第5話女パート:親友の話


「雫、ウェディングドレスはもう決めたの?」


「いやぁ、それが結構予算が厳しくてね」



 カフェテラスで雫は親友と会っていた。

 結婚する事を宣言した二人は着々と式を挙げる為に準備を始めている。


 しかし予算との戦いになっている二人に資金不足は大きな枷となっていた。



「まあ、私の時は親が結構出してくれたからね、うちの旦那稼ぎそれ程じゃなかったしほとんど貯金なんて無かったから予定よりずっと遅れて式を挙げる羽目になったもんね」


 親友はそう言ってカプチーノのカップを傾ける。


「そうかぁ、親から支援してもらったんだ…… うちはそんな余裕ないしなぁ」


 雫はホットココアのカップを両の手に持ちながらその表面を見ている。



「とは言え、人生の晴れ舞台だから妥協はしたくないんでしょ?」


「うん、でもウェディングドレスとお色直しで、白無垢はあきらめようかと思ってるの」


 そう言う雫の表情はやや落ち込んでいた。



「だったら着れば良いじゃないの! 式場ではそう言ったコースもあるでしょう?」



 親友はスマホを操作しながらとあるサイトを掲示する。

 それは結婚式場のプランなどを表示するものだった。



「レンタルだけど、こう言った感じで全部込々でこの価格よ?」


「うん、そうなんだけどさぁ。それでもやっぱり一緒になっての後の事もあるしね……」


 それでもやはり雫は現実を見ている様だった。



「まったく、良いこと雫。式は一生に一度の晴れ舞台よ? 出し惜しみしてどうする、悩んでいてもそれは将来後悔する事になるから清水の舞台から飛び降りるつもりで決めちゃいなさいよ!」



 親友はいつも雫を後ろから押してくれる。

 それは雫をよく理解しているからだ。

 なので既に既婚者である親友はびっとスプーンを雫に向けて言いう。



「後悔はやっちゃってからしなさい。やらないで後悔するよりはずっと良いわよ?」



 その言葉に雫はハッと顔を上げる。

 実は青柳清太に告白をしたのも雫からだった。


 彼女はその時を思い出し笑う。


「うん、そうだね。どうせ後悔するならやっちゃってから後悔すればいい。今度は私一人で悩む必要はないもんね。今後はずっと二人で悩めばいいんだもんね……」


 幸せそうにそう言う雫に親友は「ご馳走さまね」と言って笑う。




 こうして青柳清太に将来また一つ悩みの種が増えるのであった。

 しかしそれは決していやな悩みではないだろう、きっと。  


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