披露
「新しく町に来た二人もいるから改めて説明させてもらおう。ゴブリンは魔物の中では単体での脅威度は低いとされる魔物だ」
町から出て道々ブレブがゴブリンについて教えてくれた。確認の意味を込めてか全員に聞こえるような声だった。
「だが、そもそもゴブリンは単独で動くことがない。最低でも三匹一組で行動してると思った方がいい。勿論更に多くを率いて動く場合もある」
ブレブの説明で最初に出くわしたゴブリンも群れで行動していることを思い出した。
「特に今回は変異種のロードが生まれた可能性がある。そうなるとゴブリンはより組織だって動くから一切の油断は禁物だ。目的地付近では慎重に動く必要があるだろう」
「わかりました肝に銘じておきます」
「気配を読むのは得意にゃ。任せて欲しいにゃ」
僕が答えフェレスもやる気を見せた。フェレスは戦闘力も高いから頼りになる。
「こっちは十人いるけどまとめて動くのは得策じゃないね」
ユニーが意見した。ゴブリンは悪賢いタイプでもある。同時に動いて手痛いダメージを受けるよりは分散してリスク回避した方がいいのだろう。
「そうだな……一つ確認だがマークは一体どんな物が召喚できる?」
「僕は標識を召喚出来ます」
「何だそりゃ。聞いたこともないますます怪しいぜ」
アグレイが腕を組み目を眇めた。やはり僕のことを疑っているのだろうか。
だけど僕たちが隣国から来たとは言え妙にしつこいようにも思える。疑い方一つとっても僕たちがやったと決めつけているようだ。
「どんな魔法か一度見ておきたいな。ゴブリン戦前に適当な獣を見つけるか」
森に入ったところでブレブがキョロキョロを周囲を確認した。
僕の力は育った里でも知られてなかった。召喚魔法そのものが珍しいこの国なら確認したいと言うのもわかる。
「あのマイルドボアで見せてもらっていいかな? あれならそのまま食料として保存できる」
ブレブが一頭の
これは僕の国にもいた種類だからわかる。ただ結構好戦的で自らを強化して突撃してくるから油断ならない。
獣と言えど魔力があり中には強化以外にも人とは違う形で魔力を扱う種も存在する。その中でも特に強力な獣は魔獣と呼ばれるわけだ。
「わかりました」
返事し敢えて僕はマイルドボアの正面に移動した。
「おい! 正面に立つと危ないぞ!」
「ちょ、まさかマイルドボアのこと知らないとか!?」
ナックルとユニーの慌てる声が聞こえてきた。それとほぼ同時ぐらいに僕に気がついたマイルドボアが地面を掻き鼻息を荒くさせ突進してきた。
「ブフォオオォオォオォオォオォオオオオ!」
「標識召喚・一時停止!」
召喚魔法を発動させると目の前に標識が出現。途端にマイルドボアの動きがピタッと止まった。
「あの勢いのマイルドボアがすぐに止まっただと?」
キリンの声が聞こえてきた。かなり驚いている。まるで凍てついたようにピタリと止まったからだろう。
一時停止の標識は問答無用で相手の動きを止めることが出来るのが強みだ。だがこれだけではマイルドボアを倒すことは出来ない。
「標識召喚・落石注意!」
新たにもう一つ標識を召喚した。今は二つ同時に標識を召喚出来る。
マイルドボアの頭上から大量の石が落ちてきてマイルドボアに直撃する。
「ブフォオォォオォオオオ!」
マイルドボアの悲鳴が響き渡り次第に声が弱まった。標識が消えると降り注いだ岩も消え後にはボアの亡骸だけが残った。
これで狩りは成功したが、標識召喚がどんなものかわかってくれただろうか?
そう思いブレブや他の仲間を見てみると唖然とした顔で僕を見ていた――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます