可哀想だからデートぐらいね②

   ♡ ♡



「なんで了承しちゃうのよ!」


 私は頭を抱え、悶え苦しむ。

 そんな私を見下ろしてくるのは弟の──赤髪の少しだけ真面目そうな見た目をしているチャラ男──匠海。


「ふーん。ほんとに彼氏できたんだ」

「こ、これで分かってくれた?私には彼氏ができたの」

「デートには行きたそうではないけど?」

「そりゃそうでしょ!あんなブスとデートなんてしたくないわよ!」


 匠海を見上げながらそう言い放つと、冷たい目でこっちを見てくる。


「じゃあなんで付き合ったの」

「モテたくなかったから彼氏を作って保険をかけようと思ったの!」


 すると、なぜか匠海がため息を吐き出す。


「あんな姿で学校行ってたら誰も近づいてこないでしょ」

「え、あ、確かにあのブス以外に話しかけられたことないかも……」

「でしょ?姉ちゃんってたまに抜けるよね」

「あはは、ほんとにね」


 苦笑いを浮かべ、もう一度頭を抱えてしまう。


 匠海から「デートに誘って証拠見せて」って言われたから誘ってしまったのだけど、まさかあいつが了承するとは思わないじゃん!だってあんなブスなんだよ!?根暗で髪もボサボサでクソ陰キャのあいつがなんで了承しちゃうのよ!『ご、ごめん無理』とか『ま、まだ早いよ』とか言うと思ったのに……!


 そんな甘い考えをしていた自分の頭をボコスカと叩く。


 今回だけは我慢ね。私が言ってしまったのだからドタキャンとかもってのほかよ。こんなことが理由で更に学校で私の居場所がなくなったら嫌だし。

 本当に私の優しさに感謝しなさい?可哀想だからデートぐらいはしてあげるのよ。手を繋ぐとかハグとかは絶対に嫌だけどね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る