さぁ、材料はそろった!!

バブみ道日丿宮組

はじまりはそう

 夜の帰宅ラッシュで全身を疲労した状態でいざ帰ってみれば、部屋が荒れてた。

「はぁ……」

 いつものことだとまずは玄関で散らかってる靴を並べ、廊下に落ちてるブラやらパンツやらエナジードリンク、空箱のコンドームなどを拾ってく。

 部屋は暗いのでライトは通りながら次々につけてく。

 部屋にはゴミ箱も洗濯かごも用意してるのに、同居人はいつだって床に落としてく。同居人である彼女は裸族だ。鋭い何かが床に転がってれば、その柔肌は赤く染まってしまう。そうならないようにいろいろと言いつけてるし、落ちないように考えたりもした。彼女は身体が商売道具だというのだから、もうちょっといろいろ気をつけてほしいものだ。

 廊下が終わった先、居間にやっとの思いでたどり着けば、想像通り全裸でいた。月明かりだけなのに、その肌は美しいほどの白。見た目は超絶美女な同居人。それがぐーぐーといびきをかきながら床で寝てる。

 きれいな乳首、きれいな股を隠すこともなくこちらへと向けてる。彼女の身体が羨ましくないわけじゃないけど、これで毎日いろいろなものを受け入れるのが仕事なのだから、すごいと思う。

 毎度汚されるってことじゃないけれど、彼女からはいきいきした躍動のようなものを全裸を見るたびに感じてしまう。

 そういうことをするのであれば、アダルトビデオにも出演すればいいのというのだけど、それとは違うらしい。

 なんにしても彼女と同じことをすれば、そうなれるだろうか?


 例えば、見ず知らずの他人とセックス。

 そこが大きな問題だ。私には無理そう。

 セックスはやはり愛があるもので、一時的な快楽な……仕事のために行うようなものじゃないと思うんだ。

 そんな私に彼氏がいた過去はゼロなので説得力は皆無だ。残念だね。身体のラインがスレンダーで黒髪ロングのOL。今じゃ売れ時がないかな? まだ大卒の新入社員なんだけど? 膜に至っては未使用。破れてない。高級感出て来ない?

「はぁ……、シェアハウスなんてするんじゃなかったかもしれない」

 疲れてるので思いっきり独り言が出るわ出るわ。これを外でやってる人はほんと病気じゃないかって思うのよね。いちいち独り言をいうのって不可思議だよね。誰もいないのに誰に話しかけてるんだろう?

「よいしょ」

 居間のライトをつけて、床で寝てる彼女をさらに転がして部屋の隅に移動。

 動かしてもまだ眠る彼女とは生活リズムが真逆なので仕方ないとはいえ、これはなんとかしてほしい。掃除は毎日少しはするが本格的なのに近いのはちょっと。

 ベッドから落ちたものをベッドの上に戻し、寝相でこぼしたっぽいペットボトルを拾ってく。飲みかけじゃなくてよかった。

 もぞもぞと動いてから彼女はやっと起きた。

「おかえり」

「ただいま。ねぇ? ちゃんとゴミはゴミ箱、着替えたら服は洗濯かごっていってるよね?」

「う、うん。ごめんね。ちょっと酔ってると忘れちゃうんだ」

「それが仕事だっていうんだから、止めることはできないけどさ。もうちょっと最低限のことをしてほしい」

「わかったー」

 覇気のない声で彼女は洗面所に向かってった。

 着るものは持ってかないので、こちらで彼女の身なりをコーデ。

 彼女は美女なので何でも似合う。

 私がいつか着て注目されたいって服も着こなせちゃうので練習台にしてもらってる。文句は言わないので、より大丈夫。

 下着は該当外。

 黒の紐パンだと、黒のTバックだとか、スケスケの白いショーツやらを彼女は普段遣いとしてストックしてある。それ以外は履きたくないらしいので、親にすごい下着をつけてると勘違いされたことがある。

 彼女と親がはじめて会ったときは……まぁまぁやばかったな。よく許してもらえたよ。これも美人だからなのかな? 稼ぎは私の3倍ぐらいあるし、住む場所もきっちりとしたセキュリティのある高級マンション。信用の形はお金かもしれない。

 さてさて着替えを持って洗面所にいけば、金髪赤目の彼女が変なポーズをしてた。逆十字を両指でつくり、笑ってた。

「ほら、遊んでないで服着てね。仕事と間に合わなくなるでしょ」

「それもそうだ。ご飯いつもどおりでいいよね?」

「パスタ? 嫌いじゃないし、いつも味が違うから問題ないよ。パスタだけお金とって、具材のお金取らないってのはよくわからないけど」

「具材は仕事でもらえるからね。残しておいてもしかたないし、もらってるんだ」

 数分で彼女は外に出れる格好になった。

 ビジュアル系っていうのか、ギャルには思えないけど大人の女性。金髪というよくありそうなものと、赤目(これはコンタクトレンズじゃなく普通に赤いらしい)、整った鼻、お人形みたいに小さな口。

 これでモテないってことはなく、大学時代から彼女はいろいろな生徒に声をかけられて、返り討ちにしたりもしてた。

 大学で知り合ったのは、彼女が忘れ物をしたからついてきてほしいとのことだった。知らない人になぜついてくのかわからないかったけれど、部屋でなぜか眠った私が目を開ける頃には忘れ物は見つかってたらしい。その日は6限目まで終わってて、夜も遅いから泊まっていきなよっていう感じで知り合って、仲良くなった。

 出会いの形も人それぞれだよね。

 運命の出会いもきっとそれぞれだよね? ね?

「うーん」

「どうしたの? 座って待っててくれればいいよ」

「わかった」

 ご飯を作るのは彼女の役目なので、手慣れた様子で居間にいい匂いを出してく。

 洗濯掃除ができるけど料理ができない私と、その逆の彼女はシェアハウスするには利点がある関係だ。

 そういえば、大学の頃に行ってた時はゴミが落ちてなかったような気がする。

 メリット・デメリットは本当はいらないとか?

 環境がいいだけに問題にはしなくないので、保留。

 数分も待たずとして、いい匂いがして盛り付けられたパスタが居間のテーブルに並べられてく。

「イカスミ?」

「イカではないけど、スミには違いないかな」

 四角い物体を口に運ぶとこりこりとした食感が口の中に広がった。

「このお肉みたいの? 美味しいね。コリコリしてるっていうの? 軟骨みたいな感じ」

「いろいろあるから、いっぱい試しみないとね」

 冷蔵庫のパッケージにはいろいろな肉の塊が入ってる。それがいったいなんの肉なのかは私はわからない。肉は肉でしかない。

 鳥って言われても、蛙って言われても、蜥蜴と言われても、牛と言われても、判断ができない。それぐらいに私の食は興味がないし、知識がない。高いものか安いものかそれすらもわからない馬鹿舌だ。

 言いたいことがあるとすれば。

 さすがに鶏の卵ぐらい判断はできるよ。

 それと赤身、白身、骨。

 一般ピープルはこれぐらいしかわからないと思うよ。

 知らなくて良い知識だと思う。

 人肉を売ってるみたいなのはあったらしいし、映画とかでも良く出てくる。

 それぐらい肉ってわかりづらいものなんだと思う。

 住んでる人が一人ずつ減って、お肉料理が増えたって言われたらさすがにヤバい状況なのだと思うよ。

 ここは私と彼女以外住んでる人はいない。

 つまり減ってる人はいないってこと。

 そんな創造物に一般人は入れないって。

 あぁいうのって、ありえないからこそ面白いのであってありえたらとたんに苦しくなるものだと思う。

「明日は結構な量のお肉が手に入るかも」

「美味しいやつ?」

「うん、狙ってたやつだね。やっと見つけたんだ」

「ほほう、それは頑張って欲しいね」

 任せないとガッツポーズ。

 それから世間話をして。

「あぁ時間……は大丈夫だけど、今日は食洗機のお願いしようかな」

「入れておけばいいんだよね?」

「うん、スイッチ押すだけだよ」

 あとはやっておくねというと、ありがとうといって彼女は家を出てった。

 大きな空間は二人でも十分ではあるが、一人だとちょっと寂しい。

 お風呂に入って、彼女の残り香があるベッドで眠ろうと夜の日課を開始した。




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さぁ、材料はそろった!! バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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