第8話

 俺はまず、都を作ることを命令した。

 孫権は、寿春と建業に作ったな。だが俺は、曲阿を都と定めだ。

 降将に防衛の強化を命じる。まあ、練習だな。それを手柄として、出世させるつもりだ。


 孫策を追った軍は、荊州の南四郡を攻め落とした。

 襄陽は取らない。劉表には、北からの防衛の役目を担って貰う。同盟でもいい。

 人材が豊富だと、防備も任せられるな。

 そんな時だった。


「何、仕官だと? 複数の推薦状を持って?」


「はっ、とにかく優秀な青年です。ぜひ徳王様の傍にと」


 誰だ? 人材には余裕があるが、会ってみるか。


「名を申せ」


「諸葛瑾と申します」


「ごふ……採用だ。陸遜と共に俺の背中から学べ」――キラン


 おいおい……。すげぇの来たな……。

 陸遜と諸葛瑾は、実に優秀だ。

 虞翻と共に、呉の名臣7人か~。



「徳王様! 兵も兵糧も十分です! 河北に進出すべきです!」


 甘寧からだった。まだ、下級役人だけど、実績は挙げている。


「俺は、献帝に背く気はないぞ。河北の情報も得ている。許昌を突けば、呂布と戦っている曹操を倒すこともできるが、戦端が広がり過ぎる」


 焦ったら、終わりだ。俺は、王道を行く。その定めだ。

 今倒すのなら、呂布かな~。まあ、曹操に倒させる予定だ。

 そんな時に、献帝から使者が来る。


『また、出兵か? 遠征になりそうだな』


 膝をついて、礼を尽くす。


「献帝より、王の印綬を贈呈されるとのことだ。これより貴殿は、江南江東の王として君臨するがよい。そして、献帝に税を納める様に」


「ふっ……」――キラン


 笑ってしまった。覇者の俺に王位だと?

 献帝も資金難なのか。

 まあいい、元々覇者だったが、これで河北にも認められたという証拠ができた。献上品は、工芸品がいいだろう。食料は、少な目にする。


「孫策と孫権は、粛清を行ったから、赤壁の戦いに寡兵で挑まなければならなくなった。だが俺は覇者として、江南江東を治めるのだ。兵は十分過ぎるほど集まる」


 曹操と争うのは、もう少し先だな。

 その時に、兗州を落とす。合肥も落として見せよう。……完璧だ。完璧すぎる計画だな。自分が怖い。


 その後、各城に適切な人材配置を行う。人材が豊富過ぎて、史実なら高い地位にある者も今は小役人だ……。少し考えるか。

 ふぅ~。安定以外の言葉が出ない。

 内乱すら起きない。心から心服されているのが分かる。

 何処か攻めて来ないだろうか……。駆逐してやるのに。


 孫策は、張魯に身を寄せたのだとか。

 もう、頭角は現さないな。馬超と同じだ。

 ここで、虞翻から言われた。


「徳王様の徳と善政、常勝により、各部族も心服しております。市政では、東呉の徳覇者王と呼ばれています!」


 おう? 仇名がちょっと変わってんじゃん?

 つうかれそ、そのまんまじゃん。少しは考えてよ。


「それと献帝から、王の印綬が届いたのだし、国を興すべきです。また覇者となられたからには、国号が必要です。国号は、如何いたしますか? 地名的に、呉か越になりますが……」


 本当なら、地名から取る……か。だが、断る!




「ふっ……、決まっている。国号は『徳』だ!」――キラン

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺は【東呉の徳王】~名乗った覚えはないけれど、後世でそう呼ばれている~ 信仙夜祭 @tomi1070

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ