第26話 待ち合わせ場所に向かう二人
昨晩は酒場で食事を取り親睦を深めたあとで宿を取った。
アグレイとだけはどうしても上手くいかなかったけど、それは仕方のないことだと割り切るしか無い。
むしろアグレイ以外とは結構打ち解けたのだからそれで良しと見るべきだろう。
アグレイの言うように僕たちはよそ者だ。そういう目で見られることも覚悟していた筈だ。
「おはようにゃ~」
「うん。おはようフェレス」
部屋を出ると瞼を擦りながらフェレスが出てきた。僕はアルコールがあまり得意ではないから昨晩は呑まなかったけどフェレスは皆に薦められてそれなりの量を呑んでいた。
だからまだ眠たいのかもしれない。
「結構呑んでたけど大丈夫?」
「にゃ~問題ないにゃ~顔を洗ってさっぱりすれば目も覚めるにゃ~」
「それなら朝食前にお風呂に行っておこうか」
この宿はブレブから教えてもらった。良心的な価格な上、大浴場があって食事もつく。
街に根付いた冒険者はこういう情報に強い。僕たちにとっては強い味方だ。
僕とフェレスは男女でわかれて浴場に向かった。体を洗いさっぱりした後で出るとフェレスも上がった後だった。
「すごくさっぱりしたにゃ」
「そ、そう。なら良かった」
お風呂上がりのフェレスからはとてもいい匂いがした。おかげで朝からちょっとドキドキしてしまう。
「ネロ顔が赤いにゃ? 大丈夫にゃ?」
フェレスが僕の顔を覗き込むようにして聞いてきた。正直言って可愛い。何だか気恥ずかしくて目を合わせてられない。
「だ、大丈夫ちょっと上せただけだし朝食を食べれば問題ないよ」
「そうにゃ? 今日はゴブリン討伐が待ってるにゃ。体調管理は大事にゃ」
はは、結局僕が心配されてしまったよ。フェレスはお風呂に入ってすっかり元気みたいだ。
朝食もモリモリ食べていたよ。僕もしっかりを栄養を補給。その後フェレスと今日の仕事について話した。
「マークの召喚魔法は絶対に鍵になると思うにゃ。あたしがサポートするからマークは魔法に集中するにゃ!」
フェレスが耳をピコピコさせながら頼りがいのあるセリフを言ってくれた。
標識召喚は召喚魔法の中でもかなり変わった効果が見込める。トリッキーな面もあるけどいくらでも応用が効くという面で自分自身でも伸び代を感じている。
今回のゴブリン討伐はある意味いい機会かもしれない。
宿の食堂には柱時計がありそれで時間を確認し待ち合わせ場所に向かった。ギルドの前で集合という話になっている。
「やぁ早いね二人共」
待ち合わせ場所にはすでにブレブの姿があった。他にはキリンが瞑目しながら立っている。
「一応時間に合わせて来たつもりでしたが遅れずにすんで良かったです」
「はは。むしろちょっと遅れるぐらいでも良かったかもな。時間ぴったりに揃うことの方が稀なんだよ」
そういうものなんだ。フェレスを見てみるけど何か納得したように頷いていた。
「やっぱりそういうところはどこも一緒にゃ。あたしは時間通りに行くこと多いけどにゃ、これまでも約束の時間に揃わないことが多かったにゃ」
どうやら僕よりも冒険者としては先輩のフェレスにも経験があるらしい。
だからってこれから遅れてこようとは思わないけど、そういうものだとは認識しておこう。
「おはようございます。今日は宜しくお願いします!」
「いよいよゴブリン討伐ですね。緊張しますが頑張ります」
僕たちがついてまもなく姿を見せたのはアニンとエベだった。二人はしっかり時間に合わせて来てくれた。
「ふぁ~まったく昨日は呑みすぎちまったぜ」
「全く皆早いわね」
教会の鐘がなり終わったころナックルとユニーが姿を見せた。約束の時間は教会の鐘がなる頃だったのでギリギリと言えばギリギリかもしれない。
「皆おそろいね。時間ぴったりってことかな」
「いや、普通に遅れてるだろう」
次に姿を見せたのはマジュだ。鐘がなり終わってからしばらく経ってからの登場だった。
「ちゃんと鐘がなったのを確認してから準備したのに」
「いや、それだと普通に送れると思うぞ」
唇を尖らせて語るマジュにブレブの突っ込みが入った。鐘がなってからだと確かに遅いね……。
「後はアグレイだけか」
ブレブが集合した面々を確認しながら言った。確かに残ったのはアグレイだけだ。
「全く昨日面倒なこと言ってた割に遅いな」
ナックルも呆れたように呟く。面倒というのは僕たちが疑われた事についてだろう。
「本当遅刻なんてなってないわね」
「あんたが言う?」
不機嫌そうに口にするマジュを認めながらユニーが目を細めた。
「――待たせたな」
それから少ししてアグレイが姿を見せた。セリフからして遅刻したという認識はありそうだ。
「遅かったな」
「昨晩のうちに済ませられなかった準備があってな。朝からそのために出てたら遅くなった」
「……そうか。まぁ準備は大事だからな」
アグレイから説明を聞き仕方ないなといった顔でブレブが頷いた。そこまで怒っている様子が無いのは冒険者はそういうものだと認識してるからかもしれない。
「とは言え予定より遅れてしまったからすぐに出るとしよう」
そしてブレブの号令が合図となり僕たちは町を出た。いよいよゴブリン討伐が始まる――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます