VI.魔族って、ラノベほど強くなかったりするのかな?

 三人は森の中で迷子になっていた。逢兎が適当に、高速で移動していて、イリもルナも周りが見えていなかったのだ。つまり、どっちの方向から来たのか、誰も分からないのだ。

 それでも、三人とも森の中を適当に歩き回っている。イリが見覚えのある道に出ると信じて。


「今日も野宿? だったらご飯集めよ? そこに川あるし、魚とかどう?」

「サカナ? なんですかそれ?」

「え、ルナ姉ちゃんお魚知らないの⁉ 美味しいんだよ! みんなで食べようよ! アイト兄ちゃん採ってきて!」


 逢兎は反論することなく川に入った。しかし、全然掴めない。


「掴むの怠いし、あみでとっ捕まえちゃっていいかな? 良いよね。どうせ食べればバレないだろうし」


 逢兎は網を作って、見つけた魚を次々と小袋に入れていった。日が傾く頃には既に十数匹捕まえていた。


「いっぱい採ったよ? 余るくらいあると思うんだけど、何匹食べる? てか、何食べたい? 素焼きは勿体と思うけど?」


 逢兎はそう言いながら、河原で火を起こしていた二人の元に駆け寄った。


「えっと、1匹でも、、、」

「あるだけ食べる!」

「じゃあ適当に焼くから好きなだけ食べろ。ルナも、遠慮しなくていいからな」


 そう言って、逢兎は生きの良い魚を小袋から取り出し、串を作り出しては刺していった。

そしてそのまま焚火で焼いていく。ついでに茸と筍にも火を通している。


「茸食うか? 筍にする? 茸筍論争起こしちゃう? だったら俺は筍だよ? キノコタケノコ論争ならキノコに着くかもしれないけど、これは茸筍論争だから筍なんだよ。別にタケノコは悪くないんだけど、食べにくいじゃん? 茸は味が好きじゃないんだよ? こっちの茸は、向こうの茸より美味しいんだけどね。それでも苦手だよ?」


 イリは考えるのを辞めている。ルナは考え過ぎて可笑しくなってしまっている。


「え~と、、茸がタケノコで筍がキノコでタケノコの筍はキノコの茸だからタケノコの茸はキノコの筍になるの?」


 可笑しくなりすぎて、謎の呪文のようになってしまった。

 逢兎の目が点になって、イリは食べようとしていた魚を持つ手が止まり、開いた口が塞がらないまま、数秒間、沈黙に包まれた。その間も、ルナの頭は空回りを続けている。


「つまり、筍はキノコだけどキノコは筍じゃなくて茸がタケノコでタケノコは茸じゃないんでしょ。だから、アイトさんが嫌いなのはタケノコになれない茸でいいの? あれ? それだと茸は筍だから筍は大丈夫だから茸が良くてタケノコが駄目?」


 新手の拷問の様な一発芸だ。聞いてる側も、言ってる側も、何を言っているのか誰も分からないのだ。つまり、みんな混乱したまま、寝てしまった。寝たと言うよりかは、意識が飛んでしまった。


 翌朝、森は火事になっていることなく、焚火は消えていた。


「二人ともいつまで寝てる心算つもりなんだ? 置いて行っちゃうよ? 道分かんないけど」

「んぅん、起きたよ」

「ふあぁ~、あ、すみません。何もしないで下さい。許して下さい」


 イリもルナも、逢兎に起こされるように起きた。


「何もしないでって、どうしたの? 怖い夢でも見た? それとも俺、変なことしちゃった? してたら謝るよ? いや、俺が悪くないなら謝らないけど。てか、何もしてないし」


 逢兎は全力で否定する。寝ぼけたルナとイリの顔を交互に見ながら否定する。


「えっと、欠伸あくびはするなと言われていたのですが...、宜しいのでしょうか?」

「誰? 生理現象否定するやつとか人としてどうかと思うよ! てか、二人とも人じゃないよね? じゃあ、人あらざるものじゃないよ?かな? 知らないけどそんなこと言うやつは俺が締めてくるよ」

「えっと、これを言われたのは、昨日のあの男の人かたです」

「よし、イリ!案内よろしく!」

「昨日の草原までの道が分からないのに、どうやって案内すればいいんですか⁉」

「じゃあ、ルナ!」

「申し訳ありません。奴隷紋が消えてしまったので、あの男の人かたの場所は分からないんです。お力添えできず、すみません」


 ルナは深々と頭を下げて謝る。


「そんなことしなくてもいいよ」

「ですが……」

「いいの!」


 イリは力ずくでルナの頭を上げた。逢兎も、全く気にしていないといった表情だ。


「ルナもイリみたいに好き勝手してくれていいよ。二人でいたら場所分かるし」

「わ、分かりました」


 三人は適当に朝食を済ませて、森の中を彷徨っている。しかし、出口がなかなか見つからない。




「おい、人間のにおいがしねぇか?」

森人エルフの娘もいるぞ」

「もう一人、女のガキの匂いもしますね」

「じゃあ、全員まとめて、」

「「「喰ってやるか」」」




 逢兎達は森の中を歩いていると三人の魔族と出くわした。


「魔族⁈ 何でこんな所に…」

「地底世界から出て来るなんて…」


 イリとルナは怯え越しになっている。


「美味そうだな」

「俺はガキを貰うぞ」

「じゃあ俺は森人エルフな」

「何言ってんだよ。殺った早い者勝ちだよ」


 そう言いながら、一人の魔族がルナに目掛けて飛び出した。


「『魔力刃スラッシュ』! 俺の仲間に手出すなよ」


 飛び出してきた魔族の腕が斬り飛ばされた。

 逢兎の杖には魔力まりょくでできた刃がついていた。その刃で魔族の腕を斬り飛ばしていた。




ジナル  魔族  ???


称号:


スキル:魔力まりき 貫通属性 短気


魔法:心動搾取ハートキャッチ 魔力毒キエルン


耐性:毒無効



キーク  魔族  ???


称号:


スキル:魔力まりき 貫通属性 短気


魔法:心動搾取ハートキャッチ 魔力毒キエルン


耐性:毒無効



マルオ  魔族  (解析不能)


称号:(解析不能)


スキル:魔力まりき 貫通属性 短気 (解析不能)


魔法:心動搾取ハートキャッチ (解析不能)


耐性:毒無効 (解析不能)



貫通属性:自身の攻撃が相手を貫く確率が大幅に上昇する。身体強化(付属効果)。




 逢兎はキークを蹴り飛ばしながら魔族全員を鑑定した。しかし、マルオのステータスが一部見えない。


「魔法使いって腕、斬りおとせるんだね。これだったら普通に戦っても大丈夫そうだね」

「いや、普通は斬れないです。普通の戦いを、普通じゃ無くさないで下さい」


 イリは間髪入れずに否定した。


「あのガキ普通じゃねえ」

「いや、普通を知らない馬鹿でしょう」

「あいつは、俺がなぶり殺してくれ……」


 逢兎はキークの首をねた。ジナルとマルオは何も言えずに息を呑んだ。


「あれ? 引っ掛かるモノだと思ったんだけど、意外とスパーンと行くんだね。それとも俺が『俊足』使ったからかな? 早すぎた?」


 誰も何も言わない。


「返事が無いなら普通なのかな? まあ、普通ということにして、『俊足』『魔法刃スラッシュ』」

「危な…」


 マルオはジナルを蹴って、二人とも逢兎の攻撃をギリギリで避けた。


「『心動搾取ハートキャッチ』! 散れ!」

「『絶壁シールド』 散るのはそっちだ」


 ジナルの手は、逢兎に当たるよりも手前で止められた。ジナルは即座に距離を取った。


「理不尽だよな。陰キャで友達もいなかった俺が、今や仲間のために戦ってるんだぞ。それも、ラノベ顔負けの悪魔とな」

「何を訳の分からない事を」

「彼は、今此処で死ぬのです。好きなだけ言いたい事を言わせておきましょう」

「ん? 死ぬのはお前らだよ? 間違えちゃだめだよ」


 ジナルとマルオはあざ笑っている。

 逢兎は二人を睨みつけている。


「アイト兄ちゃん無理しないでよ」

「手助けしましょうか?」


 イリとルナは逢兎の心配をしている。


「大丈夫。俺強いと思うから。二人ともそこにいて。動いたら巻き込んじゃうかもしれないからね」

「威勢がいいですね」

「貴様じゃ俺には勝てないぞ」

「そうか? 本当に俺に勝てるか? 『魔力刃スラッシュ』『俊足』 足掻くだけ無駄だ」


 逢兎はジナルを斬りにした。残りはマルオだけだ。


「私は他の二人とは違いますよ」

「じゃあ、こんな簡単に死なないでくれよ?」

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